最上級職挑戦編⑪~急行スワコプムント~
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次回の更新は10月12日です。
『もうここはモンスターがフィールドから溢れているんだ! 他にここと同じような場所はあるか!?』
道路を閃光の如く駆けている俺へ、レべ天からの返事はない。
視線の先にスワコプムントの街が見えてきたとき、白い煙が上がり銃を打つ音が聞こえてきた。
『すみません。モンスターの勢力が強すぎて、私が直接向かうか、一也さんの近くにある場所しか探せないんです……』
『わかった。まだ守護者の力は感じているんだよな?』
『はい……微かにですが……』
街に近づくと、無数のアルマジロが転がって多数の建物を崩している様子が見えた。
抵抗するように銃撃音がするものの、アルマジロには効かないため、建物が次々と崩壊していく。
(世界中を回らなくてはいけなくなったんだ!! こんなところで足止めをされている場合じゃない!!)
メイスを取り出して、練り上げた赤いオーラ身にまといアルマジロの掃討を始める。
気合を込めてメイスを握り、一振りでアルマジロを倒す。
「ウオオオォォォォ!!」
街中で戦闘することになると予想していたが、こんなにも被害が広がっているのは想定外だった。
地面はひび割れ、ほとんどの建物はがれきになり、モンスターが我が物顔で街の中を蹂躙している。
(これが世界中で起こったら、人類は抗えるのか?)
アロイアルマジロは物理攻撃には強いが、魔法攻撃には弱いため、上級モンスターではない。
硬い鱗も神石の戦棍で叩けば砕くことができるので、俺が苦戦することはなかった。
ふと、視界の端に戦車などの兵器が押しつぶされており、モンスターに対して抵抗をした形跡がある。
そのまま街の中心へ向かうようにアルマジロを倒していたら銃撃音が止んだため、街を守るために戦っている人が俺に気付いたようだ。
ただ、俺はこの街にいるモンスターを倒した後、守り続ける気はなかった。
(ここに留まっているだけで最悪の未来を覆せるとは思えない!)
明はアフリカ大陸全土に渡ってこの街と同じようなことが起きると予言している。
その未来はこの街を守るだけで防ぐことはできないだろう。
一刻も早く原因を突き止めるために気配察知を最大範囲まで拡大し、感知したアルマジロをすべて倒す。
生きているアルマジロがいなくなったのを確認していると、複数の男性が近づいてくる。
「きみは佐藤一也だよな? 助けに来てくれたのか?」
人が集まりつつあるので、メイスを担いでから街から出るために踵を返す。
何も言わないと不信感を与えると思うんで、最低限の言葉を口にした。
「一通り倒したのでもう行きます。後は逃げるか、残るか好きにしてください」
話しかけてきた男性の後ろから、怯えている男性が俺へつめ寄ってきた。
こんな時に言われることは聞かなくてもわかるが、俺の知ったことではない。
「お、お前は強いんだから、俺たちを守る義務があるだろう!?」
「ウィントフーク空港はまだ稼働しているので、逃げるのならそちらへどうぞ」
「連れていってくれるんじゃないのかよ!?」
「俺はこれからナミブ砂漠へ入るので、時間がありません」
「そんな……俺たちはどうすれば……」
「俺に聞かれても困ります。あなたの人生でしょう?」
絶望するような顔を周囲の人がする中、リーダーと思わしき人が空港へ向かうように声をかけ始める。
これ以上ここにいても妙な期待を持たせてしまうため、ナミブ砂漠の奥地へ行くために足を進めた。
「すみません!」
集団の人たちを振り切るように街を後にしようとした時、少し大きめのカメラを持った女性が俺を追いかけてきていた。
立ち止まらずに走ろうとしたら、カメラを持った人は叫ぶように俺へ声をかける。
「あなたの活躍を記録させてください! この惨劇を世界へ発信したいんです!!」
世界中の人に危機感を持ってもらうにはそういうことが必要かと考えていたら、カメラを持った人が俺の前に立ちふさがる。
「私はキャロル、フリーのカメラマンよ。この地で起こっていることを撮らせてほしいの」
「本当に世界へ発信できるんですか?」
キャロルと名乗る女性は絵蓮さんよりも少し年上に見え、俺と同じように肩でカメラを担ぎ、短い金髪と肩を揺らしていた。
そんな女性が世界へ発信できるような影響力があるのか疑ってしまう。
すると、キャロルさんは開いている方の手でスマホを取り出し、俺に見せてくる。
「もちろんよ。これまでもフィールドやダンジョンの撮影をして、いくつか賞を取っているのよ」
スマホの画面にはキャロルさんがトロフィーを片手に壇上に立つ写真が映されており、俺が目を向けると賞の説明と共に複数の受賞時の様子も見せられた。
俺には賞の内容はわからなかったが、世界的に名の知れたカメラマンということだけはわかる。
「この先になにがあるのか俺でもわかりません……命の保証はできませんが来ますか?」
「もちろん、私もRank3の冒険者なのよ。自分の身は守れるわ」
「なら行きましょう。急ぐので走ります」
「待って! 車があるの、それに乗らない?」
俺が走ろうとした時、キャロルさんは街に目を向けながら俺へ車に乗るよう提案をしてきた。
しかし、いつ敵が現れる環境で、呑気に車へ乗ってはいられない。
「地中からいきなり敵が現れることがあります……ッ!? 受け身を取って!!」
俺は優ブレイクアタックで優しくキャロルさんをできるだけ遠くに吹き飛ばしてから、足元に現れた黒い塊をパリィで受け流す。
3メートル程あるはさみのようなものだけが砂地から出ており、周囲の砂が揺れてその持ち主が砂の中からはい上がってきた。
「アーマースコーピオン……ここまで大きいと、もうゲームとは別物だな……」
本来のアーマースコーピオンはアルマジロよりも小さく、大きくても全長が2メートルほどしかないはずだった。
だが、目の前にいるこの敵は、はさみだけでもその大きさを凌駕している。
アーマースコーピオンのはさみは倒れているアルマジロを両断し、硬い鱗を気にせずに捕食していた。
その隙に頭を狙ってメイスを叩き付けるが、少しへこんだだけで倒しきれない。
(固い!? 力任せじゃ倒せないか!!)
両方のはさみを大きく掲げ、毒のある尻尾を天へ突き刺すように上げており、俺が倒さなければスワコプムントへ向かうのだろう。
「キャロルさん! 今から戦います! こんな街の近くまで凶悪なモンスターが来ていると記録を残してください!」
「わかったわ!!」
吹き飛ばされたキャロルさんはカメラを構えて、俺とグリーンドラゴン以上に大きなサソリを撮影していた。
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