最上級職挑戦編⑩~アフリカ上陸~
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次回の更新は10月9日です。
「さむっ!」
ナミビアに着いて飛行機から降りようとした俺は思わず両腕を抱え、肌寒い風から身を守る。
早足で空港内に入り、ここに着くまでの道のりを思い出した。
ヨハネスブルグで飛行機を乗り継ぎ、アメリカから飛び立ってから1日ほどでこのナミビアのウィントフーク国際空港に着いた。
周りにはほとんど建物がなく、ここへ発着する飛行機の数自体が少ないような印象を受ける。
「妙に小さいけど……ここは国際空港なんだよな……」
ここは今まで見てきた国際空港の中では一番小さく、人のいない建物内を歩きながら建物内に目を向ける。
入国審査は冒険者証を見せるまで、怪訝な顔をされたが、照合が済んだ途端に笑顔で通るように言われた。
その人はWAOの会議を見ていたのか、緊張した面持ちで握手を求められてしまう。
無事に通過した後、時計は午前11時を示していたため、活動するには十分な時間がある。
機内では寝てばかりで、ここからナミブ砂漠までの行き方を調べていなかったため、目についたインフォメーションセンターで聞いてみることにした。
インフォメーションセンターでは、母親よりも年上そうな女性が頭を抱えながら作業をしていたため、カウンター越しに立って声をかけようとしたら、ナミビアの旅行案内のようなパンフレットが置いてあったのが目についた。
(これを見ればいいか。えーっと……あそこで座って読もう)
近くの椅子に座ってからパンフレットを開くと、近くの【スワコプムント】という場所でナミブ砂漠からモンスターが出ないように監視をしているようだった。
寒さ対策で服を買いたかったが、空港内にそのような施設はなく、走れば暖かくなると思いながら席を立った。
ここから車で2時間ほど離れた所にあるようなので、道に迷わないようにパンフレットを片手に空港を出て歩き始める。
電光掲示板に飛行機の案内が掲示されているものの、今日は数本程度しか表示されていない。
人の姿もなく、異様な雰囲気を感じながら空港の外に出ると、広大な大地が広がっていた。
(何もないな……街からも離れているみたいだし、ワープ登録はついてからにするか……)
駐車場にも車がなく、まっすぐ舗装されている道にも人の気配がしなかった。
パンフレットでスワコプムントまでのルートを確認し、道路に沿って西へ向かえば着くようなので走り出した。
(え? 何か聞こえたぞ?)
しばらく走ると体が暖まり、風が心地よくなってきたと思っていたら、急に銃声が鳴り響く。
(ここはただの道路じゃないのか!? なんで銃を撃つ音が!?)
銃声の聞こえる方へ向かうと、銃を持った数人の男女が巨大な丸い物体から全力で逃げていた。
大地を削りながら転がっているのは、ミスリルと同程度の硬度がある鱗で全身を覆われている【アロイアルマジロ】のように見えた。
(なんであいつがこんなところに!? ここはまだ、ナミブ砂漠じゃないのに!!)
メイスを召喚して、転がっている5メートルほどあるアルマジロを吹き飛ばすように横へ薙ぎ払う。
手の骨が砕けると思うほどの衝撃とともに、金属を打ち鳴らした音が響き渡った。
進行方向を変えたアルマジロが再びこちらへ転がるために旋回を始めたので、今度は思いっきり上から叩き潰すためにテレポートで上空へ移動する。
メイスを思いっきり打ち下ろすと、鎧のような鱗が割れてアルマジロにめり込む。
アルマジロが動かなくなったことを確認して、逃げていた人たちへ話しかける。
見た目ではわからないが、10代から40代まで幅広い人がいる集団で、なんの集まりなのか気になるところだ。
「こんにちは、ここではモンスターはよく出るんですか?」
「…………」
俺の問いに誰からも返事はなく、戸惑うように担いでいるメイスを眺めていた。
言葉が通じていないのか、しばらく経っても何も返事がなかったので、もう1度聞こうとしたら全員が安堵したような顔になり、地面へ膝をつく。
「助かった……」
「神よ……感謝します……」
「ありがとう……ありがとう……」
銃を手にしている人たちの中には俺よりも小さな子供が含まれており、30名ほどがここへ集まってきている。
その中にいた日に焼けた中年男性だけは安心せずに周りを見渡して警戒しており、その人へ声をかけるために近づく。
「これはどういうことなんですか?」
「……きみはWAOから派遣されてきたのか?」
「どういうことですか?」
「きみはRank5になった佐藤一也くんだろう? こっちでも話題になっている」
その男性は俺が佐藤一也だということを知っていて、WAOから派遣されてきたということを質問してきており、周りの人たちはなぜか暗い表情になっていた。
俺の行動にWAOはなんの関係もないため、首を振って否定する。
「ここには自分の判断で来ました。WAOからは何も言われていません」
「……巨大アルマジロを倒してくれてありがとう、きみに助けられた」
中年男性は感謝をするように深く頭を下げており、周りには手を合わせて祈っている人もいた。
空港内の雰囲気や、街から逃げてきているという人たちを見て、すでにモンスターによる侵攻が始まっているのではないかと予想した。
「なにがあったんですか?」
「我々はスワコプムントから空港へ向かっている最中にモンスターの襲撃に遭ったんだ……」
「やっぱり……スワコプムントは後どれくらい持ちそうですか?」
俺の考えは当たっており、ナミブ砂漠からモンスターが溢れ、もう街を襲撃しているような印象を受けたので、支援をするために一刻も早くスワコプムントへ向かおうと思う。
しかし、中年男性はゆっくりと首を横に振り、悔しそうに唇を噛む。
「もうモンスターによって防衛線が破られ、街が破壊され始めているんだ……」
「そんな!? WAOへ支援要求はされたんですか!?」
「ギルドは何度もしていたみだいだが……ナミブ砂漠のモンスターの価値は低く、このような武器しか送ってくれなかった……それに冒険者を派遣してほしいなら膨大な金を要求しているみたいなんだ……」
中年男性は手に持っている銃を悔しそうに握りしめて、周りにいる人へ目を向ける。
「きみが来てくれなければ、全員死んでいた。ウィントフーク空港はまだ稼働しているんだね?」
「俺はそこで降りましたが……」
「そうか、それが聞けてよかった」
7歳くらいの子供が泣きながら母親の足にしがみついており、中年男性は全員を連れて空港へ向かうと言っていた。
ここで別れてまたモンスターに襲われた場合、今度こそこの人たちの命が危ない。
「小さい子供もいるようですし、送りましょうか?」
「きみはここへなにか目的があってきたんだろう? それをしてくれ……WAOの代わりに……」
「次に襲われたらもう逃げられないでしょう? 気にしないでください」
「ありがとう……この礼は必ずする……」
俺は来た道を戻りながら、中年男性や他の人と話をして、何が起こっているのか聞き込みをした。
その結果、スワコプムントではまだ少数の冒険者が戦っており、さらに南にある港湾都市ウォルビスベイとは連絡が取れないという。
集団を連れて空港に着いた後、俺はWAOに対して怒りを抑えながらレべ天へ連絡をとる。
『天音、俺がいる近くのフィールドの守護者はどうなっているのかわかるか?』
『一也さんの近く……ですか? ちょっと待っていてください』
話を聞いてこのフィールドで起きていることを予想した俺は、錬気で黄色のオーラを身にまとい、全力疾走で目的地へ向かう。
すると、焦るようにレべ天が俺の脳内へ話しかけてくる。
『一也さん! 守護者の力を多少は感じるのですが、気配がありません!!』
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