最上級職挑戦編⑧~WAO定例会、Rank5へ~
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10月から3日に1度の更新になります。
次の更新は10月3日です。
WAOの定例会は本部のあるアメリカ合衆国で行われる。
俺はそこへ向かう飛行機に乗りながら寝そべっていた。
政府は良い席を用意してくれており、長時間の移動でも快適に過ごせる配慮をしてくれている。
何度か防衛省の人が何か不備はないか聞きに来てくれたり、添乗員の方が妙に親切に対応してくれたりしたため、アメリカに着くまで何の不自由なく空の旅を楽しむことができた。
入国審査等の手続きも行わず、滑走路に用意された車へ乗り込む。
「佐藤様、Rank5が授与されてから、いくつかの国の要人と会っていただきたいのですが……」
会議場へ向かう車内で、初めて防衛省の人が後部座席に座る俺へ要求をしてくる。
そんなことをしたくなかったが、今回快適な旅を用意してくれたこの人たちの思いを汲み取り、少しだけ譲歩した返事をすることにした。
「なんの負荷なくこの国へ連れてきてくれたお2人には感謝をしているので、1人だけ会います」
「ひっ、1人だけですか?」
「ええ、本当は誰にも会いたくないんですが、お2人に免じて1人だけです」
「え……あ、ありがとうございます」
明らかにうろたえつつも、前方から感謝を伝える言葉が聞こえてきた。
それ以降、俺へ言葉をかけてくることはなく、助手席に座る人が一定間隔でどこかへ連絡している声が車内に響く。
「後5分で到着予定、現在――」
俺の到着時間と今通っている場所を伝えており、そのせいなのか信号で1度も止まることがなかった。
窓の外に目を向けると、車線を無視して俺が乗っている車を囲うように数台の車が走っており、道路からカメラが向けられているような気がする。
(ギルド長が言っていたのはこういうことだったのか……)
世界中の海で暴れていたリバイアサンを倒してRank8になった黒騎士が所属している国はない。
しかし、俺の場合はきちんと手順を踏んでRank5に昇格するため、注目されている。
ギルド長は俺が別の国に所属を移した場合、日本が世界中に恥を晒すと言っていた理由がよく分かった。
(複数の国が強いと推薦をしている冒険者を逃したら、日本はなにをやっているんだって思われるんだ)
窓の外を眺めながらぼーっといていたら、車がきれいで大きな白い建物の前で止まる。
俺がドアを開けて出ようとする前に扉が開けられて、声をかけられた。
「移動お疲れ様でした。ここがWAOの本部でございます」
「ありがとうございます」
俺が車を降りると、左右から大量のフラッシュがたかれ、無数のシャッター音が聞こえてくる。
会場への道を左右から囲むように腰ほどの柵が用意されており、そこから誰も入らないように屈強な身体つきの人が守っていた。
人垣は数十メートル先まで続いており、その光景を見ながら思わず口が開いてしまう。
「すごい人だ……」
「みんな、きみの姿を一目見ようとここへ来ているんだよ」
「防衛大臣?」
別の車から降りてきた防衛大臣が俺の横に立ち、周りを見ながら俺へ言葉をかけてきた。
俺が顔を向けると、手を軽く会議場の方へ向けてから歩き出す。
「どうぞ、こちらに。新しくRank5になる英雄のことを世界中の人が待っている」
「英雄……ですか……」
好き勝手モンスターを倒していただけので、そんな言われ方をしても困ってしまった。
ジブラルタル山脈の麓にある冒険者ギルドでも同じようなことを言われたことを思い出し、このようなことが世界中で起こってしまうと下手に出歩けなくなる。
(俺以上に目立つ人が必要だけど……ああ、あの手があるか)
俺以上に活躍している冒険者の存在がいることに気付き、この騒動をかき消すほど活躍してもらうことにした。
防衛大臣に案内をされながら会議場へ入ると、会場中の人が立ち上がって拍手で出迎えられた。
俺が拍手をしてくれている人へ目を奪われていたら、防衛大臣がいなくなり、WAOと胸のあたりにピンバッジを着けている人が代わりに立っている。
「佐藤一也さん、授与式を行うので、こちらへどうぞ」
「はい」
その人に案内された先には、リバイアサンの時に困り果てた顔をしていたWAOの会長が檀上で待っていた。
俺が会長の前に立つと、拍手が止んで全員がこちらへ注目している。
会長は長いあいさつの後、俺へRank5の冒険者証を渡し、意思表明をするようにとマイクの前へ立たせてくれた。
防衛省の人や防衛大臣からなにも注意されなかったので、俺の自由に話をしてもいいのだろう。
世界各国の人がいるので、レべ天の力を遮断してから日本語で話を始めた。
「私は今までと同様、誰かに求められてモンスターを倒すことはありません。自分の戦いたい相手だけを倒します」
翻訳されているのか、一呼吸間が置かれてから会場が困惑するようにざわめき立つ。
俺はそんなことを気にせず、自分の言いたいことを全部伝えることにした。
なぜか、日本の席に座る防衛大臣の顔が青ざめており、俺が次に何を言うのか恐れるような目を向けている。
「また、私の障害となるような勢力や国が危機になろうと、私は一切関与しないのでご理解よろしくお願いします」
それだけ言ってマイクから離れると、会長が苦笑いをしながら俺を見ていた。
その後、授与式が終わったので、防衛大臣の所へ向かおうとしたら、様々な国の人が俺へ話しかけようと目が合う。
その数は数百にもおよび、面倒事を避けるために隠密を使用して、どの国とも接触しないようにした。
俺を探す声を背にしながら、席から動かずにいてくれた防衛大臣のそばに立つ。
「大臣、佐藤です。今スキルで姿を消しているので、返事をせずに俺へ会わせたい人がいる場所へ案内してください」
大臣は急に俺から話しかけられて体を硬直させたものの、言い終わるとゆっくりこの場から離れようとした。
「すみません、少しお話よろしいですか?」
「え!? これはイギリスの……」
防衛大臣は俺を案内しようと立ち上がった途端、話しかけられている。
無視できない相手なのか、引きつる笑顔で対応しており、その姿を眺めていたら、手元の紙に何かを書いていた。
【ここまであんないをしたものへ】
防衛大臣の言葉を受け取り、気配察知で俺を日本からここまで案内してくれた人の気配を探る。
2人が会場の外で待っているようなので、会議場から出て外へ向かった。
会場を出る直前に後ろを見たら、俺がいなくなったからなのか、防衛大臣の周りに人が集まっている。
丁寧に対応している姿を見て、今度なにか頼まれたら検討くらいしてあげようと思いながら会場を後にした。
(みーっけ)
案内をしてくれた2人の近くで隠密を解除すると、周りの人が俺に気付き、カメラやスマホを向けてきた。
2人も俺に気付いてくれて、何かを言う前に俺が防衛大臣に託された言葉を伝える。
「防衛大臣からお2人に会うように言われてきました。案内をお願いします」
「わかりました。付いてきてください」
そう言うと、2人は再び建物の中に入り、会議場には向かわずに別の部屋へ入る。
その部屋で待っていたのは、俺でも見たことがあるアメリカの大統領で、椅子から立ち上がって握手を求めてきた。
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