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最上級職挑戦編⑦~星空の見える丘~

ご興味を持っていただきありがとうございます。

本作のタイトルを改名した【ネトゲ廃人の異世界転生記】が発売中です。

アマゾン等で全国の書店にてお買い求めできるので、よろしくお願いします。

購入報告お待ちしております!

 いつもは騒がしいレべ天がしおらしく付いてくるので、横に並んで話を始める。


「天音どうしたんだ? 行くのは止めるか?」

「行きます! 行くんですけど……これってデートってやつですか?」

「急にどうした?」

「え!? それは……」


 恥ずかしそうに手を揉むレべ天の口から予想外の言葉が出てきたので、少し驚いてしまった。

 後ろを振り返ると両親が俺たちのことを見守るように見ていたので、レべ天へ教える。


「両親に見守られながらデートはしたくないな」

「じゃあ、見えなくなったらデートになるんですか?」

「なんでそんなにデートにこだわるんだよ……」


 レべ天が妙に前のめりになって、終始デートということを強調してくる。

 今更レべ天とデートという感じでもないので、今回もただの散歩程度に考えていたら、急に手首をつかまれた。


「わ、私だけ一也さんとデートをしていないんです! 花蓮さんや明さん、真央さんたちとはしたんですよね!?」

「……は?」


 それからレべ天はなぜか他の人と俺が行ったデートについて話を始め、真央さんと花蓮さんがアクセサリーを買ったことも知っており、そのことを口にしている途中から悔しそうに唇を噛み締める。

 俺が落ち着かせるためになだめようとしたら、レべ天が胸に飛び込んできた。


「私だけ仲間外れなんですか!?」


 至近距離で見るレべ天はかつてないほど俺の胸を高鳴らせ、いつものように雑に振り払うことができない。

 確かに、この世界に来てから、レべ天と2人で1度もどこかへ一緒に出掛けるといったことをしてこなかった。


(普通に俺の家に紛れていたから、家族とデートをするなんて考えもしなかったな……)


 そして、レべ天は直接モンスターと戦えないので、他の人と比べて一緒に過ごす時間も短い。

 俺の胸で泣き始めたレべ天は、守護神として今まで1人で世界を救うために戦っている。


 そんな少女を邪険に扱うことができなくなったので、優しく両肩を持って俺からレべ天を離した。


「もうここでいいから座れよ」

「ひっく……私とはデートをしたくないってことですか……」

「そうじゃないよ。ここでも星空は見えるし、ちゃんと話し合おう」


 芝生の生い茂る地面へ座ると、レべ天は戸惑うように俺のことを見ていた。


「ああ、ごめん。服が汚れるか気になるよな。ハンカチを敷くからここに座って」

「……はい……ありがとうございます」


 俺が置いたハンカチの上に座ったレべ天は膝を抱えて、すねたように口をとがらせて下を向いている。

 ため息をついて、レべ天のあごに手を添えて空を見上げてもらうために声をかけた。


「それじゃあ、いつまで経っても星が見えないぞ」

「……星は富士山からいつも1人で見ていました」


 レべ天は完全にへそを曲げてしまい、身をよじって俺へ背中を向ける。

 今まで便利な装備運び屋さんだと思っていた負い目もあり、その背中を優しくなでた。


「今度時間を取るから、ちゃんとデートをしよう」

「そう言って、誤魔化すんですか?」

「今の天音なら俺が本心からデートへ行こうって誘っていることわかるだろう?」


 レべ天は俺の言葉に答えず、恥ずかしそうに後ろにいる俺が見えるように顔を動かす。

 目が合うと、レべ天がほのかににやにやしながら地面へ手をついて、体もこちらを向かせた。


 そして、手をお腹の前で願うように組み、うかがうような目で俺を見てくる。


「それは……そうですけど……約束してくれるんですか?」

「もちろん、約束は守る」

「……よろしく……おねがいします」


 レべ天は顔を真っ赤に染めながらそう言って、しばらく星を眺めていた。

 星を見ているレべ天にデートの希望を聞いたところ、他の人がやったことないことがしたいということだったので、満足してもらえるようなことを考えることにした。


 ある程度時間が経ったので、トレーラーハウスへ戻り、寝る支度を整える。

 両親から星はどうだったと聞かれたが、レべ天の対応でそれどころではなかったので、きれいだったとだけ答えることになってしまった。


 マロンは置いていかれて寂しかったのか、戻ってからずっと俺に引っ付き、寝る時も枕元に陣取られる。

 そばにいるマロンの寝息を聞いていたら、俺も眠くなってきて、意識が落ちていくのを感じた。



---------------------------------------------------------



「一也さん、おかえりなさい。ぼーっとしていますけど、大丈夫ですか?」

「え!? れ、レべ天!? なんか大人になっていないか!?」


 少し大人びたレべ天がエプロンをつけて、笑顔で俺の顔を覗き込んできていた。

 俺はスーツを着てバッグを持っており、見たことがない玄関に立ってレべ天に迎えられている。


「なんですかレべ天って? ゲームのやりすぎですよ」


 笑う顔までかわいい女性に目を奪われ、俺は呆然とその光景を眺めてしまう。

 すると、笑顔だったその人は、急に目を閉じて俺へ顔を差し出してくる。


「一也さん、いつものあいさつがまだですよ。このままじゃ、ここを通しませんからね」


 脳が混乱し、女性が何を言っているのかわからない。


(あいさつというのは、ただいまと言うだけじゃだめなのだろうか)


 とりあえず、先ほどおかえりといわれたので、そのあいさつを返すことにした。


「ただいま……」

「おかえりなさい……ここにはまだですか?」


 レべ天に似た女性は自分の唇へ指を当てて、何かを期待するようにじっと待っている。

 俺はこんなやりとりを漫画でしか見たことがない。


(おかえりのキスってことか!? そんな……まさか……)


 俺が戸惑っていると、その女性が待ってはいられないといわんばかりに近づいてきた。

 目を閉じて身を強張らせたら、良い匂いとともに妙にふさふさして毛並みの良い感触が顔中を覆う。


(ん? なんだこれ?)


 期待していたものとは違う出来事が起こったので、薄目を開けると、マロンが俺の顔に乗ってきていた。

 両手でマロンを持ち上げて、起こさないようにゆっくりと布団へ下ろし、周りを見る。


 トレーラーハウスのベッドに寝ており、昨晩と何も変わっていない。


(まさか……あれは夢か……)


 レべ天と夫婦になったような夢を見てしまい、不覚にもドキドキしてしまった。

 まだ起きる時間には早かったので、寝間着のまま外へ出て雑念を払うように体を動かし始めた。


(俺にあんな未来を見る資格はない!!)


 正拳突きのように何度も拳を振るい、見てしまった夢を忘れるために没頭する。

 メタルゴーレムを仮想敵として戦っていると、複数の気配が俺へ近づいてきた。


 こんな早朝から来る人に警戒してしまって、拳を構えてその姿をとらえる。

 すると、クールビズの格好をした男性2人が慌てた様子で軽く両手を上げた。


「待ってください。私たちはWAOの会議に参加するあなたをお迎えにあがりました」

「もう来たんですか。早いですね」

「ここからだと、この時間にでなければ間に合わないので……」

「準備をするので10分ください」


 男性たちの返事を聞く前にトレーラーハウスへ戻り、いつもの格好に着替える。

 物音で起きてきた母親へ、外にいる人を見ながら会議に行くことを伝えてから外へ出た。


 マロンやレべ天はまだ寝ていたため、母親から謝ってもらうように頼んでおいた。


 迎えに来た男性たちは防衛省の役人と自己紹介をされ、俺が会議場へ着くまで案内をしてくれるらしい。

 俺は用意された車に乗り込み、キャンプ場を後にした。


 出る直前にふと大人になったレべ天を思い出してしまい、あんな未来はありえないと、必死に忘れる努力を行うことになった。

ご覧いただきありがとうございました。

もしよければ、感想、ブクマ、評価、待ってますので、よろしくお願いいたします。


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9月17日より新連載を始めました。

同じローファンタジーになります。

ぜひ、こちらもよろしくお願いします。

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