最上級職挑戦編⑤~ギルド長の言葉~
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「先ほども言ったが、お前は世界で初の個人でRank5になる冒険者だ。そんなお前へ強制的に依頼して、気分を損ねられ、他国へ流出したら日本が世界へ恥を晒す羽目になるだろう」
「そうなんですか?」
「だから……そうだな……Rank5の冒険者証は世界中のダンジョンへ入れるフリーパス券だと思えばいい」
「なるほど!」
ギルド長の言っていたことの前半はよくわからなかったが、フリーパス券というのはわかりやすかった。
そして、俺の納得した顔を満足そうに眺めるギルド長は、胸ポケットから小さな紙を俺へ渡してくる。
「WAO定例会の入場証だ。当日は防衛大臣が一緒に出席する」
「わかりました」
差し出されたものを受け取ると、妙に分厚くカードのようになっていた。
リュックなどは持っていないため、しかたなくズボンのポケットにねじ込む。
「お前がWAOの会議へ行くという話は佐々木からご両親にされているはずだ……確実に周りが騒ぐことになるが……」
「俺の家族や生活を脅かす存在は徹底的に潰します。さっきの話だとそれくらいしてもいいんですよね?」
「……できる限り抑えるようにこちらで配慮する」
「よろしくお願いします」
話はこれで終わりなのか、ギルド長が椅子から立ち上がって、俺に手を差し伸べてきた。
払うのも失礼なので、お礼を言いながら手を取って立ち上がる。
「あ、そうだ。1つ質問があって、【黒騎士】も個人でRank8になっているんですが、どこの国に所属しているんですか?」
「黒騎士に関しては、どの国の冒険者ギルドにも属していない存在なため、各国がスカウトするために躍起になっているぞ」
「そうなんですか……教えていただきありがとうございます」
手を離したギルド長は軽く笑みを浮かべ、明日ここへ政府からの迎えがくることを伝えてから立ち去っていった。
俺はトレーラーハウスに戻りながら、リバイアサンを倒しただけで【黒騎士】へRank8を授与したWAOの存在意義について考えてしまう。
(WAO……世界冒険者協会は俺に何をしてくれるんだ……)
上位Rankの冒険者に対する世界的な配慮が手続きなしでダンジョン等に入れるくらいなら、別になくても困らない。
(ピラミッドダンジョンのように勝手に入って、制圧をするだけだからRankを上げなくてもできる……)
ただ、ジブラルタル山脈のように手続きが必要な場合は、メイスで壁を破壊した時のように押し入らなければならないので、日常的に行えば批判を受けることが予想できる。
(本当に冒険者証を見せるだけで通れるなら有りなのか?)
ただ、Rank5をもらうのは名誉なことだけれど、それで目立つのは勘弁願いたい。
現に、Rank8になった黒騎士を世界中の国が追い求めているそうなので、WAOへ連絡をしてそれらの行動を止めてもらうことは期待できるのだろうか。
(とりあえず、今日はキャンプを楽しもう)
ギルド長の話では、明日には会議へ出席をするために誰かが迎えに来てしまうそうなので、キャンプを満喫できるのは今日しかない。
もう日も暮れ始めていたので、何をしようか考えながらトレーラーハウスに着くと、佐々木さんが出てきていた。
佐々木さんがトレーラーハウスから出て、こちらを向いた時に目が合うので、近づいて話しかける。
「両親の対応をしていただき、ありがとうございます」
「いや、これも俺の役目だ。それより……」
「Rank5になろうと思います。日本が俺や家族を守ってくれそうにないなら、出るつもりなのでよろしくお願いします」
佐々木さんは何かを聞きたいように俺の目を見ており、どうするのか気にしている様子だったので、今後のことも含めて伝えた。
すると、聞き終えた佐々木さんは、わかったとつぶやきながら軽くうなずく。
「そうならないようにこちらも対応するつもりだ」
「頼みます」
そう言ってから佐々木さんと別れ、トレーラーハウスに入ると、ソファーに座っている両親が真剣な表情でスマホを見ていた。
レべ天はその向かいにあるベッドに座り、膝の上にいるマロンを撫でている。
3人とも入ってきた俺に気付かないので、少し扉を閉める時に音を出す。
「戻ったよ」
バタンっという音と一緒に声を出したら、3人が振り向いてくれた。
両親が何を見ていたのか気になったので、飲み物を入れるついでに声をかける。
「それ、何を見ていたの?」
母親はずっと心配をするような表情でこちらを見てきており、スマホを持っていた父親が唾を飲み込みこんで絞り出すように声を出す。
「これは……お前がピラミッドで……活躍した様子を見ていたんだ」
「ああ、あの時の。それって俺が人を抱えて出てくるまでしか映ってないでしょ?」
「そうだが……もしかして、続きがあるのか!?」
俺が答えてからコップに入れた飲み物を口にすると、父親は驚いてスマホを握りしめながら立ち上がった。
「その後、ダンジョンの奥へ進んだんだ。最後までは行けなかったけど、良い訓練場所だよ」
ただの上級モンスターであるミノタウロスはもうなんの脅威でもないため、武器やスキルの熟練度をあげる相手に最適だ。
父親の持っていたスマホからは、動画がリピートされて大量のミノタウロスと戦う戦闘音が流れ、俺の後を追う人たちが叫んでいる声も聞こえてきた。
「このモンスターたちを相手にして訓練だと……お前は言うのか……」
「大きいけど、二足で立って斧を持った大きな牛だからね」
俺はミノタウロスについて思っていることをそのまま口にして、持っていたコップを片付ける。
父親は何度も首を縦に振り、力なくソファーへ座った。
「そうか……よくわかった……WAOの会議には行くんだろう?」
「一応、だから今日はキャンプを楽しむよ」
「そうか……お父さんは少しお母さんと話があるから、好きにしなさい」
窓からたき火が消えているのが見えたため、レべ天とマシュマロ焼きを食べるために入っている袋を手にする。
「わかった。天音、外でマシュマロを焼こう」
「は、はい!」
外に出ると涼しくなった風が頬をなで、消えかかっているたき火へ新しい薪をくべる。
父親が座っていた椅子に深く座り、話し疲れたと思いながら小さな火を眺め始めた。
(両親には心配ばかりかけるな……)
2人の様子を見た限り、俺がRank5になることを受け入られていないように思える。
本当に海外で活動しているか確認をするために動画を見ていたのだろう。
(はやくモンスターの脅威をなんとかしないと……でも……)
最近感じている“ある事”を考えていたら、薪を追加したはずなのに火が小さくなっていた。
なかなか火が燃え移らないようだったので、近くに置いてあった火吹き棒で空気を送り始める。
空気を送っている俺の足元にマロンが来ており、後ろから草を踏む音が聞こえてきた。
その方向へ顔を向けず、空気を送る手を止めて独り言をつぶやく。
「この世界を救うってどういう意味なんだろうな……」
「え……」
俺はレべ天の顔を見ずに、自分の考えを語り始めた。
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