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最上級職挑戦編②~レべ天との心の距離~

ご興味を持っていただきありがとうございます。

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 レべ天がわざわざ頭の中で会話を始めたので、両親に不審がられないように俺も寝たふりをする。

 しかし、本当に特別なことをした記憶がないため、そのままレべ天の質問に答えた。


『まったくない。天音を寝かせてそのまま帰ったけど、お前の方こそ何かしていないのか?』

『私は……』


 レべ天が何も伝えなくなったので、様子を探るように薄目で横を見ると、細く開かれているまぶたの間からのぞいている金色の瞳と目が合う。

 そのまま声をかけようとしたら、レべ天は逃げるように身をよじって俺へ背中を向ける。


「ううん……」


 わざとらしく寝返りをするレべ天から目を放して、自分の体に変化がないのか確認を行う。

 レべ天が言うには繋がりが【深く】なっているらしいので、たまに感じる自分以外の感情を探す。


(自分へ流れ込んでくる感情が……ある!)


 なぜか【恥ずかしい】という感情が俺へ伝わってきており、これをレべ天が感じていることだと仮定した。

 ただ、それを受け取ってもこちらから何ができるかわからない。


 送られてきた感情へ意識を向けて、その流れを辿ってみることにした。

 魔力とは違い、外部から流れ込んでくるものなので簡単にたぐることができてしまった。


『ディーさんが出る前にあんなことを言うから、一也さんの顔が見られない……』

『なんて言っていたの?』

「え!?」


 レべ天が心の中で何か考えていたので、それに質問をしたら飛び起きて俺へ顔を向けてくる。

 驚くような声に反応して、前にいる父親がバックミラー越しにこちらを見てきた。


「天音ちゃん、どうかしたのかい?」

「すみません、ちょっと外の風景を見ていただけです」

「そうかい、何かあったらすぐに言うんだよ」

「ありがとうございます」


 レべ天は父親と話している間、ずっと俺の方をもの言いたげな目で見てきていた。

 父親との会話が終わると同時にレべ天が俺へ詰め寄ってくる。


「私の心を覗かないでください」


 小声でそれだけを言って、そっぽを向くように前へ身を乗り出して両親へ話しかけていた。


(心の中で考えていることまでわかるようになっているのか……)


 ただ、そのためには先ほどの俺のようにかなり集中させないとわからないらしい。

 使い道が無いと思いながら、話をしているレべ天の後頭部に目を向けると耳と頬が赤くなっているように見える。


 キャンプ場に着くまで、俺はレべ天と話をすることができずにいた。


 今回、レべ天が初めてキャンプへ行くということを聞いた両親は、トレーラーハウスを借りて快適に過ごせるように配慮をしてくれている。

 場所は富士への樹海の近くで、今でもここで体調を整えてからダンジョンへ向かう人がいるらしい。


 トレーラーハウスへ車に積んだ荷物を運び出していたら、父親が地面をならしてたき火台の設置を始めていた。

 マロンが興味深そうにたき火台の近くへいたので、邪魔をしないようにレべ天が抱える。


「おじさま、これは何をするんですか?」

「たき火をするんだ。ご飯を作ったり、お湯を沸かしたりするんだよ」

「薪を使うんですよね? 不便じゃありませんか?」

「それがいいんだ。薪が燃えて、火が揺れているのを見ていると癒されるからね」

「なるほど」


 父親がレべ天へたき火の良さを教えながら、作業を進めていた。

 俺はクーラーボックスなどの荷物をトレーラーハウスへ運び出す。


 クーラーボックスから食材を取り出した母親が、昼食の下ごしらえを始めていた。

 他にも荷物があったので、何回か車とトレーラーハウスを往復してから台所へ向かう。


 母親は鼻歌まじりに台所で作業をしており、それを横目で見ながらクーラーボックスに残っていた食材を冷蔵庫へ入れる。

 包丁で食材を切る音が一定間隔で聞こえ始めるので、キャンプの時くらいは俺に任せてもらおうと考えた。


「お母さん、俺がやるからお父さんの様子を見てきてくれる?」

「え? 同じように切るだけでいいわよ」


 今まで1度も手伝ったことがないため、不思議そうに包丁を渡された。

 食材を切り始めると横から母親がのぞいてくるので、気にしないようにしながら作業をする。


 ちらっと視線を移したら、感心するようにうなずきながら俺の手元を見ていた。


「まさか、一也が手伝ってくれるとはね、誰かに教えてもらったの?」

「佐々木さんに教えてもらったよ」

「そうなの。良い人ね」


 トレーラーハウスなのでガスコンロが備え付けられているが、調理はどうしてもたき火で行いたいと車内で父親が譲らなかったので、外の用意がどのくらいできたのか母親が確認へ行く。

 下ごしらえが終わって、銀のトレイに食材を並べてから俺も外の様子を見に出た。


「おう……もう……」


 外ではたき火台の火を見ながら椅子に座った父親がアルコール飲料の缶を開け、母親と楽しそうに会話をしていた。

 レべ天とマロンは、他の人がいないこのトレーラーハウスの周りで遊んでおり、誰も昼食のことを考えていないと思われる。


(まあ、キャンプなんてこんなもんか)


 自由に過ごすことと不便さがキャンプの醍醐味だと佐々木さんが言っていたのを思い出して、俺も好きに時間を使うことにした。

 一言だけ母親へ作業が終わったと言ってから、手入れのされていない芝生へ寝転がる。


 空には太陽が昇っており、肌が焼けるような暑さを感じるが、心地よい風が吹いて気持ちが良い。


(こんな夏休み初めてだ)


 中・高時代は夏休みなんて関係なくゲーム三昧だったため、こんな風に夏休みを満喫したことがなかった。

 なんとも言えない幸福感をおぼえ、芝生の上で寝ていたら顔に何かが覆いかぶさってくる。


「キュ!」

「あ! こら、マロン、一也さんが休んでいるのにだめでしょ!」


 俺の顔に乗ってきたマロンを抱きかかえながら上半身を起こすと、レべ天が少し怒りながら走ってきていた。

 悪戯心が湧いてきて、マロンを空高く放り投げる。


「ああ!! マロンが!! なんてことするんですか!!??」


 レべ天が涙目で空高く舞うマロンを見上げながら、受け止めるために右往左往していた。

 徳島ではけち火を遠ざけるためによくやっていたことなので、レべ天とは逆にマロンは楽しそうに落下しながら鳴いている。


「マロン!! 私が受け止めるから安心してね!!」

「キュー!」


 微妙に噛みあっていないやり取りを聞いていたら、レべ天から鬼気迫るものを感じてしまった。


(ちょっと驚かせすぎたかな?)


 アイテールさんの力を借りて空を飛ぶように浮き上がり、空中でマロンをキャッチしてから地上へ降り立つ。

 すると、初めてレべ天が怒りながら俺へ詰め寄ってきていた。


「マロンで危ないことをしないでください! 死んじゃったらどうするんですか!?」


 俺からマロンを奪い取って、大切そうにマロンを抱きかかえながら撫でていた。

 初めて見るのには刺激が強すぎたのかと思っていたら、どうやらなにかレべ天の様子がおかしい。


 レべ天はマロンを抱きかかえながらその場に崩れ、肩を震わせている。


「もう誰にも死んでほしくないよぅ……」


 飼育していた動物の死は、レべ天の心に深く刻まれているようだった。

 俺はそんなレべ天へかける言葉を考え始める。

ご覧いただきありがとうございました。

もしよければ、感想、ブクマ、評価、待ってますので、よろしくお願いいたします。


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9月17日より新連載を始めました。

同じローファンタジーになります。

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