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夏休み約束編⑲~谷屋花蓮の決意~

ご興味を持っていただきありがとうございます。

本日、書籍第一巻が発売になります。

タイトルを改名して【ネトゲ廃人の異世界転生記】となっております。

アマゾン等や全国の書店で販売中ですので、よろしくお願いします。

「私はもっと強くなる!! ゴリラなんかに負けてたまるか!!」


 花蓮さんは銃弾で体をえぐられてもホーリーヒールで治して、コングへ剣を振るうために足を止めない。

 手伝うために近づくことを考えたが、今の花蓮さんには不要なことだと感じた。


(あの試練で何かあったんだ……俺に向かってくる敵だけ倒そう)


 いつの間にかスイッチを入れていた花蓮さんの気が済むまで戦わせることにして、俺は静観するように地面へ腰を下ろす。


「俺のところにコングが来ない……」


 仲間を大量に倒されているコングたちは花蓮さんにしか向かわず、俺のところには小石のようなものしか飛んでこない。

 巨大な黒い剣を地面へ豪快に振り下ろす花蓮さんを眺めていたらまぶたが重くなってきた。


(もう普通に上級モンスターを1人で倒せている、強くなったんだな)


 ヤングコングたちを薙ぎ払い、ワイルドコングの胴に向かって横一線に剣を振るう花蓮さんに迷いはない。


 花蓮さんを眺めていたら、なぜかいつもとは違うおしゃれな服を着ており、淡い青色のスカートをひるがえしていた。


(それにしてもなんであんな恰好なんだろう? あれ……いつから着ていたっけ?)


 女性に会ったら服装をチェックしなければならないという、夏美ちゃんとの偽装彼氏経験を生かすことができなかった。

 気持ちを寄せてくれる女性はいるものの、俺には関係ないことだと思い、忘れていたようだ。


(あー……もう眠い……)


 戦う花蓮さんの姿に安心して、俺がメイスを振るうことはないと感じたら、急激な眠気が襲ってくる。

 メイスを抱えてうつらうつらしていたら、花蓮さんから逃げるように跳ねてきたワイルドコングが俺の目の前に着地してきた。


「え?」

「ゴァアアアアアアアアアア!!!!」


 ワイルドコングは足元にあるミスリルの岩石を両手で振り上げており、俺に向かって落とそうとしてきている。

 俺は反応が遅れてしまい顔を起こすことしかできず、テレポートで避けようとしたら岩が砕けた。


「一刀両断!!」


 黒い剣が地面ごと、ワイルドコングとミスリルの岩石を両断する。

 剣を引き抜きながら、俺へ花蓮さんが笑いかけてきた。


「何しているの一也、油断しすぎじゃない?」

「俺がすることはなさそうなので寝ていました。その剣はどうしたんですか?」


 花蓮さんが肩で担いでいた剣は、刀身が黒い木目状の模様になっており、オリンポスの間に入る前とは違う物になっていた。


 おそらく、ダンジョンをクリアしたときにもらったものだと思うのだが、ダマスカス鋼製の武器がもらえるなんて聞いたことがない。


(俺のヒヒイロカネもそうだけど、やっぱりゲームとは違うのか)


 自分で質問をしておいて、1人で納得をしていたら、花蓮さんは俺へ剣先を向けてきた。


「一也、私はあなたに追いつき――いえ、勝つわ!」


 黒い両手剣を向けられたまま花蓮さんの気持ちを受け取ったので、俺もメイスを持ってその想いに応える。


「俺は世界中のモンスターを倒します。それでも勝つつもりですか?」

「当たり前よ! あなたは負けたら、私と一生一緒にいなさい!」


 花蓮さんは真剣な顔で俺へとんでもない約束を突き付けてきていた。

 勢いで答えるには重い問題に、思わず首をかしげてしまう。


「すみません、よくわからないんですけど」

「うるさい! 約束できないの!?」


 自分でも突拍子のないことを言っているのがわかっているのか、花蓮さんは顔を赤く染めていた。

 その約束で花蓮さんがライバルになってくれるのなら、俺は喜んでその返事をする。


「いいですよ。俺は負けるつもりはありませんけど」

「覚悟しておきなさい!」

「新しい武器で戦ってみますか?」

「いいわね。やりましょうか」


 お互いに武器を構えて、踏み込もうとした直前に俺のスマホがけたたましい音を鳴らし始めた。

 武器を振るう気にならず、スマホを気にしたら花蓮さんが剣を下ろす。


「目覚ましの音を出すためにマナーモードを解除していました」

「……もういいわ、電話でしょ? 出れば?」

「すみません……」


 興がそがれてしまったのか、花蓮さんが苦笑いをして剣を鞘へ片付けている。

 戦う雰囲気ではなくなり、申し訳ないと思いながらスマホに出た。


「もしもし?」

「一也か!? お父さんだけど、約束忘れていないよな?」

「どういうこと?」

「天音ちゃんがとても悲しそうに、一也は行けないと思うって言っていたんだが、明日からのキャンプには帰ってくるんだよな?」


 久しぶりに聞いた父親の声で、レべ天とキャンプへ行く約束をしていたことを思い出す。

 レべ天のことを意識したら、悲しいという気持ちが伝わってきていたので、慌ててスマホの時計を見た。


【15:30】


 日本は時差で7時間ほど進んでいるため、今から帰れば翌日のキャンプには間に合う。


「もちろん大丈夫。今から帰るから、明日の朝はキャンプへ向かえるよ」

「そうか!! お父さんやお母さんも久しぶりのキャンプを楽しみにしていたんだ! 朝の5時に出発するから気を付けて帰ってこいよ!」

「うん。必ず帰るよ」


 電話を切ると、花蓮さんがつまらなそうに人差し指で地面へ円を描いていた。

 その後姿を見ていたら非常に気まずいが、俺は逃げることはできない。


「花蓮さーん、続きやりますか?」

「やらない。早く帰れば? 家族でキャンプへ行くんでしょ?」


 すねるように唇をとがらせてそっぽを向くので、どうすればいいのかわからない。

俺が何もしないでいたら、下山するように歩き出してしまった。


「私はあなたがキャンプへ行っている間、差を埋めるためにこの山のゴリラたちと戦うから気にしないで」

「わかりました。ご武運を」

「ありがとう、じゃあね」


 俺を横目で見てから、花蓮さんはコングの気配を感じる方向へ走り出してしまった。

 花蓮さんが剣を振るい始めたのか、足に微動を感じ始める。


(まあ、いいや。俺は帰ろう)


 花蓮さんは確実にこれから強くなるということを感じてから、ワープホールを使用して家へ帰ることにした。

 直接家に帰ると驚かせてしまうので、レべ天の家へワープを行ったら、妙に静まり返っている。


(こんなに静かな家だったか?)


 最近、レべ天の家は他の守護者たちがよく来るようになったので、いつも誰かの声がしていた。

 けれど、今日は物音1つせず、家の中が静まり返っている。


 部屋の扉を開けると、マロンが俺を見つけて駆け寄ってきた。

 足元にすり寄ってきたマロンはなぜか必死に俺のズボンの裾を引っ張ってくる。


「キュー!!」

「なんだよマロン、なにかあるのか?」

「キュー! キュー!!」


 裾が破れそうなほどくらいついてきており、小さい体で踏ん張ってなかなか諦めようとしない。

マロンはリビングに向けて俺を連れていこうとしているようだった。

 

「行くから引っ張るな」


 ズボンを引っ張るマロンを抱きかかえて、ゆっくりとリビングへ近づく。

 空いているほうの手でリビングへの扉を開けると、俺はかつてないほど体がこわばる。


(何があったんだ……)


 リビングでは電気が付いてない真っ暗な部屋の片隅で、レべ天が壁際に座ってうなだれていた。

 初めて見るレべ天の憔悴している姿に、俺は声を出せなくなる。


[シークレットスキル]

守護神の加護

海王の祝福

水神の寵愛

空神の解放

戦神の気骨 NEW

ご覧いただきありがとうございました。

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