北海道解放編②~防衛大臣からの指定依頼~
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応接室に来たギルド長は、大小2枚の封筒を持っていた。
それをテーブルの上へ置いて、ギルド長も椅子へ座る。
「まずはこっちからだな」
ギルド長が小さな封筒を開封して、俺たち全員へ配り始める。
渡された物は【冒険者証】で、Rankが【4】に上がっていた。
一般の部で世界大会へ進出することで、国でも精鋭の冒険者として認められたらしい。
まだ封筒の中に残っているのは、ここにいない真央さんや絵蓮さんの分のようだ。
もうひとつの大きな封筒には大きく、【谷屋花蓮とゆかいな仲間たちPTへ】と書かれている。
花蓮さんがこのPT名を変更しろと高圧的な交渉をしてきたので、剣で勝てたら変えると約束してあげている。
「佐藤、それは防衛大臣からPTリーダーであるお前に送られてきた」
封筒を手に取り、中に入っている1枚の用紙に目を通す。
このままでは俺しか内容が分からないので、机に置いた。
【緊急依頼:北海道にあるモンスター研究所の職員救出 成功報酬:5億円】
俺以外の人が紙を見たまま固まっていた。
研究所が残っていることで受ける被害を考えたら相当安い。
(研究所1ヵ所につき1億ドルの賠償金だから、100億まではいかないけれど、リーダーとしてこの金額で依頼を受けるのは嫌だな)
WAOが全施設の放棄を報告しているため、研究所を残していることを暴露することで日本政府が受ける被害を考えたら、交渉の余地が十分にあると考えた。
「ギルド長、防衛大臣に連絡をしてもらってもいいですか?」
「何をする気だ?」
「報酬が少なすぎます。少なくとも10倍は貰わないとPTとして動きたくないです」
「これの10倍……だと……」
ギルド長が紙を手にして、金額を何度も確認をしている。
他のメンバーも俺の言っていることが正気かどうか疑うような目を向けてきていた。
「ええ、研究所が残っていて払わなくてはならない賠償金をご存知ですか?」
「俺が全世界に向けて話をしたから覚えている」
「こんなはした金じゃないですよね?」
「……わかった、今すぐかける」
ギルド長が隣の部屋へ電話をかけるために立ち上がった。
それを見送った後、残ったメンバーと相談を行う。
「北海道ってどんなところなんですか?」
夏は避暑地で広大な大地が広がっていることしか知らないので、知ってそうな佐々木さんに質問をしてみた。
佐々木さんは変装用にかけている伊達メガネを1回上げる。
「俺の知る北海道は、富士山までとはいかないが、到達困難な土地だ」
「困難なんですか?」
「ああ、最近は特に難しくなっている……」
「理由をお聞きしても?」
「わかった」
花蓮さんや夏美ちゃんも興味があるのか、テーブルに身を乗り出して話を聞き始めている。
佐々木さんは、腕を組んで目を閉じながら思い出すように話をした。
「北海道周辺の海域には、巨大なモンスターであふれている」
この言葉から始まった説明で、俺はもっと報酬金額上げてもいいんじゃないかと思ってしまった。
青森から北海道へ行くために船で向かおうとすると、巨大な【ウニ】の針が船体を貫く。
運よくウニの攻撃をかわしたとしても、北海道に近づくにつれて巨大な【マグロ】や【カニ】が上陸を阻むと言う。
出現する【モンスター?】は非常に美味で、高級店の一部か地元でしか味わえないらしい。
近年はほとんど討伐されないからか、これらのモンスターのさらなる巨大化と価格上昇が進行しているようだ。
話を聞きながら、そんなモンスターがいたのか思い出すために考えてしまった。
(海に出現するモンスターは数が少ないから、忘れているなんてことあるのか?)
一通り聞き終わった頃、ギルド長の部屋への扉が開けられる。
「佐藤、ちょっといいか?」
「はい」
扉を開けたギルド長が複雑そうな顔で俺を呼んだ。
部屋に案内された俺は、ギルド長から机上にある受話器を渡される。
相手はテレビでよく聞く声の人だった。
「佐藤くん。報酬の額だが、希望通り50億に上げよう」
「最低50億です」
「な!? ……きみの要望は?」
防衛大臣は一瞬驚くものの、流石は政治家と言うべきか、話を進めてくれようとしている。
そんな相手へ遠慮なく、自分の意見を伝えた。
「80は欲しいです。50でもいいですけど、その場合は、そちらで北海道へ上陸する手段を確保してください」
「……80あればすべてきみたちがやるんだな?」
「その通りです」
「今晩、篠原ギルド長へ返答を行うから、待っていてほしい」
「わかりました」
通話が終わりそうになってしまっているので、俺はひとつだけ知りたいことを聞いてみる。
「それはそうと、なんで研究所を停止させていないんですか?」
俺の質問を聞いて、防衛大臣は声のトーンを落とす。
「あの研究所では、研究員が建物内だけで自給自足の生活をしている」
「外にはモンスターがいて出られなくなっているんですね?」
「そうだ。それに、国内だけで解決したいため、Rank4で1番強いと思われるきみたちのPTへ特別依頼をした」
「わかりました。報酬の件よろしくおねがいします」
ていねいな言葉と共に電話が切られたので、ギルド長の顔を見たら驚愕した表情を俺へ向けていた。
笑顔で持っていた物を返すために差し出す。
「ギルド長、連絡をしていただいてありがとうございました」
「お前……80って……」
「言ってみるもんですね。検討してくれるみたいですよ」
5億が80億になるのだから、防衛大臣は研究所の件で相当焦っているのだろう。
ギルド長へ今晩、また防衛大臣から連絡があることを伝えてから、応接室へ戻る。
3人の顔が俺へ向くので、一言だけ伝えて解散をすることにした。
「明日、青森へ向かい、北海道へ上陸します。参加希望者は指定する時間に静岡駅集合でお願いします」
テーブルを囲む3人がうなずいてくれた。
花蓮さんに真央さんと絵蓮さんへの連絡を任せる。
「以上です解散しましょう」
夜、ギルド長から報酬が80億になったという連絡が入った。
俺は北海道へ上陸するための作戦を立て始めた。
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