表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

108/274

富士山攻略編①~佐藤一也の憤り~

ご興味を持っていただきありがとうございます。

よろしくお願いいたします。

ストーリー全体の序盤の終盤編になります。

 第2中学校との交流戦が行われた次の日から、俺は学校へ行かずに誰もいない海底神殿へこもる日々が続いていた。

 ここ数日、さまざまな武器でモンスターを倒し続けている。


 それでも自分の中の憤りを抑えることができない。

 今はクラーケンへやり場のない気持ちを込めて拳を打ちつけている。


 剣士中学校へ入学する時点で、冒険者になるべく覚悟をしているはずであった。

 しかし、俺の目の前にいた集団はなんの覚悟を決めずに、ただの銃を持っただけの少年少女だった。


(あの集団は心が弱すぎる! 冒険者は勇気がなければ何もできない!)


 クラーケンの体が緑色に光り、覚醒状態になる。

 俺はそんなことを気にせず、クラーケンをサンドバッグのように殴り続けた。


 今思えば、花蓮さんも最初はスライムと戦う時に怖いなどと言っていたのを思い出す。

 真央さんは過去にモンスターに同級生を殺されたことがあるから、まだモンスターに恐怖する理由は理解できる。


 花蓮さんを基準にすると、大多数の生徒はモンスターと戦うことを恐れているのだろう。

 俺が中学校の競技大会が終わってから、俺のことを全校生徒が怖いと感じたと花蓮さんが言っていたことを思い出した。


(軟弱すぎる! それでモンスターと戦えるわけがない!!)


 そんな集団のいる学校へ通う気になれず、俺はダンジョンでモンスターを狩り続けていた。

 クラーケンを殴り続けていると、緑色の光が消えてなりふり構わず暴れ出す。

 無言でバーニングフィストを行い、クラーケンを焼失させる。


「はあ……」


 いくらモンスターを倒しても俺の気分が晴れることが無い。

 クラーケンのいた場所から出て、ポセイドンへ一言挨拶をしてからここを出ることにした。


 海底洞窟で倒したモンスターなどはポセイドンが処理してくれている。


 今日もお礼を言いにポセイドンのところへ行くと、焦りながら俺がモンスターを倒したおかげで後数千年はモンスターを抑えつけられるようになったと言われた。

 最後にここばかりじゃなく、他のダンジョンへ行ってやってくれと頼まれる。


 ワープホールで家に戻り、部屋の時計を見たらまだ午前中だった。


(富士山へ行くか……)


 ギルド長から目立つなと頼まれたけれど、富士山なら誰も来ないから大丈夫だろう。

 俺は富士山の頂上にいると思われるドラゴンの王、【エンシェントドラゴン】と戦うための準備を始める。


 エンシェントドラゴンは、古代より存在しているといわれている白龍(はくりゅう)

 その巨体と能力で普通の人間など塵のごとく振り払われ、到底かなう存在ではない。

 一説によると、神に相当する力を持っているとも言われている。


 ゲームの時にはレイド戦でしか戦えなかったため、単独での戦闘はしたことがない。

 今回は自分1人だけで勝負へ向かう。


(自分よりも強い相手に会いに行く。この昂揚感がたまらない)


 他の人は冒険にどんな喜びを見いだしているのだろうか。

 自らの命を懸けて、どんなことをしたいのかきちんと目標を決めているのか俺にはわからない。


 頭を振り、余計なことを考えないようにする。

 これから自分はこの世で最も幸せな時間を過ごす。

 必要ないことは頭から消しておきたい。


 そんな時、スマホから着信音が聞こえ、画面を見ても相手が誰かわからない。

 スマホをマナーモードにしてから放置して、準備を続ける。


 その後も何度かスマホが震えており、ずっと無視をしていたら玄関から来客を報せる音がかすかに聞こえた。


 すぐに階段を上がってくるような足音が聞こえてきている。

 ノックもせずに扉が開かれ、そこにはなぜか真央さんが立っていた。


「人の部屋にノックもせずに入ろうとしますか?」

「ノックをしたら、その間に逃げるだろ」


 真央さんの後ろから母親が追いかけるように来ており、俺がいることに驚いている。

 真央さんと母親が話を始めるので、俺はばれないように用意したものをリュックへ入れ始めた。


「やっぱり一也がいるでしょう?」

「本当ね! 太田さんすごいわ」

「私の直感がここにいるって言っていたので」


 横目で真央さんを見たら、誇らしげに母親と話をしている。

 俺は用意をしていた荷物をリュックへ入れ終わり、いつでも富士山へ向かう準備ができた。


「それじゃあ、一也を少し借りていきます」

「ええ、どうぞ」

「え?」


 俺は完全に逃げ遅れて、真央さんに手首をつかまれたまま玄関まで連れていかれる。

 この様子を母親は笑顔で見送っていた。


「いってらっしゃい。遅くなるときは連絡してね」

「わかりましたー」


 俺の代わりに真央さんが返事をして、有無を言わさぬ勢いで家の外へ出されることになった。

 真央さんが外に出ても手を離してくれないので、諦めて目的を聞いてみる。


「真央さん、いきなりどうしたんですか?」

「お前が学校へ行っていないって聞いたからすぐに来たんだ」

「誰から聞いたんですか?」


 家の前には真央さんの車が止めてあり、助手席に清水さんが座っていた。

 清水さんは俺と目が合うと、苦笑いで俺へ手を振っている。


(夏美さんから聞いたのかな?)


 俺が清水さんへ向かって手を振り返していたら、真央さんが俺から手を離して車のドアを開けた。


「乗れよ」

「なんか、誘拐されているみたいですね」

「お前余裕だな……」


 真央さんはドアへ手をかけながらうなだれるように顔を下に向ける。

 俺が車へ乗り込むと、真央さんがドアを閉めてくれた。


(真央さんと清水さんか……聞きたいこともあったから付き合うか)


 真央さんが運転席に座り、慣れた手つきで運転を始めた。

 後部座席でくつろぎながら、清水さんへ夏美さんから何を聞いたのか確認をする。


「清水さん、夏美さんから俺のことを聞いたんですか?」

「そうだよ。後、私は佐藤くんを怒らないといけないの」

「俺、清水さんに何かしましたか?」

「これに見覚えはない?」


 清水さんは助手席から俺を覗き込むように見てきた。

 俺へ差し出すように出された手には、杉山さんが作った帰還石の偽物が乗せられている。


「なんでこれを清水さんが……」

「妹から預かったの」


 清水さんが氷のような視線で俺をにらみつけてきていた。

 バックミラーごしに真央さんへ助けを求めようとしたら、視線をそらされる。


 夏美さんから回収するのを忘れた石を見せつけられて、俺はどう返事をしたものか困ってしまう。

 清水さんは俺ができることを知っているため、下手に嘘はつけない。


「えーっと……」


 俺が様々な方向に視線を移しても、清水さんはまったく俺から目をそらしてくれなかった。

ご覧いただきありがとうございました。

もしよければ、感想、ブクマ、評価、待ってますので、よろしくお願いいたします。


特に広告の下にある評価ボタンを押していただけると、大変励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ついに出た、「俺より強い奴に会いに行く」的な台詞に草。やっぱ戦闘民族タイプか。 「拳が血を求めている」に目覚めるんじゃないぞ主人公。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ