かぜっぴの
「ぷ、ぷふー……」
「あ、あれ? どうしたの、ぴの」
滅多にぷふーと鳴かないぴのが、ぷふー、と鳴いています。
どうしたんだろう?
キノモリさんが心配そうに、ぴのを見つめます。
「さむけがしましゅ……」
キノモリさんがぴのを触ってみました。
本当だ、なんか熱っぽいです。
「ど、どうしよう……? そ、そうだお医者さん! ぴの、お医者さん行くよ! ありゅと、お留守番頼むね!」
キノモリさん、大混乱です。
キノモリさんは急いでぴのをつれて診療所に駆け込み、お医者さんで問診表を書きます。
えっと、かかるのはぴのだから、「きのもりぴの」でいいんだよね? 年は……何歳だ? えーっとえーっと。
懸命に書いた問診表を、看護婦さんに手渡し、順番を待ちます。
「きのもりぴのちゃーん。どうぞー」
順番が来ました。ぴのをつれて、診察室へ。
「えっと、キノモリ……ぴのちゃん?」
お医者さんはキノモリさんを指差し、首を傾げました。
「ああ、違います」
お医者さんが苦笑いをします。
「そうですよねぇ。で、どこにいます?」
「このコです」
キノモリさんはぴのを前に出しました。
ぴのは、ぴょこっ、と立って、丁寧にお辞儀をします。
「よろしくおねがいしましゅ」
「……キノモリさん、このコはねぇ、言葉喋れるけど、小児科じゃなくて、獣医!」
あわわわわ、失礼しました。
キノモリさんはぴのを抱きかかえて獣医さんに急ぎます。
……ついた。
「スミマセーン、お願いします!」
また問診表を書き、名前が呼ばれるのを待ちます。
「キノモリぴのちゃーん。どうぞー」
はああ、待たせちゃってゴメンね、ぴの。
「おや、こみろんらびっとじゃないですか。珍しいなー」
獣医さんはぴのを見た瞬間、そう呟きました。
こみろんらびっとを知ってるだなんて。
「知ってるんですか?」
思わず、キノモリさんは問い返します。
「知らないのは、獣医としてはモグリだよ」
そうなのですか、知りませんでした。
「ぴのちゃん、あーんして。……扁桃腺が腫れてますなぁ」
やっぱり、風邪だったようです。
「シロップ薬三日分出しときますね。お大事に」
家に帰ると、ありゅとがシロップに目を輝かせました。
「これはお薬。飲んじゃダメ」
飲もうとするありゅとから、キノモリさんはシロップ薬を取り上げます。
「ぴのだけ、ずるいじぇ! どうしたらおくすりのんでいいんだじぇ?」
「風邪引いたら、ありゅともお薬必要だけどね」
その日からありゅとは嫌いなお風呂に入っては扇風機の風に当たり、見事に風邪を引いて、シロップ薬をゲットしたのでした……。