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ありゅとの小さな家出騒動

「ぴのはいつも可愛いなぁ」

 キノモリさんが言うのを聞いて、ありゅとはがっくりしました。

 自分のことはあまり褒めたことないのに。ぴのだけ可愛いだなんてずるい!

 ますたーがぴのばっかほめるから、おりぇはもうでてくもんね!

 ありゅとはそう思い立ち、大好きなガルビーのあがりこの封を無断で開け、中から一本取り出しました。

『さがさないでくだしゃい。

 あがりこいっぽんもらってくじぇ!ありゅと』

 さて、どこに家出しましょう。

 ありゅとはあがりこを振り回しながら道を歩いて考えました。

 違うコミロンラビットのところにお世話になるにしたって、この辺にほかにコミロンラビットがいるのかどうかもありゅとには判りません。

 だいたい、ますたーなんて。ますたーなんて。

 さみしくなんかないもんね。

 ありゅとは大切なあがりこをぽりぽりと食べはじめました。

 コミロンラビットはその名のとおり、大食漢なウサギさん。おなかがどうにも空いてきたのです。

 おりぇはいっぴきうさぎしゃんだもんね。

 さみしくなんか……

 あがりこが早くも底をつきました。すると、どうでしょう。寂しくて寂しくてたまらないではありませんか。

「ますたーぁぁぁぁぁ……ぴのぉぉぉぉぉ~」

 キノモリさんとぴのの心配そうな顔ばかり浮かんできます。

 今頃、彼らはどうしているでしょうか。ありゅとがいない、ありゅとがいない、と探し回っているでしょうか。

 ありゅとの心が、ちくり。

 ま、ますたーとぴのがさみしいかもだから、いそいでかえってやるじぇ!

 帰ると、両目を真っ赤にしたぴのが急いで飛びついてきました。

「ぷふー! ありゅと~! しんぱいしたの、しんぱいしたの~!」

 めったにぷふーと鳴かないぴのが、ぷふーぷふーと鳴いています。よっぽど心配していたのでしょう。

 ほ、ほ~ら、やっぱりだじぇ!

 ぴのをよしよし、と撫でているところに、キノモリさんも出迎えてくれました。

「ありゅと、お帰り。冒険はもう終わりかい?」

 キノモリさんは何も知らなそうです。

 ふ、ふんっ。たのしかったじぇ!

 ありゅとは思わず強気な態度をとりました。

 すると、キノモリさんは袋をがさごそと漁りはじめました。

「ありゅとの好きなあがりこ、いっぱい買ってきたから、好きなだけお食べ」

 ありゅとの目の前に、あがりこのパッケージがずらーっと並びます。

 キノモリさんは心配しながらも、きっと戻ってくるに違いない、そのときのために、とあがりこをいっぱい買ってきてくれたのです。

「ま、ますたー」

 だって、そうに違いありません。

 キノモリさんはあがりこがあまり好きではないのですから。

「おりぇ、ますたーにずっとついてくじぇ! ますたーだいしゅき! ぴののつぎにしゅき!」

 キノモリさんはにこにこと笑い、言い返しました。

「うん、ありがと。ありゅと、大好きだよ」

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