とある龍殺しのお話
今後登場予定(おそらく2019年2月頃)のキャラのSSになります
とある少女は、辺境の貧しい村で生を受けた。
生まれたての頃は酷く小さかったその体も、成長とともに他の子供と変わらない大きさになった。
少女は両親の愛を一身に受けた。それも、過保護と思われるほどに。
そんな期待に応えるべく、彼女は家事に、勉強に、遊びに、とにかく全力で取り組んだ。
そう、全ては愛する両親のために。
ある日、村が焼かれた。
賊の襲撃でも、戦争に巻き込まれたわけでもない。
一体の龍が、気まぐれに山を一つ焼いたのだ。
炎は燃え広がり、麓にあった少女の故郷を飲み込んでいく。
少女は両親によって逃がされた。
それから、大好きな両親とは一度も会っていない。
ある日、冒険者ギルドに一人の少女が訪れた。
ボロボロの防具の奥から、大量に赤黒い血が流れ出ていた。
慌てて治療しようとした先駆者達は、少女が手に持っていたものに目を奪われた。
龍の鱗。
それは、この世界において最高の素材。
それは、この世界において希少な素材。
それは、龍を倒さねば手に入らぬ伝説の素材。
少女はこの時から、龍殺しと呼ばれるようになった。
龍殺しの少女は、ひたすらに強さを求めた。
剣の腕は今では右に出る者はいない。
魔法を使わせたら右に出る者はいない。
知識で彼女に勝る者はいない。
故に、少女はいつしか最強の一角にまで上り詰めていた。
最強と謳われる少女は、頑丈な城壁を眺め、深くため息をついた。
国の上層部の命令によりここに赴いたはいいが、正直気が乗らない。
自分より強いかもしれない者がいるなどと言われたが、生憎彼女は自己の強さにしか興味がない。
己が強ければいい。私が世界を守るのだ。
それは、村を焼かれた少女の決意。
それは、両親を殺された娘の決意。
それは、龍を殺した冒険者の決意。
それは、一人の少女の、小さな願い。
強さを求める気高き戦士は、一人の少年と邂逅する。
それは運命か、はたまた偶然か。
真相は、神の振るダイスのみが知る。