表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/279

第7話

「それがだねえ、少々まずいことになってしまってね」

「まずいこと?」


 おやっさんはため息を付くとラピスの方を見やる。


「どうやら貴族のおえらさんに見初められてしまったようでねえ」

「「ええっ!」」


 オレとエクサリーが同時に声を上げる。

 いやしかし、妥当といえば妥当かもしれない。

 どっからどう見ても、非の打ち所のない美女。

 ちょっとばかし変わった耳としっぽが付いていようが、むしろそれがいいと言う感じでもある。


 髪は虹色という、非常に珍しい色をしており、それは幸せを呼ぶ、と言われている、アイリスブラッド種のモンスターに通じるものがあり、それだけでも貴族は喜ぶであろう。

 オレがもし貴族であり、こんな綺麗なお姉さんが下町の片隅で埋もれていたなら、どんな大金を使ってでも手に入れたいと思うかもしれない。


「でも貴族ってあの壁の中から出て来ないでしょ。どうやってラピスの事を知ったの?」

「そういやそうだな」


 この国は、実は非常に危険な場所に作られている。

 この国の初代王様も例に漏れず、天啓のスキルの持ち主であった。

 だがまあ、よその国を奪うことをよしとせず、モンスターがひしめく、魔境を開拓していったのである。


 で、その王様が居る間は良かったのだが、ふと気づけば強力なモンスターに囲まれたど真ん中。

 ちょっと街から足を伸ばせば、致死級のトラップがごときモンスターが沸いて出る。

 どの街も、高い硬い城壁を作り上げ、有力者どもはそこに篭ってしまいましたとさ。


 そういう訳なんで、この国では城壁の外に有る宿場街まで、貴族が降りてくる事はめったにない。


「別に実際に見た訳じゃなくとも、ちょっと毛色の違う女が居るってよ、じゃあ俺ちょっくら呼びつけてみるわ、みたいな感じかも知れん」

「なにそれ、そんな奴らにうちのラピスはあげれないわよ」


 その人殺しそうな目つきやめてもらえませんでしょうか。

 怖いんでちょっと落ち着いてください。


「別に殺そうなんて思ってないし……」


 エクサリーはちょっとショックを受けた表情で、目元をしきりにもんでいる。


「それ断るとまずいんでしょうか?」

「んーどうかなあ、直接言って来た訳じゃないし……とりあえず断っても問題ないんじゃないかな?」

「もしかして商会長から言ってきたんじゃ? それだとそっち方面から圧力かけるぞって意味じゃない?」


 なるほど、えげつない真似をなさる。

 こんな小さなお店、商会から追い出されれば仕入れすら満足に出来なくなるだろう。

 だからと言って、ラピスを差し出すのは問題外だ。

 貴族のお手つきなんてなってみろ、例のパンデミックまっしぐら。


 1カ月足らずで突然10人以上の子供が出来て……さらにその翌月プラス10人……慌てるだろうなぁ、ちょっと見てみたい気分も、いやいやダメだ駄目だ。


 うちのラピスはあげられません!


「事情を説明してみる?」

「それはダメッ!」


 突然声を荒げるエクサリー。


「あっ、その……クイーズのスキルはとっても特殊だから……それこそクイーズが……」


 なんだか赤くなって俯くエクサリー。

 そんなエクサリーの頭を、ポンポンと軽く叩きながらおやっさんが言ってくる。


「そのスキルはあまり人に言わないほうがいい気がするぞ。なんとなくだけどな」


 そうなのかな? オレの故郷ではゴミスキルだの、たったそれだけで何が出来るだの、さんざんな言われようだったんだが。

 個人的には神スキルだとは思っているがな!


「しかしまいったな、商会には結構な借金もあるし、今すぐ耳を揃えて返せって言われるとどうしようもない」

「なんで借金が?」

「ああ、前に事業に失敗した時にな」


 そういや最初の頃に、昔はそこそこ大きい商団を率いていたとか言ってたな。

 それで色々やらかして、今のように小さなお店まで落ちぶれたとか。


 最悪、オレとラピスがここを出て行くしか手がないのかも知れない。

 とはいえ、オレの所有権はおやっさんが握っているから、勝手に出て行くと逃亡奴隷になり、捕まったら鉱山行きだ。

 それとなくおやっさんに相談してみるか。

 エクサリーの居るとこではちょっと……今も心配そうな目つきでこちらをチラチラ見ている。そんな事言ったら即効反対されそうな感じだ。


 などと悩みながらラピスと二人っきりになった夜、


「その全てを解決する方法を、このラピスが提案致します」


 それまで無言を貫いていたラピスが突然立ち上がって発言する。


「ようは、お金があれば全て解決するのでしょう?」

「いやまあ……その通りかもしれないが」


 そのお金がないのよ?

 そんなラピス、それがどうしたかという態度でこう言う。


「なければ稼げば良いのでしょう」


 その通りだよ? いやその通りなんだけどね? あっ、なんか嫌な予感がしてきた。


「ちょうどいいものが、通りに張り出されているじゃありませんか!」

「えっ!?」


 通りに張り出されているもの……えっ、もしかしてアレ!? えっ、アレは無理だろう? いやいやほんと無理ですよ?

 その通りに張り出されて居るものは……


『ドラゴン討伐隊大募集!!』


 であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ