第18話 魔都サンムーン
「いやあ、良く来たねぇ」
あの後、縄を解かれ、身体調査をされた後、オレは食堂に通された。
そこには、くっちゃくっちゃと料理を頬張る、一人の少年が座っていた。
かなり横幅のあるお方で、座っている椅子も長椅子である。
「まあ座りたまえ、コレコレ、この者に朝食の用意を」
オレが座ると同時、運ばれて来るわ、運ばれて来るわ。
えっ、これ全部食べないとダメなの?
いや、さすがに朝からこんなにはムリ。
まあ食えるだけは食わしてもらうがな。
「いい食べっぷりだねぇ」
「なんなんだアイツ、危機感って奴がないのか?」
「さすがは史上最年少のドラゴンスレイヤーって奴か」
そう言って呆れたように苦笑いしている後ろの人達。
おっとぉ、オレのドラゴンスレイヤー(笑)がディスられていますか?
アレはアレでちゃんと役にやっているんですよぉ? 主に看板的な意味合いで。
「さて、本日ご招待差し上げたのは他でもない、少しばかり手伝って欲しい事があってね」
ご招待ねえ……
まあ色々不満が無い事はないが、話ぐらいは聞かせてもらおう。
「まず最初に聞きたいのだが、ボクを誰だか知っているかね?」
ご存知ありませんな。
どっかの貴族様でございましょうか?
「まあ、威張って言う訳じゃないけどね。この国の王子様だよ!」
おっとぉ、王族ときましたかぁ。
そんな王子様がオレにいったい何用でしょうか?
「もうすぐボクの成人の儀があってね。それまでにどうしても手に入れたい物があるんだ」
王子様のお話ではもうすぐ15歳の誕生日なので、その時までにどうしても欲しい物があって、それを手に入れる為にオレの力を借りたいとか。
「欲しい物はダンジョンコア。ダンジョンの最深部に眠る、巨大な魔法石なんだよ」
この世界では、ダンジョンは一つのモンスターであると言われている。
そして、その正体はダンジョンコアと呼ばれる、巨大な魔法石であると。
その魔法石があるかぎり、ダンジョンは壊れても元に戻るし、老朽化もしない。
しかしひとたびその魔法石が無くなると、とたん崩壊の一途を辿る。
「そんな事をしたら冒険者達が困るのではないですか?」
「それは冒険者が通っているダンジョンであればの話であろう」
街から遠く離れた、魔境にあるダンジョンであれば何も問題はないと言う。
そして、目星を付けたダンジョンには既に、転移の魔方陣をセットしていると。
「転移の魔方陣とはまた大掛かりな……」
それには確か数十人の魔術師と、時空魔法のスキル保持者が必要だったはず。
「まあ元々はそこにあった物、だからね」
王子が椅子から立ち上がると、従者の方が寄ってきて服装を着替えさす。
最後に豪華な剣を受け取った王子はソレを抜き、中空に構える。
「行き場所は一つ! 我らが始祖がおわす場所、我らが聖なる大地、旧王都、サンムーン!」
サンムーン、それはこの国を作った天啓スキルの持ち主、その人が打ちたてた都市。
もっとも深く魔境に根ざした人間の街。
しかしその栄華は長くは続かなかった。
その天啓スキル保持者の王様が居なくなったとたん、モンスターに街の大半を破壊され、行き場を失った多くの人達はそこで死に絶えたと聞く。
今は、その死に絶えたと言われる人達が徘徊する、アンデッドの街、魔都サンムーンと言われている。
サンムーンか……確かオレの前世の記憶では、サンは太陽、ムーンは月。
人が栄華を極めた太陽の街、そして今は死者が徘徊する月の街。
唯の偶然であると思うが、不気味な一致だな。
そんな不吉なとこ行きたくないんですけど。
「サンムーンは今はダンジョンのように迷路となっている。そしてその中心である王城にはダンジョンコアが存在する事も確認されている」
その都市そのものがダンジョンと化している、という事か。
「そのダンジョンコアを手に入れたなら……」
「手に入れたなら……?」
「誰もがボクを次代の王として認めるであろう!」
パチパチパチと周りの人達が拍手をしている。
オレもしなくちゃなんないのかな? まあ、いいか。
オレも一緒に拍手をしてあげる。
「しかしどうやってダンジョンコアを取り出すので?」
そこにあると分かっていても、それを手にする事が出来なければ所詮、絵に描いた餅である。
そして聞く限り、とっても危険な場所。
そもそもそんな事出来るならとっくにやってますよね? あっ、なんか嫌な予感がしてきた。
「そこで君のスキルの出番だ! ダンジョンコアの目の前には始祖と思わしき高位のアンデッドがいる! そのアンデッドを、その切り札でやっつけてはくれまいか!」
「むりムリ無理!」
オレは首をブンブンと振って拒絶する。
そもそも、オレのスキルはモンスターに対する切り札なんかじゃなくて、
「カシュア王子、転移魔方陣の準備が整ってございます」
「うむ、それでは行こうか」
モンスターカードのスキルを説明しようとした所、一人の兵士がそれを遮るのだった。




