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対超能力探偵事務所  作者: クックロビン未遂
3/4

壁抜けの男ー概要ー

ホテルの一室で男が殺された。今回の事件は簡単に言うとそういうことだ。とはいえ、ただそれだけの事件なら、わざわざめんどくさがりの探偵なんか呼ぶわけがない。今回の事件の最大の難点は、事件当時、現場の部屋は「完全な密室」だったということだ。


事件を解決したらご褒美に満腹道の一個500円のプリンを好きなだけ買っていいと言って、ようやく先生をその気にさせた僕は、先生と共に事件現場のホテルに向かっていた。先生はその見てくれに反して、甘いもの、特にプリンには目がないのだ。そういうところは意外と女の人らしくて可愛いと思うが、たまには普段の食事についてももう少し気にしてほしいと思う。僕が作ってあげないと、大抵カップラーメンで、コンビニ弁当ならまだいい方、一番ひどいときは、めんどくさがって限界まで何も食べない、という事態になった。事務所に倒れている彼女を見たときは冷や汗ものだったが、その理由が、めんどくさかったから三日何も食べてない、だった時には、僕の心配を返してほしいと思ったものだ。本当に人騒がせなひとである。


銀のパッソを走らせて目的地に急ぐ。運転手はもちろん僕。先生は助手席で安らかに寝ている。先生も一応運転免許は持っていたはずだが、僕はこの人が自動車を運転しているのを見たことがない。たぶん、いや、間違いなくペーパードライバーだろう。一人だけぐっすりお休みしているのは多少腹が立つが、起きていたとして、運転を代わってもらうなんてことは怖くてできない。まあ、もちろん本人もめんどくさがって拒否するだろうことは目に見えているが。おとなしく目的地まで急ぐのが助手の役目だ。


それから三十分ぐらいで目的地に着いた。十階建ての高級ホテル「雅」、ここが今回の事件の現場だ。何でも上階からの絶景はもとより、温泉と料理の評判もよく、三か月先まで予約が埋まっているほど人気のホテルなんだとか。まあ、今回こんな事件が起こってしまって、これからその人気がどうなるかはわからないが。全くもってご愁傷様である。すでに警察によって現場規制がされ、関係者以外はホテルに入れないようになっている。とはいえ、僕たちがそこで足止めされることはない。先生を起こして(なお先生は寝起きが悪く、起こすのに十分近くかかった)近くにいる警官に話しかけると、あちらも事情はちゃんと聞いているらしく、あっさり中に通してくれた。とはいえ、これは当然のことだ。何せ僕たちの依頼人というのはほかでもない、日本警察なのだから。


被害者は前川俊也、32歳独身。大手企業に勤めるやり手のサラリーマンで、部下や上司との関係も良好。ただ女癖が悪く、浮気性なため、女性と付き合うことは多くとも、結婚まではこぎつけていなかったとか。

まあ、正直そんなことはどうでもいい。被害者がどういう人間だったかなんて、僕たちには関係ないことだ。

基本的に僕たちが犯行の動機について考えることはない。それは警察の仕事だ。僕たち(というか基本的に先生だが)の仕事は、超能力者のかかわっていると思しき犯罪について、それが可能であったかどうかという立証を行うことだ。

超能力者の冤罪防止のための法案が可決されてから、警察は今までのように超能力者だからといって簡単に捕まえることができなくなった。いや、むしろ立証の煩雑さを考慮すれば、超能力者である方が起訴するのが難しいといっていい。それでも大抵の事件は警察内部の超能力犯罪専門の特殊チームが何とかするのだが、たまに警察では立証できないような難事件が発生することがある。

そういう時に呼び出されるのが対超能力犯罪専門家とでもいうべき先生、斑田はんだみやこだ。

彼女がなぜ超能力犯罪の専門家なんてものになったのか、僕は知らない。おそらくはそれなりの理由、切っ掛けとなるような、なにがしかの事件があったのではないか、とは思うのだが。

そう、僕が彼女の助手となることを決めた、あの事件のような、、、

いや、この話は、また機会があったら語るとしよう。今はこちらの事件が先決だ。


死因は後頭部を殴打されたことによる脳挫傷。ようは鈍器で頭を殴られて死んだ、ということだ。結構な威力で殴られたらしく、一発で致命傷になったらしい。多少争ったような形跡があり、被害者が逃げようとしたところを後ろから殴ったのではないか、とみられている。ただし容疑者につながりそうな手掛かりはなし。凶器についてはまだ見つかっていないため、詳しいことは不明。ただ、威力からみてそれなりの重量のあるものではないか、ということだった。


死亡推定時刻は13時から14時までの間。被害者はちょうど昼食を食べ終えたあと、といったところだったようだ。


さて、肝心の殺された場所は、6階にある被害者が泊まっていた部屋、603号室だ。ちなみに第一発見者は夕食を届けに来たホテルの従業員だそうだ。

このホテルは一階のロビーと最上階を除き、すべての階層でコの字を描くように部屋が配置されている。スペースの関係で、同階にある部屋は広さや配置に多少違いがあるそうだが、上下に見ると完全に同じらしい。つまり、101号室と201号室は全く同じ、302号室と702号室も全く同じ。肝心の3号室についても、203号室から903号室まで全て、家具などの配置も含めて全く同じということだ。


さて、ここからが大事なのだが、このホテルは各階の廊下に監視カメラが設置されていた。その中には当然603号室のドアも映っており、当初ホテル側は、犯人はすぐ捕まえられると思っていた。しかしそうはいかなかった。その監視カメラによれば、603号室に入ったのは間違いなく被害者だけだったのだ。前日に従業員が清掃に来てからは、その部屋には被害者以外は誰も入っていなかった。その部屋へ入るためのドアはそこだけで、ベランダなどはなく、隣の窓から窓へ乗り移れるような幅でもない。監視カメラは最新のもので、細工ができるようなちゃちなものではない。


ホテル側は大いに混乱した。


しかし警察は、すぐにこの事件を超能力者の関与が疑われると判断。対超能力犯罪専門チームを派遣するとともに、データベースより事件当日ホテル付近にいたと思われる超能力者を探した。

そしてそれは、すぐに見つかった。事件当日、同じホテルの403号室に泊まっていた男が超能力者であったことが判明した。


武田智樹28歳、能力は、透過。

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