第一話 ボッチ勇者 シリウス シルバーの暴走
この作品は、私の溜まりにた溜まった鬱憤を爆発させた作品のため、文章は保証いたしません。それでもよろしければ、読んでみてください。お願いします。
はじめまして、俺は勇者です。
はい。そうです。皆さんご存知の悪魔とか、奇妙な怪物とか、堕天使とか、魔王とかを倒して、世界を救う勇者のことです。
現に、俺は魔王城に一人潜入しているところだ。恐いかって? 舐めるなよ、俺は神より絶大な力を貰った勇者だぜ? そこら辺にいるモブ下級悪魔など眼中にない。むしろ、正々堂々と正面突破して、襲い掛かってくる敵をほふっている。いや、その表現は悪者っぽいから、浄化してあげてるに変更――ってそんな変わんないないな。
そう言えば、魔王ってどんなやつなんだろうな。俺の知ってるイメージだとさ、頭から二本の角が生えてて、漆黒のマントを付けてて、そして顔が鬼みたいに強面なことぐらいか? うん? そうそう忘れてた。魔力が他の奴より強いんだったな。
でも、心配ご無用だぜ、超ウルトラ美女女神さま。俺に任せて――――
「調子に乗るのもいい加減にしなさい!!」
「鼓膜が破けるぅぅぅぅぅぅぅぅ!! いきなり、叫ぶんじゃねぇ!! 見た目だけ女神が!!」
「鼓膜でも心臓でも破けてしまいなさい!! まったく、なぜこんなダメ男を勇者などに任命してしまったのでしょ・・・・」
そう言って、女神は大きな、それはもうとても大きなため息をついた。それだけで、世界が吹き飛んでしまうのではないかと心配になるほどである。
ちなみに、女神は直ぐ近くで叫んだわけではなく、天界よりテレパシーを通して、俺の心に話しかけているらしいよ? なぜ、疑問文なのかって? それは俺が知らないからだけど? 何か問題ある?
「だ、だ、だ」
俺の耳(正確には心だが)に入ってくる女神の声が震えていた。なんで?・・・・あっ! そうかそうか、俺の心の声は女神には自分のことのように聞こえるわけだね? なるなる・・・・おい、それは個人情報侵害だろ。
それに気づいた俺は、叫ぼうとして――――
「てめぇ、人のプライバシーを侵害したんだ。慰謝料はら――――」
「ぶざけるのもいい加減にしなさい!!!!!」
「すいませんでした」
天を穿つ雷のような声で怒鳴られ、瞬時に土下座を発動しました。え? さっきの勢いで反抗すればいいじゃないか、だと? はぁ・・・・これだから何も知らないヤツは嫌いなんだよ。特別に教えてやるが、もし、今俺が華麗なステップで土下座やらなかったら、世界のどこかに巨大な竜巻とか、火山の大噴火とか、大地震とかとか、起きて人が死ぬんだぞ? まぁ、正直に言えば、俺には無関係だし、興味はあるぜ? でも、自分から「人を殺すのは快楽だ。生き様だ」とか好きこのんでやる狂乱者はそうそういねぇだろ?
「あなたと話すと歳をとるのが急激に早くなる気がしますよ・・・・」
「歳って、あんた150万歳のババアだろうが。何をいまさら気にして――――」
横が妙に暑いことにことに気がついて、横に目を向けると、そこには全身をメラメラとした火に包まれ、目が血走っている女神さまがおられた。どうやら、テレポートを使って、こちらに来たらしい。こ、こいつ、俺の年齢話に対する返しが、ノリだって分からないタチか。いやいや、こいつとは長い付き合いだ。勇者になってから、早2年。こんな性格の俺は仲間を作って楽しい旅をということが出来なかったために、いつも女神が「まったく、仕方ないから私がお相手して差し上げましょう」と言って話していた。だ、だから・・・・こいつがその方面の話題に、非常に怒りを覚えるか、よくよーく 知っているわけで・・・・・さようなら、皆さん、第1話にして――――
「死になさい!!!!!」
「終了のお知らせぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
その場内全域に、男の断末魔の声が響き渡った」
魔王を倒す一歩前にして、勇者は死んだ。FIN。
「勝手に終わらせないでよ!!! FINはまだまだ先です」
「んだよ・・・・ここでめんどくさい心の声が終わると思ったのに・・・・」
「とにかく、そろそろ私達の紹介をしないと。想像しにくいとか、感情移入出来ないだとかの批判コメントがきますよ?」
「お前って、本当に女神さまなの? 嫌いなキャラ第一位が確定したぞ?」
というわけなんで。皆の集、お待ちかねの紹介タイム(棒読み)。
では、まずは、俺からだな。さっきから心の声を担当しているシリウス シルバーだ。シルとか
シルバとか、いや、それはダサいから。勇者でいこう。みんな、俺のことは勇者ってよん――――。
「そろそろ、本気で天罰を与えますよ? シ・ル・バ?」
「分かった分かったから、その物騒な槍をしまってくれ、頼むから」
今取り出した槍は、別名「ライザンの槍」と言って、かの昔に雷神ライザンが使用して、初代魔王を打ち滅ぼしたという伝説の残る武具だ。それを初めて聞いた時、俺は「それがあれば、魔王倒せんならさ、自分でやれば?」と言ったことがあるのだが、女神は「いえ、この槍は威力が高すぎて、魔王どころか、世界すら破壊してしまうので、使えないんです」と言って入っていた箱にしまい込んだ。物騒すぎる。
というわけで、俺は天命を受け、魔王討伐の旅に出て、現在に至るわけだ。
ではそろそろ話を戻そう。呼び名は好きにしてくれていい。歳は16。髪は短髪の銀髪。顔はよくある普通の顔。特徴という特徴がない平凡な顔で、いわゆるイケメンからはほど遠い。唯一、頬にほくろが2つあるぐらいか。
で、俺の目の前にいる女神の名は、サーシャ。齢・・・・なんでもありません。髪は紅蓮の炎のような赤髪。顔はこれでもないくらいの整った顔つきで、目は大きく、口元は潤んでキラキラと輝いている。いわゆる、絶世の美女なのだが・・・・歳が・・・・・なんでもありません。知りません。
「・・・・なんですか。その文才が平凡を象徴するような人物紹介は、もう少し細かく出来ないのかしら?」
「おい、この世界じゃないが、人間が一人床を転げ回ってるぞ」
「あらあら、それはごめんなさい。お父様からよく、「真実を伝えることはその人のためだ。嘘は、その人のためにならない」って言われたから、実践したんだけど」
「人を選べよ。そいつ、心めちゃくちゃ弱いから、簡単に自殺すんぞ?」
「命を無駄にするなんて、神として許せません」
「お前が言うなゃゃゃゃ!!」
さすがのおふざけの伝道師である俺も、今の自分のことを棚に上げた発言には叫んでしまった。というよりは、呆れた。
サーシャは、確かに自他ともに認める完璧美女なのだが、唯一欠点がある。それは、天然であるということである。神なのだから、全知全能だろ? と思ってるだろうが、残念ながら違う。神と言えども、勉学や修行といった鍛錬を通して、一人前の存在になるらしい。正直、そこらへんの話題にはカスほどの興味もないので、それ以上のことは分からんのだが・・・・目の前にいるアホ天然女神もその教育を施されてきたというから、驚き、仰天、雨あられなわけだ。しかも、成績は常に優秀だったと本人の口からきいた時には、何度も聞き返してしまった。
と、そんな事を話している間に、いつの間にか四方八方を敵に囲まれていた。その数、およそ100体。歴戦の勇者の俺には何の問題もない。格の違いを見せてやる。
「おい、駄目っ子サーシャ。お前は下がってろ。足でまといになるから」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・あれ? 返答がないんだが。
「悪かったよ、だから、言葉のキャッチボールぐらい相手してくれよ――――って! いねぇじゃねぇか!!!! あのクソ女神モドキめ、この俺を出し抜きやがって!!」
俺の馬鹿にするような口ぶりに頭にきて黙っていると思い、恐る恐る振り返ると、そこにはサーシャの姿はなかった。そう認識すると同時に、耳の中(心の中に)にアハハという大笑いが聞こえてきた。それは大爆笑というレベルのもので、耳の中がサーシャの笑い声に占拠された。フフフ・・・・俺を侮辱するとはいい度胸じゃないか? あん? いいか耳の穴かっぽじって、よく聞きやがれ!! 世の中には触れてはいけない秘密、いわゆる禁忌がある。その一つに、お前は触れてしまった。俺の自尊心をえぐるように破壊したんだ。破壊したんだぞ!? うわぁん!!!!! て、手始めに周りにいるノミ共を血祭りに上げやるわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
俺は、右側の腰に付いている鞘から、銀色に光る剣を引き抜いた。聖剣エクスカリバー。俺が勇者になったと同時にあのアマ女神から与えられた先代勇者の遺産である。名前は、たしか・・・・・ア、アサヒ・・・・・・すまん。思い出せない。
二代目魔王を滅ぼした滅魔の力を持ち、あらゆる魔術拘束にも耐性を持っている。
そうそう、今の魔王は三代目で、俺も三代目勇者だ。
「貴様ら雑魚がどれだけ、群れになって挑んでみても俺には絶対にかてないんだからな!!!! 分かってる?」
「ギィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!」
「意思疎通が出来ねぇ!! それじゃ、意味ないんだよな・・・・まぁ、いいか」
俺の目的が鬱憤ばらしであるなら、たとえ相手が下級悪魔ギブリであろうとも問題はないのだが、気分的にも対外的にもあまり盛り上がらないのが難点である。
と、そこへ―――――
「シルバくん!!! あなたは本当に勇者なの? 任命した私が言うのもなんですが、あなたの考えていることは勇者のそれではありません。むしろ、悪魔に堕ちた者たちのような意志です」
サーシャはそう多分に非難のニュアンスを含んだ声で言った。いつの間にか、戻ってきたようで、俺の傍らに憮然として立っている。
悪魔に堕ちた者のような。それは、つまり俺にも悪の根が潜んでいるということか、ただ芽を出していないだけで、心の奥底にはあるということか。
「悪魔に堕ちた者のような、か。ふん、別に俺は悪魔だろうと、勇者だろうと、俺自身が幸福になれるならそれでいい。けど、俺は勇者に選ばれたわけだからな、そうなった以上は義務を果たす。世界を救うというな」
「な、なんて自分勝手な考え方。それで、もし、もしもですよ。悪魔の方が自分にとって有益だ、と思ったら、シルバは悪魔の味方になって、世界を征服するんですか?」
「もちろんだ。悪いが、俺にとってこの世界のことなどどうでもいい。なぜ?とは聞くなよ。それが俺の世界に対する本心だからだ。理由なんてないし、それを説明するつもりもないで、よろしく」
生まれた世界。生きてきた世界。人々が生きている世界。それは、俺にとってあまり興味がないことだ。なぜなら、俺にはこの世界との繋がりがない。生まれた世界ではある。だが、それ以上のことはないのである。良き友人もいなければ、切磋琢磨できるようなライバルもいない。つまらない、異常に底なしにつまらない。なら、別に悪魔に堕ちても構わないだろう。まぁ、あくまでも仮の話だ。
しかし、その話を本気にしてしまったらしいサーシャは目を丸くして、呆然自失と言った様子だった。これは、困ったな・・・・。
「あの・・・・サーシャちゃん?」
「・・・・」
返答がない。
「今の話は全部冗談だからな。本気にすんなよ、な?」
「う、う、う、っ!」
「う?」
「裏切りものは退治してやるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
「おい! よせ、それは、それは――――うぎゃゃゃゃゃ!!!!!!」
サーシャの放った神気法「インフェルノ・ストリーム」がその場にいた全ての敵を焼き払った・・・・・・・ぐふ。
「とうとう辿りついたな。魔王の部屋に」
「ええ、そうですね・・・・以上に長い時間がかかったような気がしますが」
「言うな。てか、魔王なんだから配下の幹部的なのはいないのか?」
「さぁ、知りませんわ。魔界には特殊な結界が張り巡らされていて、内部の情報は全くわかりませんから」
「ふーん。まぁ、いいや。心の準備はいいか?」
「はい。問題ありません」
そう。力強い口調で言葉を返してくる。
俺はドアに手をかけて、力強く押してゆく。ごぉ、という轟音を立てながら、ドアはゆっくりと開いた。
と、同時になまめかしい声が正面から飛んできた。
「ハロハロ、ヒーロー? お元気でございますか?」
「元気元気。で、お前だれだよ? もしかしなくても、魔王か?」
「うん。そうだよ!!」
天真爛漫な態度で、元気よく返事をしてきた魔王はただの幼児だった。
読んでいただきありがとうございました。