エピローグ
「ほな、行って来るで」
兼村はそう言うと立ち上がった。
連続婦女暴行魔の任意同行……建前は任意であるが実質逮捕の為であった。
同時に家宅捜索も行われるはずだ。
麻耶も無関係ではないのだが、女性と言う事で被害者の事情聴取、ケアを主としていた事と、被疑者が凶器を所持している可能性等から今回の逮捕劇からは外された。
アーミーナイフの購入者リストにもあった田原の名。
今更ではあるがこれまでの被害者は少なからずあの病院に関わっていた。
元入院患者、その家族、医大生……
もっと早く気付いていればと悔やまれる。
麻耶が知る限りで未遂含め5件。内親告1件、いや2件。
親告した被害者が置かれる今後の状況を考えると憂鬱にもなるが、俯いてばかりはいられない。
「宜しくお願いします」
背を向ける兼村に立ち上り深々と一礼する。
そんな麻耶に振り向かず応える兼村。
「後は頼んだで。さ・な・い・刑事」
その言葉の真意を理解するまで、そう長くは掛からなかった。
はっと顔を上げると、兼村は罰が悪そうに片手を上げ遠ざかって行く。
「はい!」
麻耶は太陽のように笑った。
嫌いなんで故意に字下げはしておりません('A`)職業病かも???