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ー【第三節】熊さえも賢者タイムで帰宅、聖域に侵入しようとする者に与えられる強制的な虚無

第三節 熊さえも賢者タイムで帰宅、聖域に侵入しようとする者に与えられる強制的な虚無


私の【絶対安息領域】の効果は、建物の美化だけにとどまらない。

防衛機能としても、最強の性能を誇っている。


バリアの範囲内、つまり私の半径五十メートル以内に、私に対して「害意」を持つ者や、「ストレスの種」になり得る存在が侵入しようとすると、即座に迎撃システムが作動する。


具体的には、対象を強制的に「虚無モード(闘争心の完全喪失)」に陥らせるのだ。


先日、裏山から巨大な野生の熊が現れた時のことだ。

体長二メートルはある凶暴そうな熊が、私の家庭菜園のトマトを狙って鼻息荒く突進してきた。


「グルルルルッ!」


涎を垂らし、鋭い爪を振り上げた熊。

普通の人間なら腰を抜かす場面だろう。

だが、私はトマトの手入れをしながら、チラリと熊の方を見ただけだった。


目が合った瞬間。


『スンッ……』


熊の表情から、獣の凶暴性が嘘のように消え失せた。

充血していた目は穏やかな慈愛に満ち、荒い鼻息は静かな深呼吸へと変わる。

振り上げていた爪をそっと下ろし、熊はまるで悟りを開いた高僧のような顔で、私に一礼(したように見えた)をして、静かに森へと帰っていったのだ。


「……トマト、食べたかったのかしら?」


私が一つ投げ渡してやると、熊はそれを大切そうに抱え、スキップするような足取りで去っていった。

あれ以来、森の動物たちは私の領域を「不可侵の聖地」として認識しているようだ。


人間に対しても同様だ。

たまに、王都の動向を探りに来た密偵のような男たちが遠くからこちらを覗いている気配を感じるが、彼らもバリアの縁に触れた途端、「俺はなぜこんなことを……家に帰って猫でも撫でたい……」という顔をして帰っていく。


誰も、私の安息を乱すことはできない。

ここは、世界で一番安全で、平和な場所なのだ。

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