【第三章】【第一節】廃墟同然の修道院が輝く聖域へ、それは汚れと劣化を拒絶した結果の奇跡
第三章 辺境の楽園と崩壊する王都
第一節 廃墟同然の修道院が輝く聖域へ、それは汚れと劣化を拒絶した結果の奇跡
王都を追放されてから、一ヶ月が過ぎた。
私が辿り着いた辺境の修道院は、当初は目を覆いたくなるような惨状だった。
屋根には穴が空き、壁はツタに覆われ、床は腐りかけ。
蜘蛛の巣が張り巡らされたその場所は、まさに「お化け屋敷」と呼ぶにふさわしい廃墟だったのだ。
レイド殿下は、私にここで惨めな生活を送り、泣いて詫びを入れさせようと画策していたのだろう。
だが、残念ながらその目論見は完全に外れた。
現在の修道院を見て、誰が廃墟だと思うだろうか。
「うん、今日もいい天気ね」
私はテラスに出て、眩しい朝日で目を細めた。
目の前に広がるのは、新築同然にピカピカと輝く白亜の修道院だ。
穴の空いていた屋根は修復され(たように見え)、ツタは綺麗さっぱり消え失せ、窓ガラスは一点の曇りもなく磨かれている。
魔法で修繕したわけではない。
大工を雇ったわけでもない。
すべては、私が習得した固有スキル【絶対安息領域】のおかげだ。
このスキルは、私の半径五十メートル以内を「聖域」と認定し、私にとってストレスとなる事象を徹底的に排除する。
「風化」「汚れ」「害虫」「雨漏り」……これらはすべて、私の快適な生活を脅かすストレス要因だ。
ゆえに、私の領域はこの廃墟に対して「劣化すること」を拒絶し、「清潔であること」を強制したのだ。
結果、修道院は時間を巻き戻したかのように、いや、それ以上に美しく生まれ変わってしまった。
「あそこだけ光り輝いているわねぇ」
「きっと女神様が降りてこられたんだべ」
近隣の村人たちが、遠巻きに修道院を指差して噂しているのが聞こえてくる。
どうやら、この修道院は今や、ちょっとしたパワースポット扱いされているらしい。
時折、塀の外に野菜や果物が供えられていることもある。
ありがたく頂戴しているが、私は女神でも何でもない。ただの究極の事なかれ主義者だ。




