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ー【第四節】緊急帰国した第一王子の手腕、そして庭園で空を見上げるだけの無害な存在

第四節 緊急帰国した第一王子の手腕、そして庭園で空を見上げるだけの無害な存在


その後、王都がどうなったかについては、風の噂で耳に入ってきた。


レイド殿下が廃人化して帰還したことで、王宮は大パニックに陥ったらしい。

「聖女の呪いだ」「いや、天罰だ」と様々な憶測が飛び交ったが、結局のところ、原因不明の精神崩壊として処理された。


唯一の王位継承者と思われていたレイド殿下が使い物にならなくなったため、事態を重く見た国王は、隣国へ留学中だった第一王子を緊急帰国させた。

この第一王子は、レイド殿下とは違って極めてまともで優秀な人物だったそうだ。


彼は帰国するなり、腐敗していた魔導師団を解体・再編し、正規の手順で結界を張り直した。

聖女一人に依存する危ういシステムを廃止し、複数の魔導師によるシフト制を導入したことで、王都の守りは以前よりも強固になったという。

また、レイド殿下の取り巻きだった汚職貴族たちも一掃され、国政は健全化していった。


皮肉なことに、レイド殿下が「退場」したことで、国は救われたのだ。


そして、当のレイド殿下はどうなったかというと。


彼は今、王宮の奥にある静かな庭園で余生を送っているらしい。

一日中、ベンチに座って空を流れる雲を眺め、時折飛んでくる蝶を目で追いかけ、ニコニコと微笑んでいるそうだ。

食事と排泄の世話は必要だが、誰にも害を与えず、誰も憎まず、ただ植物のように静かに呼吸しているだけの存在。

かつての傲慢でヒステリックな王子はもういない。

ある意味で、彼は「幸せ」を手に入れたのかもしれない。

私が与えた、永遠に覚めることのない安息の中で。


一方、私の方にも変化があった。

国が持ち直した後、第一王子の名で正式な復縁要請の手紙が届いたのだ。


『貴殿の功績と能力を再評価し、国賓待遇での帰還を望む。また、王太子の婚約者として迎える用意がある』


破格の好条件だった。

普通の令嬢なら泣いて喜ぶだろう。

名誉の回復、最高の地位、そして何より、まともな婚約者。


しかし、手紙を受け取った私は、一秒も迷わなかった。

さらさらと返事を書き、使者に渡して門前払いした。


手紙の中身は、たった一行。


『無理です。あなたの国、空気が悪いので』


王太子殿下がその手紙を読んでどんな顔をしたかは知らないが、二度と勧誘が来ることはなかった。

彼もまた、優秀であるがゆえに悟ったのだろう。

この聖女は、もう二度と権力という名の檻には戻らないのだと。

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