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ー【第三節】プチンと切れた堪忍袋の緒、せっかくの安息を汚すノイズへの冷徹な宣告

第三節 プチンと切れた堪忍袋の緒、せっかくの安息を汚すノイズへの冷徹な宣告


「は……? い、今なんて……?」


レイド殿下が呆けたような顔をする。

私は飲み干したティーカップをソーサーに戻し、それを足元の芝生の上にそっと置いた。

もう、優雅なティータイムは終わりだ。


私の中で、何かが「プチン」と音を立てて切れた。


せっかく手に入れた安息の日々。

小鳥のさえずり、トマトの成長、毛玉ちゃんとの穏やかな夜。

それら全てを、この男は再び踏みにじろうとしている。

しかも、謝罪の言葉の裏で「地下牢監禁」や「死ぬまで搾取」などという物騒な計画を練りながら。


許せない。

怒りではない。

もっと根源的な、生理的な嫌悪と拒絶。


私の完璧な「絶対安息領域」に、これ以上ノイズを混入させてはならない。


「毛玉ちゃん」


私が呼びかけると、足元の黒い塊が『モフッ!』と力強く応えた。

毛玉ちゃんもまた、怒っているのだ。

いや、正確には「目の前の巨大な生ゴミ(ストレスの塊)」を処理したくてウズウズしているのだ。


「お客様がお帰りです。……いえ、お帰りいただく必要もありませんね」


私は冷徹な眼差しで、バリアの向こうにいる元婚約者を見据えた。


「レイド殿下。あなたのそのヘドロのような欲望……今の私には騒音でしかありません」


「な、何を言っているんだセシリア! 俺は王子だぞ! 不敬だぞ! さあ、バリアを解け! 命令だ!」


本性が露呈し始めたレイド殿下が、拳でバリアを叩き始めた。

ガンガンという不快な音が響く。


「命令? 誰が誰に?」


私は片手をすっと上げた。

それだけで、毛玉ちゃんが大きく膨張を始める。

直径三十センチだった体が、一気に一メートル、二メートルと巨大化していく。

その姿は、まるで闇夜を切り取ったかのような威圧感を放っていた。


「ひっ……な、なんだその化け物は!?」


近衛騎士たちが悲鳴を上げて後退る。

しかし、レイド殿下だけは状況が飲み込めず、まだ喚き散らしている。


「脅しのつもりか! そんなもので俺が怯むとでも……! おい、誰か剣を抜け! この化け物を切り刻め!」


騎士たちに命令するが、誰も動かない。

彼らは本能で悟っているのだ。

目の前の「それ」が、剣や魔法でどうにかなる相手ではないことを。


「残念ですが、殿下。あなたの声はもう届きません」


私は宣告した。


「毛玉ちゃん、アレをやっておしまい」

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