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ー【第二節】毛玉の触手と心の翻訳機、明かされる王子のドス黒い本音と地下牢計画

第二節 毛玉の触手と心の翻訳機、明かされる王子のドス黒い本音と地下牢計画


毛玉ちゃんの体から、スルスルと黒い触手のようなものが伸びた。

それは実体を持たない精神干渉の触手だ。

バリアを透過し、土下座しているレイド殿下の頭部にピタリと吸着する。


次の瞬間。


『ザザッ……接続完了……翻訳モード……』


私の脳内に、機械的なノイズと共に、レイド殿下の声が響いてきた。

口は動いていない。これは、彼の「心の声」だ。


「セシリア、頼む! 君が必要なんだ!」


レイド殿下の口から紡がれる言葉と同時に、脳内には全く別の音声が流れる。


『(クソッ! なんで俺がこんなド田舎まで来なきゃならねえんだ! さっさと戻って結界を張れよこのアマ! 衛兵が足りなくて俺の私室まで魔物が入ってきそうなんだよ!)』


「……」


私はティーカップを持つ手がピクリと止まった。


「あの、殿下? 何か今、心の声がダダ漏れなのですが」


「な、何を言っている! 俺は心から君を愛しているんだ! ほら、この通りだ!」


レイド殿下は必死に首を振り、さらに熱弁を振るう。


「君の望みは何でも叶えると言っただろう! 宝石か? ドレスか? それとも俺のキスか? 望むなら王太子の座を賭けてもいい!」


表面上は、愛に狂った男の熱烈なプロポーズ。

しかし、毛玉ちゃんの翻訳機能は残酷なまでに正確だった。


『(とりあえず適当に機嫌をとって連れ戻せばこっちのものだ。一度結界を張らせたら、魔力封じの手錠をかけて地下牢にぶち込んでやる。二度と逃げられないようにな)』


「うわぁ……」


私は思わず声を漏らして一歩後退った。

ドン引きである。

百年の恋も冷めるどころか、極寒の永久凍土になるレベルだ。


翻訳は続く。


『(魔力抽出装置にくべれば、死ぬまでこき使えるだろう。寝る間も惜しんで魔力を絞り出させてやる。そうすれば俺の王位継承権も安泰だ。ああ、あの役立たずのミリアめ、あとで処刑してやる)』


『(こいつの顔を見るのも虫唾が走るが、背に腹は代えられん。使い潰したら捨てればいい。出涸らし女風情が、俺様に頭を下げさせやがって……殺してやる、殺してやる……)』


どす黒い。あまりにもどす黒い。

毛玉ちゃんが喜んで吸い付きそうなほどの、純度の高い悪意と自己愛。


レイド殿下の必死な形相が、今は滑稽なピエロに見えてくる。

彼は自分が賢いつもりでいるのだろうが、その心中は全て筒抜けなのだ。


「セシリア、どうした? なぜ黙っている? 感動して言葉も出ないか?」


バリアにへばりつき、鼻を押し潰して豚のような顔になっている殿下。

その瞳の奥にあるのは、私への愛などではない。

あるのは、便利な道具を取り戻したいという強欲と、思い通りにならないことへの苛立ちだけだ。


「……ええ、感動しましたわ」


私は冷ややかな声で答えた。


「あなたのその、底なしのクズっぷりに」


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