ー【第四節】ゴブリンが王の寝室へ、聖女を追放した王都は欲望と汚職の渦に飲み込まれた
第四節 ゴブリンが王の寝室へ、聖女を追放した王都は欲望と汚職の渦に飲み込まれた
一方、私が去った後の王都は、予想通りの……いや、予想以上の地獄絵図になっているらしい。
村に来る行商人が持ってくる古新聞や、風の噂で聞こえてくる情報は、どれも悲惨なものばかりだ。
まず、私が王都を出た翌日、王宮を覆っていた守護結界が完全に消滅した。
当然だ。あれは私の魔力で維持していたのだから、私が供給を絶てば消えるのは道理である。
結界が消えた王都は、魔物たちにとって格好の餌場となった。
特に、王都には人々の不満や貴族たちの汚職、足の引っ張り合いといったドロドロとした「負の感情」が澱のように溜まっている。
魔物はそういった負のエネルギーに引き寄せられる習性がある。
新聞の見出しはこうだ。
『王都、緊急事態宣言! 魔物の群れが城下町を蹂躙!』
『新聖女ミリア様、オークを見て気絶! 浄化魔法は不発か!?』
『第二王子レイド殿下、ヒステリックに叫び回る! 「セシリアはどこだ!」』
記事によると、ミリアはただ「可愛いだけ」の愛玩聖女で、実用的な魔力はほとんど持っていなかったらしい。
魔物を前にして「きゃあ!」と可愛らしく悲鳴を上げ、泡を吹いて気絶したとか。
役に立たないことこの上ない。
そして極めつけは、昨日の噂話だ。
なんと、王の私室にまでゴブリンが侵入したらしい。
警備兵が足りず、王族のプライベートスペースまで魔物の侵入を許してしまったのだ。
「あらあら、大変ですねぇ」
私はテラスで紅茶を啜りながら、他人事のように呟いた。
新聞記事の中のレイド殿下の肖像画は、以前の自信満々な顔とは程遠い、憔悴しきった表情をしていた。
「自業自得、という言葉を知らないのかしら」
同情心は一ミリも湧かない。
彼らが私にした仕打ちを思えば、これは因果応報だ。
むしろ、私のストレスがなくなって平和に暮らしている今、彼らの不幸は最高のスパイスと言えるかもしれない。
「さて、そろそろお茶のおかわりを……」
そう思って立ち上がろうとした時だった。




