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赤字領地を押し付けられた無能文官、数字と仕組みだけで静かに成り上がる  作者: 蒼野湊


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第71話 結果論の責任

 議会は、珍しく熱を帯びていた。


「王国の技術が国外で成功した」

「なぜ我々は見抜けなかった」


 問いは単純だ。

 だが、答えは複雑だ。


「当時の基準では合理的判断でした」


 レインは、静かに繰り返す。


「回収期間は長期」

「短期効果は限定的」

「優先順位は低い」


「だが、成功した」

 反対派の議員が言う。


「国外でだ」


「それは結果論です」


 空気が割れる。


 結果論。


 便利な言葉だ。

 だが、冷たい。


 午後。

 制度局に戻ると、若手官僚が口々に言う。


「基準は間違っていない」

「全件通すわけにはいかない」

「成功例だけ見て騒ぐのは不公平だ」


 どれも正しい。


 俺は、再び却下通知を見る。


 文面は整っている。

 説明も丁寧だ。


 だが、そこにないものがある。


「……挑戦の余地」

 若い事務官が、ぽつりと呟く。


 レインは振り向く。


「余地はあった」

「だが優先順位が低かった」


「低いという判断が、

 挑戦を止めた」


 沈黙。


 夜。

 レインが執務室を訪れる。


「私は、間違えたのですか」


 初めての問いだった。


「間違えていない」

 俺は即答する。


「では、なぜ騒がれる」


「正しさは、常に納得を生むわけではない」


 彼は、机に手を置く。


「挑戦を守ることも、国家の責任でしょうか」


「そう思うか」


 問い返す。


 彼は答えない。


 沈黙が長い。


「……基準は、挑戦を評価しない」

「安定を評価する」


「そうだ」


「では、挑戦はどこで守るのですか」


 それは、初めて出た本質的な問いだった。


 俺は、帳簿を閉じる。


「基準の外に、止まれる場所を作るしかない」


「止まる?」


「基準だけで決めない時間を持つことだ」


 レインは、視線を落とす。


「速度は落ちます」


「そうだな」


「支持も落ちます」


「だろう」


 彼は、静かに息を吐いた。


「……それでも、やる価値があると?」


「君が決めろ」


 助言はしない。


 正解も言わない。


 夜更け。


 帳簿の数字は、まだ美しい。


 だが、

 一つの問いが残っている。


 成り上がりは、

 間違いを避け続けることではない。


 **正しい判断が何を切るのかを、

 受け止めることだ。**


 そして今。


 結果論という言葉の裏で、

 責任が、静かに姿を持ち始めていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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