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赤字領地を押し付けられた無能文官、数字と仕組みだけで静かに成り上がる  作者: 蒼野湊


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第63話 速さの正義

 翌日、制度局の廊下は妙に静かだった。


 声が消えたわけではない。

 ただ、抑えられている。


 閉じた窓の影響は、思ったより早く出た。


「……若手の勉強会、参加者が減っています」

 若い事務官が報告する。


「公開資料が減ったことで、外部研究者も距離を置き始めました」


「当然だな」

 俺は淡々と答える。


 希望は、広がる時に集まる。

 絞れば、離れる。


 午後。

 レインが、正式な提案書を持って現れた。


「一部部署での高速適用モデルを試したい」


 机に置かれた資料は、よく練られている。


 対象は小規模。

 影響範囲は限定。

 検証期間は短期。


「質問欄は?」

 俺は聞く。


「簡略化します」


「簡略化?」


「全てを開くと、判断が遅れる」

「現場の迷いが増える」


 彼はまっすぐこちらを見る。


「速度もまた、正義です」


 会議室の空気が変わる。


 反発はない。

 むしろ、期待が混じる。


 閉じた窓の後だからこそ、

 開く提案は魅力的だ。


「短期成果は?」

 別の官僚が尋ねる。


「三か月で数値改善を示せます」


「失敗した場合は?」


「責任は私が持ちます」


 若いが、覚悟はある。


 夜。

 執務室で二人きりになる。


「あなたは、遅すぎます」

 レインが、静かに言った。


 挑発ではない。

 本心だ。


「遅いと、何が起きる?」


「機会を失う」

「北方は、もう三段階先に進んでいる」


「その先で、止まれなければ?」


「止まらなければならない時に考えればいい」


 俺は、少しだけ目を細める。


「止まれない構造になってからでは、遅い」


「構造は、作るものです」

「あなたは、構造を恐れすぎている」


 静かな衝突。


 若さの直線。

 経験の曲線。


「実験は認める」

 俺は言った。


「だが、質問欄は残せ」


「形式だけでも?」


「形式でもいい」


 レインは、わずかに笑った。


「妥協ですね」


「違う」


「保険だ」


 彼は頷き、資料を抱えて去った。


 廊下の足音が、やけに軽い。


 若手官僚の視線が、彼に集まる。


 希望は、再び動き始めている。


 夜更け。

 帳簿を閉じながら、思う。


 成り上がりは、

 常に前に進む物語ではない。


 **前に進みたい者と、

 止まれる場所を作る者の、

 せめぎ合いだ。**


 レインは、進む。


 俺は、残す。


 どちらが正しいかは、

 まだ、誰にも分からない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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