第52話 外からの数字
それは、
報告というより
照会だった。
王国外務局より
他国使節団の視察希望について
情報共有を求む
内容は、
簡潔だ。
改革の詳細。
運用実績。
公開範囲。
「……視察、ですか」
若い事務官が、
少し驚いた声を出す。
「ええ」
俺は、頷く。
「国内の話じゃ
なくなった」
外から見れば、
事情は違う。
成功か、失敗か。
正しいか、危険か。
それより――
“使えるか”どうかだ。
午後。
外務局との簡易打ち合わせ。
「先方は、
数字そのものより
運用思想に
興味を示しています」
「思想?」
「はい。
“公開するが、
結論を誘導しない”
点に」
それは、
褒め言葉ではない。
警戒だ。
「……危険な手法だと
見られている、
ということですね」
「ええ」
担当官は、
曖昧に笑う。
「統治の道具としては、
鋭すぎると」
夜。
俺は、
帳簿を閉じた。
国内では、
まだ調整段階だ。
だが、
外から見れば――
もう“完成品”に見える。
それが、
一番危ない。
翌日。
視察予定表が、
回ってくる。
複数国。
目的は、
似ている。
「……どこも、
数字を欲しがっていますね」
「違う」
俺は、首を振る。
「数字を、
どう使えばいいかを
見に来ている」
数字は、
武器になる。
制度を壊すことも、
人を黙らせることもできる。
だからこそ――
輸出されると、
制御できない。
成り上がりは、
国内で評価されることじゃない。
自分のやり方が、
他人の手に渡る瞬間を
想像できるかどうかだ。
そして今。
王国の改革は、
静かに――
国境に、
触れ始めていた。
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