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赤字領地を押し付けられた無能文官、数字と仕組みだけで静かに成り上がる  作者: 蒼野湊


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第51話 残った数字

 改革は、

 止まらなかった。


 正式な中止も、

 撤回もない。


 だが、

 会議の空気は

 確実に変わっていた。


「……では、

 今後の進行について」


 評議官の声は、

 以前より慎重だ。


「影響範囲の確認を

 優先する」


「数値の更新頻度を

 見直す」


 言葉は柔らかい。

 だが、

 速度が落ちている。


 模倣者は、

 異議を唱えなかった。


 数字は、

 まだ崩れていない。


 だが――

 信頼が、

 前ほど前に出なくなった。


 午後。


 非公式な打ち合わせ。


「……当面、

 調整役を分けたい」


 それは、

 降格でも、

 処分でもない。


 だが、

 単独で任されていた役割が、

 分割される。


 模倣者は、

 短く頷いた。


「分かりました」


 その声には、

 悔しさより、

 安堵が混じっていた。


 夜。


 俺のもとに、

 簡素な通知が届く。


外部影響検証のため

数値横断確認を依頼する


 新しい肩書きはない。

 権限も増えない。


 ただ、

 見る場所が変わる。


 俺は、

 帳簿を開いた。


 補助金。

 融資。

 保険。

 医療。


 改革の“外”にあった数字が、

 今は、

 一つの列に並んでいる。


 それだけで、

 空気が違う。


 翌日。


 模倣者が、

 静かに声をかけてきた。


「……あなたなら、

 どうしていましたか?」


 問いは、

 責めではない。


 助言でもない。


 ただの、

 確認だ。


「同じです」


 俺は、

 即答した。


「ただ――

 続ける理由を

 数字で言えるところまで、

 遅くします」


 彼は、

 小さく息を吐いた。


「……それが、

 難しかった」


「ええ」


 だから、

 ここまで来た。


 誰かが悪いわけじゃない。


 数字は、

 残る。


 だが、

 扱い方は、

 変わる。


 成り上がりは、

 肩書きを得ることじゃない。


 判断が集まる場所に、

 自然と立っていることだ。


 そして今。


 王都の改革は、

 形を変えて続いている。


 だが――

 どの数字を見るべきか

 その問いだけは、

 俺の前に、

 残っていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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