第50話 言えない理由
会議室は、
いつもより静かだった。
資料は揃っている。
数字も、
まだ崩れていない。
「……では、
これらの影響について」
評議官が、
穏やかに促す。
「改革との関連性を
どう説明されますか?」
模倣者は、
すぐに答えなかった。
考えている。
逃げているわけではない。
それが、
余計に分かってしまう。
「……完全に、
切り離すことは
難しいです」
初めて、
曖昧な答えが出る。
「因果関係は?」
「現時点では、
断定できません」
誰も、
責めない。
だが――
誰も、
安心できない。
午後。
追加資料が、
求められる。
「説明可能な範囲で、
整理を」
「次回までに、
補足を」
模倣者は、
頷く。
誠実だ。
だからこそ、
苦しい。
夜。
彼は、
一人で資料を見直していた。
削減率。
達成数。
だが、
第三者の数字が
頭から離れない。
融資遅延。
保険利用。
医療相談。
「……説明が、
つかない」
呟きは、
誰にも聞かれない。
俺は、
少し離れた席で、
黙っていた。
今、
言うことはない。
言えば、
彼の失敗になる。
だが、
説明できない状態で
続けることも、
また失敗だ。
翌日。
模倣者は、
こう報告した。
「現時点では、
改革を継続しつつ
影響を観察する
という判断になります」
継続。
だが、
理由は言えない。
誰も、
反対しなかった。
だが――
誰も、
賛成もしなかった。
空気が、
決まる。
止めないが、
信じもしない。
成り上がりは、
相手を詰めることじゃない。
相手が、
自分で立ち止まる
場所を残すことだ。
そして今。
王都の改革は、
まだ続いている。
だが――
誰も、
その理由を
言葉にできなくなっていた。
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