第46話 説明できない成功
最初に崩れたのは、
数字ではなかった。
説明だった。
「……今期の成果は、
引き続き良好です」
模倣者の報告は、
いつも通り整っている。
削減率。
進捗。
達成数。
どれも、
前期とほぼ同じ。
だが――
空気が違う。
「……質問ですが」
評議会の一人が、
慎重に口を開く。
「この成果、
どの要因が
一番効いているのですか?」
沈黙。
模倣者は、
一拍置いて答えた。
「総合的な改善です」
間違ってはいない。
だが――
何も言っていない。
「具体的には?」
「制度理解の浸透です」
「それは、
どの数字で?」
また、沈黙。
模倣者は、
資料をめくる。
「……定性的な評価になります」
その言葉が出た瞬間、
空気がわずかに張りつめた。
定性評価は、
逃げ道だ。
午後。
別の報告。
一部地域において
想定外の停滞を確認
ただし全体数値への影響は軽微
“軽微”。
便利な言葉だ。
だが、
理由が書かれていない。
「……ここ、
何が起きている?」
若い事務官が、
首を傾げる。
「説明が……
ないですね」
数字は、
出ている。
だが、
因果が消えている。
夕方。
模倣者の追加説明。
「現場の理解が、
まだ十分でない」
「時間が解決します」
その言葉に、
反論は出ない。
だが、
納得もされていない。
夜。
俺は、
帳簿を開いた。
模倣者の数字。
その裏の細分データ。
同じ成果でも、
分布が歪んでいる。
成果は、
一部に集中している。
それ以外は、
沈黙している。
成功は、
全体で起きているように見える。
だが――
説明できない成功は、
再現できない。
成り上がりは、
結果を並べることじゃない。
同じ結果を、
もう一度出せる理由を
持っているかどうかだ。
そして今。
王都の改革は、
まだ成功している。
だが――
その成功は、
誰にも説明できなくなり始めていた。
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