第41話 正しいやり方
王都で、新しい名前が広まり始めた。
「……最近、
あの人の話、聞きません?」
若い官僚が、
軽い調子で言う。
「数字改革の――
新しいやり方を
やっている人です」
資料が、机に置かれる。
整った表。
見やすいグラフ。
簡潔な結論。
「……成果、
出ていますね」
誰かが、
感心したように呟く。
支出削減率。
事業効率。
短期的な改善。
どれも、
見覚えのある数字だった。
「前より、
分かりやすいな」
「説明も、
上手い」
「公開もしているし、
透明性も高い」
比較される。
無言のまま、
俺と。
昼。
執務室に、
簡易報告が届く。
新任調整官による
制度運用改善
初期成果良好
署名欄にある名前を、
俺は、
一度だけ見た。
知らない名ではない。
だが、
深く関わったこともない。
「……真似されましたね」
若い事務官が、
冗談めかして言う。
「真似、というより――」
俺は、
言葉を探す。
「正解として、
広まった」
それは、
悪いことじゃない。
むしろ、
望んだ形だ。
だが。
「……どう思いますか?」
「今は、
何も」
数字は、
正しい。
結果も、
出ている。
口を出す理由は、
ない。
午後。
評議会の一部で、
こんな声が上がる。
「君のやり方より、
洗練されているな」
「君は、
少し慎重すぎた」
直接言われたわけじゃない。
だが、
聞こえてくる。
それでいい。
正しさが、
広まるなら。
夜。
帳簿を閉じながら、
俺は、
一つだけ確認した。
公開された数字。
削減率。
達成速度。
比較表。
――猶予期間。
その項目が、
どこにも見当たらない。
見落としか。
それとも――
最初から、
載せていないのか。
だが、
まだ言わない。
今は、
成功している。
少なくとも、
数字の上では。
成り上がりは、
自分のやり方が
消えることじゃない。
自分のやり方が、
別の形で使われ始めることだ。
そして今。
王都は、
新しい“正しさ”を
手に入れたつもりでいた。
それが――
どんな前提の上に
立っているのかも、
知らないまま。
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