第39話 名前の書かれない責任
責任は、
誰かの肩に
落ちなかった。
それが、
王都の結論だった。
「……本件については、
制度上の課題と認識する」
評議会の議事録は、
淡々とそうまとめられる。
誰の名前も、
書かれていない。
誰も、
処分されない。
だが。
同じ立場に戻れた者も、
一人としていなかった。
特例を管理してきた部署は、
権限を分割された。
長年、
前例を盾に判断してきた席は、
「期限付き」の役割に変わる。
制度は、
責任を問わない代わりに、
自由を削る。
それが、
王都なりの答えだった。
午後。
ヴァルドが、
正式に呼び出される。
「……君の進言は、
部分的に採用される」
評議会代表の声は、
淡々としている。
「全面ではありません」
「承知しています」
俺は、即答した。
全面改革は、
現実的ではない。
だが――
戻らない。
「君には、
引き続き――」
言葉が、
一瞬止まる。
「独立した監査的立場を
担ってもらいたい」
昇進でも、
栄転でもない。
だが、
誰の部下でもない。
役割の説明を聞きながら、
俺は思う。
(……逃がさない、ということか)
だが同時に――
触れさせ続ける
という意味でもあった。
夜。
ヴァルドが、
静かに言った。
「君は、
誰も罰さなかった」
「罰すれば、
戻ります」
俺は、答える。
「人も、
制度も」
彼は、
小さく息を吐いた。
「……我々は、
正しいと思っていた」
「正しかったと思います」
俺は、否定しない。
「ただ、
重なりすぎただけです」
沈黙。
「君は、
これからも
嫌われるぞ」
「でしょうね」
それでいい。
評価される位置に立てば、
役に立たなくなる。
嫌われるくらいが、
ちょうどいい。
翌日。
王都の掲示に、
新しい文書が貼られた。
補助金制度運用指針
改訂(試行)
“改訂”でも、
“改革”でもない。
だが、
元には戻らない言葉だ。
成り上がりは、
誰かを蹴落とすことじゃない。
名前を書かれない責任を、
引き受けることだ。
そして今。
王国は、
静かに――
次の形へ
歩き始めていた。
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