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赤字領地を押し付けられた無能文官、数字と仕組みだけで静かに成り上がる  作者: 蒼野湊


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第34話 正しい手続き

 異変は、

 静かに始まった。


「……確認ですが」


 法務局の担当官が、

 淡々と書類をめくる。


「この修正案、

 “制度変更”に該当しませんか?」


「いいえ」


 俺は、即答した。


「既存制度の範囲内での

 運用見直しです」


「ですが」


 担当官は、

 一文を指でなぞる。


「“自動解除条件”の明文化は、

 新解釈と見なされる可能性があります」


 その言い方は、

 否定ではなかった。


 止められる余地がある

という示唆だ。


 同じ日。


 別の部署から、

 似たような連絡が入る。


「予算委員会として、

 再確認を求めたい」


「前例がないため、

 慎重な精査が必要です」


 どれも、正しい。


 手続きとして、

 間違っていない。


 だが――

 一斉に来た。


 若い事務官が、

 声を潜めて言う。


「……偶然、ですか?」


「偶然じゃない」


 俺は、書類を積み上げた。


「本気だ」


 誰かが、

 この流れを止めに来ている。


 だが、

 やり方は実に王都らしい。


 否定しない。

 攻撃しない。


 ただ、

 進めさせない。


「……どうしますか?」


「進める」


 俺は、即答した。


「ただし、

 正面突破はしない」


 午後。


 修正案を、

 さらに細かく分解する。


 制度解釈。

 運用指針。

 既存文言との照合。


「……全部、

 制度内ですね」


「そうだ」


 俺は、頷く。


「だから、

 “止められない”」


 止められない代わりに、

 遅らせる。


 それが、

 相手の狙いだ。


 夕方。


 ヴァルドが、

 静かに言った。


「君は、

 嫌われ始めている」


「承知しています」


「ここから先は、

 数字だけでは足りない」


 忠告だ。


 だが、

 俺は首を振った。


「足りないのは、

 数字じゃありません」


「時間です」


 既得権益は、

 急な変化を嫌う。


 なら。


 こちらも、

 急がなければいい。


 夜。


 修正案の末尾に、

 一文を加える。


本運用は、

次期会計年度より段階的に実施する


 即効性は、落ちる。

 だが――

 止められなくなる。


 若い事務官が、

 驚いた顔をする。


「……引くんですか?」


「違う」


 俺は、淡々と言った。


「逃げ道を、

 制度の外に出しただけだ」


 正しさで殴れば、

 抵抗される。


 だが、

 正しさを“待たせれば”、

 相手は疲れる。


 成り上がりは、

 一気に駆け上がることじゃない。


 止められない速さで、

 歩き続けることだ。


 そして今。


 王都の歯車は、

 音を立てずに、

 しかし確実に――

 次の段階へ回り始めていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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