第21話 条件付きで
評価が変わると、
扱いも変わる。
だがそれは、
必ずしも良い方向とは限らない。
「正式に、話をしたい」
王都監査局の官僚は、
そう前置きしてから言った。
「アルディス卿。
あなたを――
巡察役兼、改革顧問として任命したい」
言葉だけ聞けば、昇進だ。
だが。
「条件があります」
そう言って、書類が差し出された。
俺は、黙って目を通す。
「担当領地は、王都が指定する」
「成果評価は、王都基準」
「失敗時は、個人責任とする」
……なるほど。
自由は、ない。
「これは、命令ですか?」
俺が聞くと、官僚は首を振った。
「要請です」
「断れば?」
「今後、同様の依頼はありません」
穏やかな声。
だが、意味は重い。
――使えるかどうか、
今ここで決めろ、ということだ。
「一つ、確認したい」
俺は、顔を上げた。
「この役割は、
“成功例を増やしたい”のですか?」
「……」
「それとも――
“例外を管理したい”のですか?」
一瞬、沈黙。
官僚は、はっきりとは答えなかった。
「王都としては、
秩序が最優先です」
つまり。
俺は、
便利だが、危うい存在になった。
「分かりました」
俺は、書類を閉じた。
「条件付きで、引き受けます」
官僚の眉が、わずかに動く。
「条件、とは?」
「現地の判断に、口を出さないこと」
「数字の公開を、止めないこと」
「失敗を、隠さないこと」
官僚たちは、顔を見合わせた。
簡単な条件じゃない。
「……承知しました」
だが、拒否はしなかった。
それだけ、俺の数字が効いている。
会議が終わり、
廊下に出たところで、若い役人が言った。
「おめでとうございます……で、いいんですよね?」
「どうだろうな」
俺は、少しだけ考えた。
「これは、昇進じゃない」
「え?」
「試験の延長だ」
失敗すれば、
“やはり例外だった”で終わる。
成功しても、
次はもっと厄介な場所に回される。
だが。
断る理由も、なかった。
数字が通じるなら、
場所がどこであっても、
やることは同じだ。
王都の外。
次の赴任先として示された地図を見る。
印は、
王国のさらに端。
「……随分、分かりやすいな」
条件最悪。
注目度は低い。
成功しても、
手柄になりにくい場所だ。
俺は、地図を畳んだ。
成り上がりは、
選ばれることじゃない。
選ばされ続けることだ。
そして今。
俺は、
その舞台に、正式に立たされた。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




