第18話 失敗だと判断された日
結論は、王都から一方的に届いた。
「――本件については、
再現性なしとして処理する」
監査局の会議室。
淡々と読み上げられた判断は、冷たかった。
「現地の混乱は限定的ではあるものの、
明確な改善と呼べる数値には至っていない」
資料が、机に置かれる。
「よって、本件は――
“一時的措置による偶然の安定”
と結論付ける」
若い役人が、思わず声を上げかけた。
「ですが……!」
「以上だ」
遮られ、会議は終わった。
俺は、何も言わなかった。
反論もしない。
説明もしない。
数字は、
まだ途中だからだ。
会議室を出た後、
若い役人が、焦ったように言う。
「若様……
これでは、失敗扱いです」
「そうだな」
「よろしいのですか?」
「構わない」
俺は、即答した。
「評価は、後からついてくる」
王都の判断は、早すぎた。
だが、それは――
官僚としては、正しい判断でもある。
短期間で、劇的な成果を出せない改革は、
失敗と扱われやすい。
だからこそ。
「今は、
“失敗であるべき”だ」
若い役人は、言葉を失った。
現地に戻ると、
空気が、微妙に変わっていた。
「……失敗らしいぞ」
「やっぱり、王都の判断は厳しいな」
だが。
誰も、仕事を止めていない。
支出は、引き続き整理され、
現場は、淡々と回っている。
帳簿は、嘘をつかない。
夜。
俺は、一人で月次集計を進めていた。
数字が、少しずつ揃う。
「……来たな」
支出削減。
取引正常化。
遅れて反映される効果。
まだ、王都は知らない。
失敗と判断したその裏で、
本当の結果が、ちょうど揃い始めていることを。
若い役人が、静かに尋ねる。
「……明日、どうなりますか」
俺は、帳簿を閉じた。
「明日じゃない」
一拍置く。
「次の集計日だ」
評価は、
言葉で覆すものじゃない。
数字で、
上書きするものだ。
王都が下した結論は、
もうすぐ――
数字そのものに否定される。
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