第15話 止めた結果
支出凍結から、三日。
表面上は、何も起きていない。
だが――
水面下では、確実に歪みが溜まっていた。
「……若様」
若い役人が、声を潜めて言う。
「城下で、噂が立っています」
「内容は?」
「“王都の助言者が、領地を潰しに来た”と」
想定内だ。
止めれば、必ず反発が出る。
特に――
止められて困る者ほど、声が大きい。
昼過ぎ。
役所の前に、人だかりができた。
「説明しろ!」
「支払いが止まってるぞ!」
先頭に立っているのは、
年配の役人――
第13話で、最も不機嫌だった男だ。
「このままでは、業者が逃げる!」
「責任を取れるのか!」
周囲の役人も、黙っていない。
「現場を知らない改革だ」
「机上の空論だ」
視線が、一斉に俺へ向く。
俺は、前に出た。
「支払いが止まっているのは、
“理由が説明できない金”だけだ」
「そんなもの、
いちいち説明していられるか!」
「なら、止まっていい」
ざわめきが、一気に怒号へ変わる。
「横暴だ!」
「王都の人間は、いつもそうだ!」
若い役人が、青ざめる。
「若様……このままでは……」
「分かってる」
この空気は、
失敗寸前だ。
だが。
「一つだけ、確認しよう」
俺は、声を張った。
「止めた支出で、
今、具体的に何が困っている?」
一瞬、静まる。
「……」
「仕事が遅れている?」
「物資が足りない?」
「住民に被害が出ている?」
誰も、答えない。
年配の役人が、歯噛みする。
「……時間の問題だ」
「そうだな」
俺は、うなずいた。
「本当に必要な金なら、だが」
空気が、さらに悪くなる。
その夜。
王都の監査官から、連絡が入った。
「……報告は、聞いています」
声は、硬い。
「現地の反発が、強すぎる」
「ええ」
「このままでは、
“再現性なし”と判断されかねません」
つまり。
ここで折れれば、失敗。
「承知しています」
俺は、短く答えた。
「明日まで、様子を見てください」
「……明日?」
「数字が、動きます」
通話が切れた。
若い役人が、震える声で言う。
「本当に……動くんですか?」
俺は、帳簿を閉じた。
「もう、動いてる」
ただ――
まだ、誰も見ていないだけだ。
止めた金。
止められた流れ。
そこから溢れた“余白”が、
何を生むか。
明日になれば、
否応なく、数字が答えを出す。
失敗か。
成功か。
分かれ目は、
もう目の前だった。
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