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赤字領地を押し付けられた無能文官、数字と仕組みだけで静かに成り上がる  作者: 蒼野湊


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エピローグ その先にあるもの

 静かな朝だった。


 特別なことは、何もない。


 街はいつも通りに動き、

 人はいつも通りに歩き、

 仕事はいつも通りに始まる。


 何も変わっていないように見える。


 それが、一番の変化だった。


 王国の執務室。


 若手官僚は、一枚の紙を前にしていた。


 白い紙。


 まだ、何も書かれていない。


 だが。


 ペンを持つ手は、止まらない。


 少しだけ考える。


 迷う。


 そして。


 書く。


> 案件番号:A-1732

> 判断:保留

> 理由:迷いあり


 それを書いた瞬間、

 わずかに息を吐いた。


 誰かに言われたわけではない。


 ルールがあるわけでもない。


 ただ。


 そう書くべきだと思った。


 それだけだった。


「……それでいい」


 背後から、声がする。


 振り返ると、

 主人公が立っていた。


 いつも通りの表情。


 何も変わらない。


「迷ったままで、いいんですか」


 若手は、少しだけ躊躇いながら聞く。


 主人公は、少しだけ考える。


 そして。


「迷わない方が危ない」


 短い言葉。


 だが。


 それで十分だった。


 若手は、紙を見る。


 そこに書かれた文字。


 整っていない。


 曖昧な理由。


 だが。


 それは確かに、

 “誰かの判断”だった。


 窓の外では、

 人々が動いている。


 止まらない。


 どの国も。


 どの仕組みも。


 完全ではない。


 それでも。


 続いていく。


 レインは、別の書類に目を通している。


 ルカは、現場の報告を受けている。


 誰も、立ち止まらない。


 止まれないのではない。


 止まらない。


 その中で。


 ただ一つ。


 変わったものがある。


 紙の上に残るもの。


 名前。


 理由。


 迷い。


 それだけだ。


 遠くの国では、

 今日も処理が続いている。


 修正不要。


 その言葉とともに。


 何かが消え。


 何かが残る。


 だが。


 ここでは。


 消えないものがある。


 完全ではない。


 効率も落ちる。


 迷いも増える。


 それでも。


 残る。


 主人公は、窓の外を見る。


 静かな街。


 変わらない空。


 そして。


 ゆっくりと、呟く。


「それでもいい」


 誰に向けた言葉でもない。


 答えでもない。


 ただ。


 選び続けるための、

 言葉だった。


 成り上がりは、

 何かを手に入れる物語ではない。


 何かを失いながら、

 それでも選び続ける物語だ。


 その先に。


 何があるのかは。


 まだ、誰も知らない。

ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。


この物語には明確な正解はありません。

ただ、「選ぶこと」と「迷うこと」に意味があると信じて描きました。


もしこの物語が少しでも心に残ったなら、

ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


またどこかでお会いできる日を楽しみにしています。

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