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赤字領地を押し付けられた無能文官、数字と仕組みだけで静かに成り上がる  作者: 煤原ノクト


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11/24

第11話 呼ばれる理由

 王都からの使者が来たのは、

 城下の朝がようやく賑わいを取り戻し始めた頃だった。


「王国監査局より、正式な招集命令です」


 堅苦しい口調。

 封蝋は本物。


 老執事が、慎重に言う。


「若様……これは、栄誉とも、試練とも取れます」


「どちらでもいい」


 俺は、書状を一読して畳んだ。


 内容は簡潔だ。


財政改善事例についての聴取

王都にて、直接説明されたし


「視察じゃない。

 確認だな」


 成功を祝うためじゃない。

 本当に再現性があるのか――

 それを測りに来ている。


「留守中のことは、いつも通りでいい」


「よろしいのですか?

 今は、若様が――」


「仕組みは置いた」


 俺は、静かに言った。


「俺がいなくて回らないなら、

 それは改革じゃない」


 老執事は、一瞬だけ目を伏せ、

 深くうなずいた。


「……かしこまりました」


 翌日。


 久しぶりの王都は、

 変わらず騒がしかった。


 高い建物。

 忙しなく行き交う人々。


 そして――

 こちらを見る視線。


「……あれが、例の文官か」

「赤字領地を黒字にしたらしい」


 噂は、確実に広がっている。


 案内されたのは、

 監査局の中でも奥まった会議室だった。


「アルディス卿」


 声をかけてきたのは、

 見覚えのない中年の官僚。


「本日は、お時間をいただき感謝します」


「こちらこそ」


 形式的な挨拶の後、

 すぐに本題に入った。


「率直に伺います」


 官僚は、資料をめくりながら言う。


「貴領の改善は――

 偶然ですか?

 それとも、再現可能ですか?」


 空気が、張りつめる。


 俺は、少し考えてから答えた。


「偶然なら、

 もう赤字に戻っています」


「……ほう」


「再現性はあります。

 ただし――」


 官僚の視線が、鋭くなる。


「誰にでも、は無理です」


 一瞬、沈黙。


「それは、才能が必要だと?」


「違います」


 俺は、首を振った。


「権限と覚悟です」


 都合の悪い数字を見ない勇気。

 嫌われ役を引き受ける覚悟。


 それがなければ、

 同じことをしても、途中で折れる。


 官僚は、静かに息を吐いた。


「……なるほど」


 彼は、資料を閉じた。


「では、次の質問です」


 そう言って、

 新しい書類を差し出す。


「もし、条件がさらに悪い領地でも――

 同じことができますか?」


 俺は、その紙を見下ろした。


 数字は、ひどい。

 構造も、歪んでいる。


 だが。


「できます」


 即答だった。


 官僚の目が、わずかに見開かれる。


「ただし」


 俺は、続ける。


「やり方は、変えます」


 その言葉に、

 会議室の空気が変わった。


 どうやら。


 これは、ただの聴取じゃない。


(……試されているな)


 王都は、

 俺を“成功例”として終わらせるか、

 “道具”として使うか。


 その分かれ目に、

 今、立っている。


 俺は、静かに背筋を伸ばした。


 成り上がりは、ここからが本番だ。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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