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辺境貴族の僕は、古代知識で領地と幼馴染の未来を切り拓く  作者: 悠々


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第 3 話:秘密の実験

アルノとバルツの秘密の実験が始まった。

場所は、城の裏手にある打ち捨てられた小さな畑。

かつては薬草などが育てられていたが、今は雑草が生い茂るばかりだ。

父である領主にはまだ話していない。まずは、確かな結果を出す必要があった。

「アルノ様。まずは何から始めましょうか」

バルツは腕まくりをしながら尋ねる。

アルノは羊皮紙の束を広げた。

風で飛ばされないよう石で四隅を押さえる。

「古代の記述によれば土を豊かにするには三つの要素が必要らしい。石灰石の粉末と骨炭そして特定の植物を燃やした灰だ」


二人の材料集めが始まった。それは、困難を極めた。

バルツは元騎士の経験と知識を活かし領内を奔走した。

古い地図を頼りに領地の外れにある石灰石が採れる岩場を見つけ出し、荷馬車で何度も往復して運んだ。

アルノは厨房を預かる料理長に頭を下げ、調理で出た家畜の骨を分けてもらう。

それを城の片隅にある古い窯で何日もかけて焼き、煙にむせながら骨炭を作った。

植物の灰も、書庫の知識を頼りに雑草や枯れ木の中から記述に合いそうなものを探し出し、燃やしてはふるいにかける作業を繰り返した。


だが実験は失敗の連続だった。

羊皮紙に書かれた配合通りに混ぜてみる。

しかし土は痩せたままだった。

配合の比率を変え、手順を変え、何度も試す。

だが結果は変わらない。

ただ黒い粉を混ぜただけの乾いた土がそこにあるだけだった。

「若様。本当にこれで…」

バルツが汗を拭いながら不安を口にしたその時だった。

「アルノ!」

鈴を転がすような明るい声が響いた。

幼馴染のエリアーナだった。

隣領から馬を駆ってきたのだろう。

乗馬服に身を包んだ彼女は、軽やかに馬から降りると二人のもとへ駆け寄った。

「二人でこそこそ何をしているの。土いじり?」

好奇心に満ちた瞳がアルノとバルツ、そして奇妙な色の土を見比べる。


アルノは少し迷った末に彼女に実験のことを話した。

どうせ隠し通せることではない。

何より、彼女に嘘はつきたくなかった。

エリアーナは驚いた顔をしたがすぐに目を輝かせた。

「すごいわ!アルノ。まるで古代の賢者様みたいじゃない!」

彼女は失敗した土の山を見ても少しも馬鹿にしたりしなかった。

「大変そうだけど、もし成功したらこの領地は豊かになるのね。アルノならきっとうまくいくわ。私、応援しているから!」

彼女の純粋な信頼と屈託のない笑顔が、アルノの疲れた心を温める。

そうだ。諦めるわけにはいかない。

この領地のためにも、そして信じてくれる彼女のためにも。

アルノは再び土と向き合った。

その真剣な横顔を、エリアーナが少しだけ頬を赤らめながら眩しそうに見つめていた。

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