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辺境貴族の僕は、古代知識で領地と幼馴染の未来を切り拓く  作者: 悠々


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第 10 話:育まれる愛情

領地の発展はアルノとエリアーナが会う時間を増やした。

二人は共同事業の打ち合わせを名目にそれぞれの領地の代表として頻繁に顔を合わせた。

時にはアルノがラングハイム領を訪れ時にはエリアーナが発展著しいフォンターナ領にやってきた。

ある時は新しいジャムの試食で顔を見合わせて笑いあった。

「こっちのベリーの方が酸味があって美味しいわ」

「なら次は砂糖の量を少し減らしてみようか」

そんな他愛ない会話が二人にとってかけがえのない時間だった。

またある時は夜遅くまで設計図を囲んで議論を交わした。

新しい陶器の窯の構造についてエリアーナが熱効率の観点から鋭い質問をすることもあった。

彼女はただ守られるだけの令嬢ではなくアルノの良きビジネスパートナーとして成長していた。

そして領地の未来や夢について熱く語り合った。


アルノはエリアーナの変わらぬ優しさと信頼に何度も救われた。

新しい技術の開発に没頭して食事を忘れた彼にエリアーナが「また無理をしているでしょう」と呆れ顔で焼きたてのパンと温かいスープを届けてくれることもあった。

その温かさが彼の心と体を癒し張り詰めた緊張を解きほぐしてくれた。

「無理はしないでね、アルノ」

そう言って微笑む彼女の存在が何よりの支えだった。

エリアーナはアルノの聡明さと行動力を誰よりも尊敬していた。

彼の語る未来はいつも輝いていて聞いているだけで自分の心まで明るくなるのを感じていた。

貧しい領地をたった数年でここまで発展させた手腕。

それでいて領民の前では泥にまみれることも厭わない誠実な人柄。

エリアーナは日に日にアルノに惹かれていく自分に気づき戸惑っていた。

これは幼い頃からの親愛の情なのか、それとも。


いつしか二人の間に流れる空気は変わっていた。

それはもう単なる幼馴染の友情ではない。

互いを異性として意識し惹かれ合う確かな愛情だった。

ふとした瞬間に視線が絡みどちらともなく慌てて逸らす。

そんなことが増えていた。

だが互いにその想いを口にすれば今の心地よいビジネスパートナーとしての関係が壊れてしまうかもしれない。

アルノは領地の発展という大きな責任を背負っており個人的な感情を優先するわけにはいかないと考えていた。

エリアーナもまたラングハイム子爵家の令嬢として軽率な行動はできなかった。

二人はそのもどかしい想いを胸に秘めたまままだ言葉にできずにいた。

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