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わたしのスキルはハズレではありませんよ?  作者: みのみさ
第三章 仮婚約者のエミリアナ

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二十三幕

 エミリアナとルイシーナは色違いのお揃いのデイドレスでお茶会に参加した。伯爵位以上で学園に入学する令嬢だけが招かれている。チャベス家から派閥も超えたご招待だ。

 チャベス侯爵令嬢のアナスタシアは一つ年上なのだが、足の骨折で寝込んだ祖母に付き添って話し相手を務めたために今年の入学になったと触れ回っていた。


「それにしては、よくお茶会やら観劇やら美術展やらと忙しく出向いていたそうだけど」

 ルイシーナが扇子の陰でぼそっとこぼして、エミリアナは危うく吹きだしかけた。

「お姉様、それは『言わないお約束』というものでは?

 さすがに『殿下の追っかけをしていた』とか、『教育が間に合わなかった』なんて、言葉にできないでしょう」

「あら、それこそ『言わないお約束』ではないの?」

 二人は顔を見合わせてくすくすと扇子の陰で笑いあった。


「ルイシーナ様にエミリアナ様、ご機嫌よう」

 二人を見かけて声をかけてきたのはブランコ伯爵家のグロリアだ。アナスタシアと同い年の彼女は予定通りの進学ですでに学園に通っている。

「あら、グロリア様。お久しぶりですわね。本日は学園に入学する令嬢を招いたと聞いていたのですけれども・・・」

「ええ、学園入学前の親睦会という名目ですからね。

 わたくしは学園の様子を教えてもらいたいと招かれましたの。他にも数名がお呼ばれした特別ゲストなのですわ」

 グロリアがうふふと含み笑いで周囲に視線を巡らした。確かに幾人か年上の令嬢がいる。ルイシーナがなるほどと頷いた。


「チャベス様の人脈のお披露目も兼ねているようね。高位貴族の方ばかりだわ」

「友人関係、というか、チャベス様のスキルに心酔なさっている方々なのよ」

「チャベス様のスキルは『浄化』ですよね。いつも、チャベス家のお茶会では披露なさっていると聞きましたが?」

 エミリアナが首を傾げると、グロリアが肩をすくめる。

「ええ、ぱあっと光輝いて、見た目がとおっても派手なの。確かに、催し物としては見応えがあるでしょうね。

 でもねえ、弱くても毒にかかってぐったりしている小動物を解毒して見せるのよ。ちょっと、やり方がねえ・・・。

 気弱な方だと動物が可哀想で見ていられないと目を背けているわ。この前は兎だったのだけど、カルメラが飼っているから余計に可哀想になったわ」

「まあ、それはなんとも・・・」

「あまり、趣味がいいとは言えないですね」

 ルイシーナもエミリアナも渋い顔になった。


 エミリアナの夢の知識では愛玩動物だった兎も現世では食糧とみなされて、毛皮も手袋や帽子など小物に利用されている。ペットとして兎を飼えるのは富裕層だけだ。

 ペットをどう扱おうと飼い主の勝手でまだ動物虐待などの概念はないが、わざと毒で弱らせているとか、気持ちがいいものではなかった。

「今日は猫みたいだわ」

 グロリアの視線の先を追うと、小型ゲージの中でぐったりと横たわった黒猫がいた。毛並みもいいし赤い首輪をしていて飼い猫のようだが、チャベス家の家人にはペットを案じる様子はない。


 お茶会が始まってしばらくは挨拶や自己紹介の声がしていた。参加者全員が顔見知りになった頃合いだというのに、アナスタシアは取り巻きの令嬢に囲まれて賑やかに談笑している。

 黒猫は未だ放っておかれたままで目を閉じて、ぴくりともしていない。グロリアが気遣わしげに黒猫に視線を向けているし、他にも気にしている令嬢が何人かいるが、アナスタシアにはまだ浄化する気はなさそうだ。


「お姉様、見ていられないのですけど・・・」

 エミリアナが小声で囁くと、ルイシーナがそっと首を横に振った。

「どうにもできないわ。主催者の意向を無視するわけにはいかないし」

「死んでしまっては意味がないですから、それまでには解毒するはずです。これまでの見せ物で死んでしまった小動物はいないですし。

 ここは彼女がその気になるのを待つしかないですけれど、トルエバ様が静観なさっているうちに治してもらいたいものだわ」


 グロリアがある令嬢に心配そうな視線を向けた。

 銀髪に紫の瞳でクールな色合いだが、垂れ目でおっとりとした雰囲気を醸しだしている令嬢だった。

 学園で唯一の公爵令嬢で政略結婚で隣国の公爵家と縁付くのが決まっている。最終学年に上がるのだが、昨年一年間は婚約者と親交を深めるために隣国へ留学していた。今年は婚約者が我が国へ留学してくるそうで、今の学園の雰囲気を知りたいと参加していた。


「トルエバ家では一人一匹猫を飼っているのですって。皆様、愛猫家のご一家なのよ。

 トルエバ様も白猫を飼っていると聞いたわ」

 公爵令嬢は鷹揚に構えてはいるが、チラチラとゲージへ視線を向けていた。表情にはでていなくても、猫が心配なのだろう。

 会場の中は猫を気にする者とアナスタシアのご機嫌を伺う者とで二分していた。段々と雰囲気が悪くなる中で、侍女に案内された特別ゲストが到着した。

 第三王子のカルロスだ。アナスタシアの周りの令嬢だけが嬉々とした顔で出迎え、その他の者は驚いていた。

「あら、殿下が参加するなんて聞いていないわよ」

「ええ、事前に連絡もなかったですわ」

 ルイシーナとグロリアが不可解そうに顔を見合わせた。


「殿下、来られるかわからないと仰っていたではないですか」

「ああ、予定が変更できたのだが、無理を言ってきたのだからな。時間があまりない。早く、そなたの浄化を見せてくれ」

 カルロスが期待に満ちた目でアナスタシアを促した。どうやら、飛び入り参加のようだ。

「皆様、お待たせいたしました。わたくしの浄化でこの猫を救ってみせますわ!」


 意気揚々と宣言するアナスタシアに猫を案じていた面々は白けた雰囲気だ。見せ物にするために毒を盛っておいて『救う』はないだろう。

 アナスタシアが猫の前で両手を組んで祈るかのように目を閉じると、両手の間からぱあっと光が放たれた。燦々と黒猫に降り注いで、猫の姿が光に包まれる。

 黒猫は一度大きく体を痙攣させた。会場中で見守っていると、猫のヒゲがひくひくと動いた。黒猫は瞬きして目を開けると、頭をぷるぷると振ってから起き上がった。何事もなかったかのように手足の毛並みを舐めて身繕いしている。


「まあ、元気になったようね」

「素晴らしいわ、アナスタシア様。光輝いて、まるで聖戦の聖女様のよう!」

「ええ、なんて綺麗な光なのでしょう」

 アナスタシアの取り巻きたちが褒めそやかして、カルロスもおおっと感動の声をあげている。

「確かに聖戦の物語のようだな! アナスタシア嬢のスキルはとても素晴らしいな」

「まあ、殿下にお褒めいただき光栄ですわ」

 アナスタシアが頬を染めてはにかんでいる。


 エミリアナたちはうわあと死んだ魚の目をしてお互いの顔を見合わせた。内心では最大限に呆れているが、表面には淑女の笑み装備だ。

 聖戦とはダンジョンがスタンピードを起こした場合に教会から発せられる神のお告げだ。

 最初のお告げで『世界を守るために魔獣を殲滅せよ。人類滅亡を防ぐ聖なる戦を起こすのだ』と号令をかけられたから、スタンピードの鎮圧戦は聖戦と呼ばれるようになった。

 スタンピードを放置すると、村や町だけでなく国単位で大量殺戮や破壊が起こる。他国の出来事だと放置した結果、影響を受けて活性化したダンジョンが多発してスタンピードが相次ぎ、大陸の六割が滅んだ記録さえ残っているのだ。

 聖戦には国籍や身分は関係なく、腕の立つ者が召集される。攻撃力だけが重視されるのではなく、癒しや浄化のスキル持ちも重宝されていた。

 スタンピードの要となる大型魔獣を狩った者は英雄扱いで、癒しや浄化で鎮圧に貢献した者は教会から聖人または聖女の称号を贈られて讃えられる。大変名誉なことで称号目当てに参加する貴族や王族もいるくらいだった。


 褒め称えられていたアナスタシアが周囲を見渡してエミリアナと視線が合うと、にやりと笑みを深めた。

「殿下、仮婚約者のセルダ様もお招きいたしましたの。学園では同級生になりますから、親しくなりたいと思いまして。

 セルダ様のスキルはレアスキルと伺っておりますわ。ここで披露してもらってはいかがでしょうか?」

「そうなのか?」

 カルロスは首を傾げている。エミリアナに全く興味がないと丸わかりだ。

 エミリアナはルイシーナと顔を見合わせた。ずっとスキルを隠し通すのは無理だと思っていたが、まさかすでに把握されているとは予想外だった。

「エミリアナ、お断りしましょう。こんな見せ物の扱いなんて・・・」

 ルイシーナが小声で囁いて嫌悪感を示しているが、エミリアナはものすごくいい笑顔だ。

「いえ、いい機会です。殿下が呆れてくれれば、候補を辞退するのが容易になりますから」


 エミリアナがアナスタシアたちの前に進み出た。

「お呼びでしょうか?

 わたくしのスキルは確かに誰も聞いたことがないものですが、チャベス様に比べるととても見劣りします。

 絶対に確実に失望するとわかりますけど、どうしても見たいとおっしゃるのでしょうか?」

「まあ、そんなご謙遜を」

「謙遜ではありません。事実です。

 レアスキルの全てが有能で素晴らしいものだと決まっているわけではありませんから」

「確かめてみなければわかりませんことよ? そう思い込んでおられるだけではないかしら」

「養子になった際に検証は済ませてあります。その上で断言しております。

 面白くもなんともないスキルです。収納の下位互換ではないかと言われています。

 どうしても、是非にも、何がなんでも、と請われるならば、お見せしますが、その結果についてはわたくしは責任を取りませんのでご了承くださいませね?」

「え・・・」

 アナスタシアは頬をひくつかせて困惑した。


 エミリアナはハズレスキルだと情報を得たから、笑いものにしてやろうとしたのに、ここまで念押しされて披露させては明らかに嫌がらせだと思われてしまう。しかも、結果について責任を取らないとか、場が白けても自分には関係ないと言い切っているのだ。

 お茶会の主催者としては場を台無しにするのは好ましくない。諦めるしかないと思ったのだが、意外なところから援護射撃が来た。


「そこまで言われると却って興味を惹かれるな。

 責任は私が取るから、披露してみろ」

 空気を読まない男、カルロスだ。

「・・・左様でございますか、殿下の仰せのままに」

 本当に責任を取るんだろうな、と突っ込みたかったが、エミリアナは淑女の笑みを浮かべて了承した。


 周囲は静かになっていた。エミリアナの隠れ家を披露した結果、誰もがなんとも言えない顔になった。

 最初は立派で頑丈なドアが現れて期待したのに、ドアを開けて見ればただの穴蔵だ。期待した分の反動で失望も大きかったが、誰もが何も言えずに周囲の顔色を伺って様子見している。

 そんな中で、ぶはっと盛大に吹きだしたのは言い出したカルロスだ。


「なんだ、これは! ただの穴じゃないかっ。

 ははははっ、穴蔵が隠れ家って、穴蔵が棲家の野生動物でもあるまいし」

「殿下、そうおっしゃってはお気の毒ですわよ」

 アナスタシアが目には嘲る色を浮かべて、慰めの言葉を口にした。責任を取るのはカルロスなので、エミリアナを庇ったように見せかけつつ貶める気満々である。

 エミリアナはにこりと微笑み返した。


「ええ、だから、言ったではないですか。失望は確実だって。その通りでしたでしょう?

 チャベス様のスキルは本当に素晴らしいものですわ。わざわざ、わたくしのハズレスキルと比較するのも烏滸がましいくらい。

 皆様に素晴らしさを再認識してもらえてよかったですわね。これで聖戦が起こった際には、誰もがチャベス様を討伐隊に推薦してくれますわ。是非とも頑張ってくださいませね、ご活躍を期待しておりますわ」

「な、何を言うの?」

 アナスタシアがぎょっとして叫ぶが、エミリアナは慈悲の笑みを返すだけだ。


「あら、皆様に素晴らしさを周知して聖女様のようだと讃えられて受け入れておられるのですもの。本当に聖女様になるおつもりはおありでしょう?

 聖女様に名を連ねるのはとても名誉なことですもの。まさか、お声がかりを無視なさいませんよね?

 我が領地にもダンジョンがありますから、いざという時には頼りにさせてもらいますわ。

 ねえ、お姉様、とても心強いですよね」

「ええ、そうね。エミリアナの言う通りよ。ダンジョンがある領地では冒険者を頼りにしているけど、スタンピードが起きた場合には冒険者だけでは手が足りないもの。

 貴族内で頼れる相手がいるのはとても心強く、喜ばしいことですわ。

 チャベス様、もしもの場合はよろしくお願いしますわね?」


 ルイシーナは妹の提案に全力で乗った。

 カルロスを押し付けて恩を売ろうと思ったが、向こうがライバル視して嫌がらせしてくるなら協力関係を築くのは無理だ。同格の侯爵家同士で舐められたら不利になる。ここはアナスタシアの高い鼻をへし折っておくべきだろう。

 アナスタシアは顔色を変えてルイシーナに食ってかかった。


「わたくしに冒険者風情と同じ真似をしろと言うの⁉︎ ひどい侮辱だわ!」

「そうだ、令嬢に魔獣の討伐に加われなどと失礼だろう。魔獣相手は冒険者に任せておけばいいではないか。

 どうせ、ならず者の集団でそれくらいの役にしか立たないのだから」

「え?」

「で、殿下?」

「まあ、なんてこと・・・」

 カルロスの発言に狼狽えた令嬢たちは皆領地にダンジョンがある。兵士だけではダンジョン管理は無理で、冒険者に頼っている。冒険者ギルドの重要性をとてもよく理解していた。

 まさか、王籍に残るカルロスが冒険者を『ならず者の集団』と認識して、軽んじているとは思いもしなかった。聖戦発生時は各国の王族も猛者たちに声をかけるものなのに。

 ルイシーナもエミリアナと顔を見合わせて、『こいつ、何言ってるの? バカなの?』と目で会話している。


「あらあらまあまあ、殿下はおかしなことを仰いますのね」

 コロコロと鈴が鳴るような可憐な笑い声がして、皆の視線が集まった。トルエバ公爵令嬢だ。

「我が領地にもダンジョンがありますのよ、それも二つも。

 冒険者の皆様のご活躍でとても助かっていますわ。まさか、殿下はご存じないのかしら?

 冒険者ギルドは世界的に認められた組織ですし、冒険者の方々もならず者ではありませんよ。

 うふふ、学園でダンジョンについて学ぶのは一学年の基礎科目のうちですけれど、殿下はまだ家庭教師の方から教わっていませんの? 

 もうすぐ入学ですのに、遅すぎはしませんこと?」

 高位貴族ほど基礎科目の内容は家庭教師に教わっているはずだった。学園では復習内容となる。稀に近年の発見や新事実を教わるくらいだ。

 公爵令嬢の紫の目は冷ややかで、微笑んでいても静かな怒気が感じられた。


「チャベス様を聖女様と持ち上げて、聖戦の物語のようだと褒めそやかしたのは殿下なのですから、責任をとって殿下は英雄にならないといけませんわ。

 お二人で討伐に成功すれば、本当に物語の英雄と聖女様のようで素晴らしいですわよ、きっと」

「な、何を言うのだ、トルエバ公爵令嬢。私が聖戦に参加できるわけないだろ」

「あら、何故ですの? 聖戦に身分は不用、王族でも参加可能ですわ。

 むしろ、王太子殿下が参加できないのですから、カルロス殿下の出番では?

 殿下はもし万が一にでも我が領地が危機に陥ったら、助けてはくださいませんの?」

 公爵令嬢は一転して悲しそうに目を伏せた。可憐な美少女が弱々しく俯く姿に誰もが庇護欲を湧き立てられる。ここで断っては男が廃るというものだ。

 それでも、カルロスは聖戦に参加表明は出せずに視線をうろうろとさせた。さすがに言質を取られるのはマズいと理解しているのだ。


「と、時と場合によりますわよ!

 その時の状況次第で判断が変わるかもしれませんし、大体、もしもの話ではないですか。皆様、本気にしすぎますわよ」

 アナスタシアがほほほほと高笑いで話を逸らしてくるが、公爵令嬢の矛先は彼女に向かった。

「そうですわね、もしものお話ですし、殿下のお立場はまだはっきりしてませんし。先走ったお話でしたわ。

 でも、チャベス様には聖戦でなくても、ダンジョン攻略には是非とも参加していただきたいですわねえ」

「はあっ?」

 アナスタシアが目を剥くが、公爵令嬢は涼しげな笑みを浮かべている。


「だって、浄化を披露したいならば、汚水を真水に変化させるだけでも十分です。わざと動物に毒を盛るなんて、実戦を想定しているとしか思えませんでしょう。

 わたくしの嫁ぎ先もダンジョンがありますのよ。困った場合には頼りにさせてもらいますわね」

 決定事項として告げられて、アナスタシアは青くなった。周りを見渡しても、取り巻きの令嬢たちは視線を逸らして関わりを避けている。さすがに公爵家に睨まれたくはないのだ。

 カルロスも責任を取るだの偉そうな発言をしたくせに、小さくなって紫の瞳に映らないようにしている。

 どうやら、猫好きのトルエバ公爵令嬢はアナスタシアの振る舞いにお怒りだったようだ。エミリアナのやり返しに便乗して倍返しどころではないダメージを与えていた。

 アナスタシアは誰の助けもない孤立無縁の中で、何故かまたエミリアナをきつく睨んできた。

 お前のせいだ、と言わんばかりの恨めしげな視線に、エミリアナはげんなりとなる。


「エミリアナ、気にしないのよ。トルエバ様の情報を把握していなかったチャベス様の落ち度なんだから」

 ルイシーナが囁いてきて、グロリアもそうだと頷いてくれたが、エミリアナのうんざり感は減るものではない。

 侯爵家の使用人が気を利かせて新たなお茶菓子を差し入れて、お茶も新しく淹れなおした。お茶会は仕切り直しになったものの、盛り上がりに欠けたまま終了した。


 後日、入学前の親睦会が失敗に終わって、アナスタシアは養父から叱責されたと使用人が小耳に挟んできた。チャベス家の使用人の中には庶子のアナスタシアを侮る者がいて、市場などでこそこそと吹聴しているらしい。

 しかも、噂にはおまけがついていた。

 チャベス家はトルエバ家の不興をかい、代わってセルダ家が気に入られたようだ、と。トルエバ家がセルダ家について婚約者候補争いはエミリアナが優勢だと下馬評が流れていた。

 エミリアナは入学前からアナスタシアと敵対関係だと周囲から認知されてしまった。ルイシーナが感じた通り、アナスタシアと協力するのは無理そうだった。

次回はいよいよ学園に通います。

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