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よにん:エイブリー公爵、王国の第二王子

 剣王に物理・魔法防御が掛かったチュニックが提供された。膝上丈ではあるが、動きやすさを重視してランニングスタイル、腰までスリットが入っている。大魔導士には“あのちらっと見えたりするとこがかえってたまらん”とか好評である。


 4人には従者が付いた。

 勇者は王子であるために王宮から影の者がその任に当たることになった。

 剣王、大魔導士、聖女には神殿から剛力ごうりきといわれる者が付いた。剛力は聖職者が従軍するときに従者として従い、身の回りの世話をすると同時に主を護る任を負う。

 もちろん、大魔導士には男性、剣王と聖女には女性の剛力が選ばれた。

 おかげで旅は楽になった。テント張りも食事つくりも全部従者がやってくれるし、リュックのように背負っていたマジックバッグも従者が持ってくれる。


 剣王は、マジックバッグの空きができて、そこにパジャマと毛布を突っ込んだ。それで夜は楽に眠れるようになった。

 戦闘用のチュニックは体の動きを妨げないデザインであるとともに、わずかに伸縮性もある。

 相変わらず大魔導士がセクハラを仕掛けてくるが、そのうち剣の錆にしてやるのでそれはいい。(いいのかー!) まあ、どこか斬り落としたくらいなら聖女が癒してくれることだろう。(マジか?)


 剛力は職務として衣服の管理にも慣れているから、1枚きりだった聖女の紫の聖衣も着替えが追加され、毎日取り換えて快適に過ごせる。着ていない方の聖衣にクリーンを掛けた後、丁寧に香草を挟み込んで爽やかな香りをつけてくれるのだ。さすが従軍慣れした剛力。う~ん、すてき、と聖女の気持ちも爽やかになった。(ちょろい?)


 大魔導士に付いた従者は、ユリウスの配慮で少し年かさの者が選ばれており、上手に機嫌を取っている。

 ちなみに、ユリウスはルーフリエン侯爵領の会計監査を行った。「侯爵さまが憂いなく旅をお続けになります為に」と王宮に強要して、管財人を厳しくチェック。どうせ帰れるかどうかわからないし、とかで、不正てんこ盛りだろうと思って実行したのだが、これが意外、きれいなものだった。大魔導士の機嫌はさらに上昇、おまえデキル神官だな、とお誉めの言葉をいただいた。




「エイブリー公、どうなさいました」

 相談室の扉から、勇者がよろよろと入ってくる。


 勇者はふらりと椅子に座り、ユリウスを見つめた。ユリウスは慈愛の微笑みを返す。


「ユリウス殿」

「はい」

「このようなこと、誠に口にし辛い。勇者たる任にふさわしからぬと」

「どのようなご用でも承ります、どうぞお申し付けください」

「神官殿のおかげで、剣王の憂いも晴れ、大魔導士はご機嫌だ。聖女も毎夜長い時間祈りを捧げている。どうか私の悩みも聞いてくれ」

 ユリウスは、静かに頷いた。


「つまり、つまり……。

 頼む! 妻と娘に会わせてくれ!」

「へ?」

 さすがの相談役もあっけにとられた。


「王宮から影の者が来て、妃からの手紙を受け取った。

 私は、娘の父だそうだな」

「え、はい。ご存じなかったのですか」

「知らなかった」

 公はうなだれている。


 ユリウスは、これは由々しきことだと真剣に考え込んでいる。一体王宮は人を何だと思っているのだ。


 第二王子は、勇者の適性ありとして王宮騎士団を率いて戦略と克己心を磨いてきた。やがて魔王討伐の命が下ると、婚約者と華燭の典に臨み、出発前の1か月余を薔薇園宮と呼ばれる宮で過ごした。きっと無事に帰ると誓い、毎日ご無事をお祈りしますと誓われ、去りがたく行かせ難い別れからすでに1年。

 子を得たことも、無事に出産したことも知らされていないとは。



 ユリウスは毅然として立ち上がった。表情から穏やかさが消え去っている。

 王子は若干引いている。


「エイブリー公、わたくし、ワープが使えません。野営地までお連れ願えますか」

「は? ユリウス殿を野営地に?」

「はい」

「とても神官殿の耐えられる地にはありません」

「何をおっしゃいますか。聖女の神聖域もありますし、わたくしとて聖域程度でしたら何とでもなります。どうぞお連れください」

「ああ、よくわからぬが、ユリウス殿の望みなら」


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