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10 -第ニ部-  作者: ヒツジ
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息抜き

「あれ?ルリ?」


休日の朝。玄関から声がするのでソラが出るとルリがいた。


「なんだその格好は。今何時だと思ってるんだ」


時刻は10時。休日を言い訳に惰眠を貪っていたソラはまだ寝巻きのままだった。


「いや〜。寝る子は育つって言うじゃない」

「それ以上育ってどうするつもりだ。でかけるぞ。すぐ支度してこい」


敬語や様付けがなくなってもルリはルリである。突然やってきて不躾に命令しても、ソラは「は〜い」と素直に応じるだけだった。




「お待たせ」


ささっと用意を済ませてソラが戻ってきた。食堂を営む両親は仕込みで店のほうにいるので、でかけることだけ伝えて家を出る。ルリに両親に会っていくか聞いたが「全て落ち着いてからゆっくり会いたい」と言うので、何も言わずに出てきた。


「で、どこに行くの?というか、何しに来たの?」

「………お前は気分転換する時、どこへ行くんだ?」


質問に質問で返される。ソラは特に気にせず休日の自分の行動を思い出していた。


「そうだなぁ。公園でのんびりしたり、お菓子を買いに行ったり」

「なら、よく行く公園へ連れて行け」


相変わらず命令ばかりのルリに特に嫌な顔もせず、ソラは近くの公園へ連れて行った。




朝の公園に男が2人。ベンチに座っている。1人は難しい顔をして、1人は訳がわからない顔でもう1人の様子を伺っている。


「あの………ルリさん?本当に何しに来たんですか?」

「………アサギのことでちょっと煮詰まっていてな」


アサギの名前にソラが敏感に反応する。聞きたいことは色々あるが、ルリの話を遮りたくなくてグッと堪えた。


「姉上との話し合いもなかなかいい案が出なくてな。悩んでいたら『そんな眉間に皺ばっか寄せていたら解決するものもしない。気分転換でもしてこい』と家を追い出されたんだ」

「シルビア様らしいな」


ソラはプッと笑いが漏れてしまう。ルリの姉のシルビアは豪快な人で、ソラもよく叱咤されたものだった。だがソラは面倒見の良い彼女を慕い、弟のように可愛がってもらっていた。


「せっかくソラと再会できたんだから会いに行ってこいと。アヤへの切符まで渡されたんだ。たぶんずっと渡す機会を伺っていたんだろう」

「優しさと面倒見の良さは健在だな」

「ああ。相変わらず頭が上がらないよ」


そう言いながらルリは嬉しそうだ。


「で、アサギのことってのは俺は相談に乗れないのか?」


ルリが落ち着いて話ができそうになってきたので、ソラはアサギのことに話を戻した。


「そうだな。………なあ、貴族の多くが地上に行ってる間に反乱が起きると言っただろう。それを防ぐにはどうすればいいと思う?」


急に地上の話が出て驚く。公園に人通りが少なくて良かった。でなければ、こんな話できなかっただろう。


「え〜と、地上に行かないようにするとか?」

「そうすると食糧や色々なものが足らなくなって、どちらにしろ反乱が起きる」

「あ〜、じゃあ貴族の数を増やすとか?」

「そんなこと急にできるわけないだろ」

「いや、貴族そのものじゃなくても、貴族の仕事をみんなで分担するとかさ。うちも時々引退した人に手伝ってもらったりしてるぞ」

「地上のことを知る人間は限られるんだ。そんな簡単に……」


言いかけてルリが止まる。どうしたのかとソラが顔を覗き込むと、驚いた表情でアゴに手を当てていた。


「下級貴族か」

「へ?」


ルリは急にソラの肩を両手でバンバン叩きだした。


「そうだ!下級貴族達がいるじゃないか!地上のことを知らない人もいるが、もとは貴族!話がわからないわけじゃない!」

「ルリ!声が大きい!」


いくら人通りが少ないとはいえ、いきなり大声で話し出すルリにソラは慌てる。


「おっと。すまない。だが今のはいい案だ。すぐに帰って姉上と相談しよう。ソラ、助かったぞ。じゃあな!」

「え、あ、ああ。じゃあな」


そのままソラを置いてルリは帰ってしまった。ポツンと取り残されたソラは、どうしていいかわからずベンチから動けずにいる。


「まあ、ルリが元気になったならいいか」




「姉上!いい案が浮かびました!」


ルリは中央の自宅に戻るなり、大声で姉のところへ報告に来た。


「ルリ?もう戻ってきたのか?ソラ君に会いに行ったんじゃなかったのか?」

「はい!ソラのおかげでいい案が浮かんだので、すぐ帰ってきました!」


シルビアは額に手を当てて「ソラ君、可哀想に」と言っている。ルリはそんな姉の言葉も気にせず興奮した様子で捲し立てた。


「下級貴族です!彼らの地位を回復し、貴族が担っている役割を分担するんです。そうすれば地上に大勢が行くことになっても、地下の治安が保てます」


ルリの提案にシルビアが真面目な顔になる。


「なるほど。たしかに彼らなら交渉の余地がある。だが争いに負け地位を奪われた彼らを、権力の中心にいる我々が説得するのだ。一筋縄ではいかないぞ」

「覚悟の上です」


真っ直ぐに自分を見てくるルリに、シルビアも覚悟を決めた。


「いいだろう。すぐに貴族のネットワークに情報を流そう。連絡がつくだけ下級貴族に話をする。ここからは時間との勝負だ」

「はい!」


ルリはシルビアについて部屋をあとにする。その顔はやる気に満ちていた。

「あら。ソラ。お散歩?」

「ヒワさん。カナリさん。はい。公園でのんびりしてました。お2人はパトロールですか?」

「ああ。ソラはどうせこの後いつものお菓子屋に行くんだろ」

「あ。そうですね。寄って帰ろうかな」

「あんまり食べ過ぎちゃダメよ」

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