「メリーさん、警察に捕まったってよ。」 「まじかよ…。オカルト界の面汚しめ。」
とある夏の逢魔が時。
夕日が窓から入り込むアパートの一室。
その中で、横たわっている物を前に、一見可憐に見える一人の少女が黄昏れていました。
そして、その口から零れ落ちる様に、小さく言葉を呟きます。
「えっ、何で死んでるの?。」
少女以外に誰もいない部屋で、そんな声が響きました。
あたし、メリーさん。今少し困ってるの。
私は、ちょっと前までは都市伝説界隈のアイドルとして、日本中を恐怖のどん底に叩き落としてきたのだけど、最近ではそんな簡単にはいかなくなってしまったの。
今では、すっかり恐れられなくなり、落ちぶれてしまった理由は大体分かる。
現代では、オカルトや怪奇現象といった物が、科学によって次々と解明されてしまったからだ。
そもそも今の人は、知らない番号から掛かってきた電話に、簡単には出ない!。
そんな世知辛い世の中だけど、それでも私は生き抜いてやる。かつての栄光を取り戻すために!!。
そう思っていた私は、久し振りに掛かっていた獲物に心から喜んで、浮足立ってしまっていたわね。
とはいえ。私の代名詞とも言える、駅から電話を何回も掛けて、少しずつ近づくのは忘れずにバッチリやったわ。
メリーさんのあれは、臨場感を増す為にしっかりと駅からやってるの。
そんな時に使うのが、メリーさん七つ能力の一つ、短距離転移!。
あんまり遠くには無理だけど。100mくらいなら簡単に飛べる優れもの!。
そんな感じで向かって来たんだけど…。
「何で、既にこの人死んでるの?。」
目の前で死んでいる人間だったものの胸には、見事な迄に綺麗に包丁がぶっ刺さっている。
取り敢えず抜いて調べてみても、極一般な普通の調理用包丁みたい。
死体の方を流し見ると、まだ血が固まっておらず、血液の池の様になっている。
もちろんだけど、私はやってない。
確かに!、これまで色々な人間をも殺ってきて、此奴も殺る予定だったけど。今回のは違うと断言出来る。誓っても良い。
というか、何かこの死体違和感有るのよね。
う〜ん?
あっ、分かった。この死体、私の能力の一つのマーキングが付いてないんだ!。
ちなみにマーキングとは、電話を掛けた相手に付けて、何処に居ようが、逃げようが居場所が察知出来る優れもの。
それが無いと言う事は、此奴はさっき私が狙っていた相手とは違う?。
恐らくだけど、私がマーキングを仕掛けだ相手が、この血が滴る現場を作った犯人で。
其奴が目の前にある人間を刺殺して、その後に私が電話を掛けて、最後のテレポートした瞬間に怖くなって逃げ出した。
そして、目の前に何故か死体がある事に気を取られて、私は気付けなかった。
多分、そんな所でしょう。
ということは、マーキングを付けた相手は...
いた!。
此処から北東方面、30mくらいに。
ふっ。私に恥をかかせて、順当に生き延びられるとは思わない事ね。
手順が滅茶苦茶になるけど、誰もが寝静まる夜にぶっ殺してあげるわ。
それで取り敢えず、まずは此処から出ようと玄関に視線を移すと、開けっ放しの扉の外で、此方を見つめるおばさんと目が合いました。
気まずい雰囲気が流れる中で、耳を澄ますとサイレンの音が大きくなっているのが聞こえます。
多分、玄関が開けっ放しになっているのを、近所の人が見つけて、警察に通報したんでしょうね。 ハッハッハッ!。
どうしよう…。
転移に使うエネルギーは、此処に来るまでに調子に乗って使い過ぎちゃって、暫くは使えないし。
私の身体能力は、ぶっちゃけ見た目通りの力しかないので、大の大人が普通にやれば簡単に捕まるだろうし。
色々と頭を捻って、う〜んと考えていると。
「君、ちょっと良いかな?。」
そんな声が前からしました。
顔を上げると、身長が自分の倍と感じてしまうほどがたいが良い、制服を着こなした男の人が目に映りました。
「取り敢えず、手に持ってる物を置いて、署までご同行お願いしますね。」
物腰は柔らかいですが、警棒を持って油断無く此方を見据えています。
恐らく、自暴自棄に襲っても直ぐに取り押さえられるでしょう。
なので、男の問いには
「...はい。」
そう答えました。
そして、側目から見れば明らかな犯人な私は、あれよあれよと流されるまま牢屋に入れられましたとさ。ちゃんちゃん!!
「抜け出せる程度には力が戻ったけど、念の為、真夜中に逃げればいいか。」
ていうか、これが他の奴に知られたら、一生笑い者にされるのでは?。
...そ、それだけは止めないと(震え声)
でも、此処に来るまでに何か見覚えのある気配があったんだよね。
しかも、お喋りのろくろ首だったような…。
早く口止めしたいけど、さっき言った様に逃げ出すのは夜。
それまで動けないのは、何だか落ち着かない…。
というか、只の人間にここまでされたのに、何だか腹が立ってきた。
マーキングはまだ生きている。私をこんな所に送り込んだ犯人の位置もキッチリ分かっている。
「私を、こんな目に遭わせた奴を許さない。
許してあげない。
相応の報いを受けさせてやる!!。」
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「...次のニュースです。本日未明、〇〇県〇〇市内の路地裏で、男性が殺害されるという事件が発生しました。
目撃者はおらず、全身に刺された様な傷があり、警察は...」
お読みいただきありがとうございます。
メリーさんのその後は題名通りです。