6 魔女
その声に聞き覚えがあった。けれど、いつもと違ってエコーがかかったかのような
声をしている。
私の様子が少しおかしいと思ったのか、部長達が首をかしげる。
悟った。
この声、もしかして私にしか聞こえてない……?
これがこいつの……魔女の力……。
その声が更に続ける。
《丁度良いじゃん。この事件の犯人を見つけられたら願いを叶える為の材料が一つ
手に入る》
材料……そう願いを叶える為には材料が必要。
契約をすれば、はいお終いというわけにはいかない。
契約は、ただ魔女が契約者に助力する為のもの。
こいつ曰く「だって、そんな簡単にホイホイ叶っちゃったら面白くないじゃん」
こっちからすればふざけんなって話なんだけど。
……まぁ、分からなくもない話。
願いは大きくても小さくても関係ない。材料は同じ条件で、同じ数で。
大きいなら余計に良質な物を。
ある意味平等か。
今思えばこいつがいつも以上にしつこく部に行くよう個人メール送りつけてたのってこういうわけね。
ウザすぎて一斉削除したけど。
《だーかーらーこの茶番に付き合えば、材料の在りかに辿り着けるかもしれないってわけ》
材料……材料を手に入れたら……。
《早く集めたいんでしょ? あの人の為に》
……っ!
……分かった、やる。
……………………。
……ん? やるって。
《あ、もしかしてなんか言ってる?》
言ってんでしょさっきから。このアホみたいな部に出てやるって言ってんの。
《あはっ! すっごいイラついた顔してる~! 言い忘れてたけど、そっちの心の声は
届かない仕様だから、決意が固まったら声を出して返事よろ~!》
はぁ? 何それ意味不明なんだけど。
魔女って変なところ、効率悪すぎない?
「あーもう分かったわよ。やればいいんでしょ、やれば」
私が突然態度変えた変人みたいじゃない。
案の定、みんなキョトンとしてるし。
《よく出来ました》
こいつ絶対殺す。