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第五話

 鳴瀬は家を出ると、駅に向かって走った。


 冷静になれたのは、電車の中、椅子に座った時。


 スマホで何度も、LINE、電話番号、動画とかを検索してみるが、やはり消えている。


 重吾は一旦、諦めた。ドアの上に設置されている、車内ビジョンに、今日のニュースが流れている。


「本日より、テロ撲滅強化週間になっております。皆さんの周りに、不審な人物はいませんか? 怪しい行動、いつもと違うなと感じたら、すぐに連絡を」


 駅に降りると、早足で改札口に。改札口を出ると、重吾のアパートへと駆けていった。


 重吾のアパートに着いた。二○一号室に向かう。ネームプレートが無くなっていた。


 インターホンを押す。反応がない。軽くノックをした。返事はなかった。今度は大きくドアを叩いた。


「おい、重吾、重吾!」


 それでも返事はなかった。ドアノブを握る。ゆっくりと回す。


 その時、階段を上る音が聞こえた。


「あの、どちら様ですか?」


 一人の老人が、ゆっくりと鳴瀬の方に近寄ってきた。


「あの、この部屋に友人が住んでいるんです。で、昨日から全く返信がないんです。もしかしたら、何かあったのかもしれません。部屋、開けてくれませんか?」


「この部屋……」


 老人はゆっくりと、部屋の方を向いた。しばし、無言の時間が続いた。


「あの……」


「あのね、ここの部屋ね、ずっと空き部屋なんだよ」


「へっ?」


 再び無言の時間が続く。


「いや、この部屋に重吾は住んでいるんです。だって、ここで何回も飲んだり、ゲームしたり」


「いや、ずっと、ここは空き部屋なんだけど」


 管理人は、しきりに首を傾げる。


「まあ、そういう事だから」


 話を終わらせ、管理人は背を向けようとした。


「ちょっと待ってください。中を見せてください。そうでないと、気持ちが収まりません」


「えっ……」


 嫌な顔をする管理人。だが、鳴瀬はあきらめなかった。


「お願いします。部屋を見るだけです」


 鳴瀬は大きく頭を下げた。


「まあ……うん」


 渋る管理人。ようやく納得して、ポケットから、部屋の鍵を取り出した。


 鍵口に差し込み、右に回す。ゆっくりと、管理人がドアを開ける。


「重吾!」


 中に入る。部屋は真っ暗だった。


「ちょっと待ってください」


 老人が明かりを点けた。家具一つ置かれていない、2LDK。鳴瀬は立ち尽くした。


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