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エピローグ

 背中に学生鞄を背負って、十一歳の少女が駆けて行った。

 今日はお気に入りのパフスリーブのブラウスと、黒いズボンを合わせている。

 道すがら少しだけ上手くなった歌を口ずさみ、斜面の一番上から下りていく。


「お、リオちゃんおつかれさん!」

「こんにちは!」


 道行く知り合いに元気良く挨拶をしながら、彼女は軽やかに走った。

 オーストン町はいつもの活気に溢れている。



 今日は土曜日、彼女の通う附属小学校は午前授業だった。

 近道の路地を抜けて、少女は自宅へと向かっていた。

 裏手から入ろうとした時、ふと店先で話す声が聞こえる。リオは恐る恐る耳をすませた。

 どうやら若い観光客が話しているらしい。


「ね、このおすすめって何だろう」

「知らないドレッシングだね? 入ってみよっか!」


 そんな会話の後に、カランコロンと鈴の音がする。


「……んへへぇ」


 思わず、少女の口元が緩む。

 今月のおすすめメニューは、彼女もコックと一緒に考えたものなのだ。


 ほのかに憧れている青年から褒められて、まるで宙に浮かぶかのような心地がした。

 作ったのは自分ではないが、なんだが気分が弾む。


「はっ、いけない。ぼーっとしてた」


 彼女は慌てて裏口のドアノブに手をかけると、自分の家族に聞こえるように、大きく声を上げた。



「ただいまーっ!」



 返って来た二つの「おかえり」に、リオは満開の笑みを浮かべた。




 オーストン町第五区、水路街近く。そこには一軒の小さな食堂がある。

 地元民御用達のこじんまりとした落ち着く店だ。

 週末だけ、明るい看板娘がいることでも有名である。


 そんな食堂の扉の脇、看板代わりの黒板にはこう書かれていた。


『食堂【リトトルカ】

 定休日:土、日

 営業:朝十時から午後六時まで

 今月のおすすめ:特製うめぼしドレッシング付きサラダ




 現在、従業員募集中』




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