7話 新町中サッカー部
7話です!
遂にサッカー部の登場……と思いきや、意外な展開が!?
「なぁ、零のやつ、開陽中サッカー部に入ったってよ」
約1週間が経ち、学校生活にも慣れた金曜日の昼休み、雷が話しかけてきた。
「零が? あいつすげえな」
零とは、僕の転生初日のサッカーで『氷の大地』を使ってきたあの山極零だ。あいつはもとからサッカーの技能はピカイチで、隣の開陽中に入学したと聞いていたけど……
「そうそう、開陽中のことなんだけどさ、今年は1年生がなんと30人入部したって言ってたぜ」
「ホントに!?」
開陽中は昔からサッカーの名門校として有名だ。これはあくまで僕の元いた世界の話だけど、開陽中は去年の全国大会でベスト8を記録した。しかも、準々決勝で負けるまでは全試合無失点だったらしい。
その時のキャプテンはなんと1年生で、しかも全試合ハットトリックを決めたんだとか。
世界は違うけど、今年の入部人数の状況からさほど変わってないのが目に見えて分かる。
「俺達も負けてられないよな! 一緒に頑張ろうぜ!」
「決まってるじゃないか。入部したら頑張ろうな」
「おう!」
僕と雷はお互いに深くうなずいた。
その時、話の一部始終を端からこっそり見ていた、同じクラスの女子の細村奈々が、少し考え込んだあとどこかへ行ってしまったのを、僕は横目に見ていた。
* * *
放課後、体育館に集まった1年生は、各部活動の紹介を見ていた。
多くの部活動紹介が終わり、次は野球部の紹介だ。彼らはユニフォーム姿で登場し、キャプテンと思わしき人物がマイクスタンドの前に立った。残りの部員は後ろのスペースでキャッチボールをしている。
「僕達新町中学校野球部は、毎年全国大会出場を目指して日々練習に励んでいます」
「ふあぁ……」
あくびが出てしまった。こういう集会って、正直すごく眠くなる。普通の集会だったら校長先生の話辺りで夢の中だろう。でも今回はサッカー部の紹介が始まるまで寝ないと決めた。
……いかん。まぶたが重い。ダメだ、ここで寝るわけには――――
「……以上で部活動紹介を終わります。1年1組から退場して下さい」
……はっ。
終わった。寝てしまった。
* * *
「俺、サッカー部の紹介の前に寝ちゃったんだよ」
「同じく」
僕と雷はそんなことを話しながら、サッカー部の部室を探していた。
「ここかな?」
「いや、ここは野球部の部室だ。てか、ここら辺にあるはずなんだけどな」
新町中の部室はプール棟にまとめられている。1階が各部室で、2階がプールだ。だけど、1階のどこを探しても、サッカー部の部室は見当たらない。もしかしたら別の所にあるかもしれない、と移動しようと思ったその時、
「もしかして君達、新入生? 部室を探してるの?」
振り向くと、一人の男の人が立っていた。学ランを着ているからおそらく学生。中肉中背で髪の毛はボサボサ、メガネの向こうの目はどこか冷めていて、手には雑誌が数冊。どこかのオタクかなと思いつつ、投げかけられた質問に答えた。
「はい、サッカー部を探しているんですが……」
「ああ、サッカー部の部室は別のところにあるよ。案内してあげようか?」
なんと、この人はサッカー部の部室を知っていた。先輩なのかな? とにかく、これで部室に行ける!
「ありがとうございます!」
「それじゃ、僕についてきて」
その先輩は校舎を抜けていったので、急いでついて行った。
「ここだよ」
着いたのは、北校舎裏の荒れ地。一見部室は無さそうだけど……
「そして、こっちが部室」
その学生は、外階段の下にあるドアを指差した。どう見ても掃除用具いれみたいな場所で、『サッカー部』という看板もどこにもない。
「ここが……サッカー部……?」
「なんかひどい扱いだな」
なぜここにあるのか、とか、どうしてサッカー部だけ仲間外れなのか、とか疑問が次から次へと浮かんでくる。
「ところで君達、入部希望?」
その学生がいきなり聞いてきた。
「あ、はい、そうですけど……」
「ちょっと待ってて」
その学生はそう言った後、部室のドアを開けて中に入っていった。
「……関係者なのかな?」
雷が耳打ちしてくる。
「そうは見えなかったけど……」
しばらく待つと、部室のドアが再び開いた。
「お待たせ」
部室から出てきたその学生は、学生服ではなく胸に『新町中』とプリントされた赤いユニフォームを着ていて、下は白い短パンに赤のサッカー用ソックスを履いていた。
靴はスニーカーからミスノのスパイクに変わっており、再び視線を上にあげると、メガネをかけていないのに気付いた。
「自己紹介をするのを忘れていたけど、僕は新町中学校2年の日高昇。新町中学校サッカー部のキャプテンだ。よろしく」
「「ええぇっ!!?」」
そのオタクみたいな学生、日高昇さんは、なんと新町中サッカー部のキャプテンだった。
「君達、入部希望だよね。こちらとしてはすぐにでも入部させたいけど、その前に……」
さっきまで雑誌を持っていた手に抱えているサッカーボールを自分の足下に落とし、左足の裏でトラップした。
「……君達の力試し、といこうか」