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4話 二つの世界の分岐点

4話です!

この回は説明が主になっています。

お父さんめっちゃ喋りますよ。

「サッカーでしか……使えない?」


 僕は首をかしげた。てっきり日常生活の中でも魔法は使えるのだと思っていたばかりに、その発言は意外だった。ただ、そうなると「なぜサッカーだけなのか?」という疑問が頭に浮かんでくる。


「『なぜサッカーだけなのか?』って思ったろ。その理由は20年前に(さかのぼ)ることになる。

 今から20年前、ユーラシア大陸内陸部のチベット高地に、隕石が墜落したんだ。調査の結果、この隕石は太陽系外から来たものだと分かって、しかも内部に地球に存在しない物質が含まれていることが判明したんだ。(のち)に政府はこれを『フトボリウム』と呼ぶことにした」


 フトボ……リウム? いかにもって感じの名前だ。命名者のセンスを疑う。


「『フトボリウム』って、なんだかサッカーっぽい名前だね」


「そう、この名前になる理由が関係しているんだ。

この物質が発見されてから、世界中のサッカー選手に異変が起こった。なぜかみな火を吹いたり、竜巻を起こしたり、電撃をまとったシュートを打ったりするようになったんだ。それも『サッカー』をしているときだけにね。

 それを受けて科学者が研究を行った結果、あることが分かったんだ。隕石が墜落したとき、この『フトボリウム』から出ている放射線が地球人の身体に入り込んで、それぞれ何かしらの『特異能力』に目覚めさせていたんだ。そしてそれが力として表れる条件が、人がサッカーをしているときに出る脳波と関係しているらしい。

 今分かっているのはそれだけで、詳しい原理とか、もし隕石を地球外に持っていったらどうなるかとか、現在も調査中なんだよ」


「…………?」


 お父さんが説明してくれるが、どういうことなのかさっぱり分からない。とりあえず、原因が隕石ってことぐらいは……あれ? そういえばあっちの世界でも……


「そういえば、20年前に隕石が地球に接近したけど、墜落はしなかった、って話を聞いたことがある……」


「そうか。もしかしたら、『20年前に地球に隕石が落ちたかそうでないか』によって世界が分岐し、君はその『隕石が落ちていない世界』からこの『隕石が落ちた世界』に何かしらの理由で飛ばされた、と言えるかもしれない」


 こういうオカルトな話は好きだから聞いたことがあるぞ。たしか『並行世界』とか『パラレルワールド』とかだっけ。


「パラレルワールドって言うのか」


「そうだな。そういやお前は小さい頃『魔法』に興味を持っていたよな。今はそうでもないけど」


 説明し忘れていたが、僕のお父さんは元の世界では少し名の知れた研究員だった。あの説明のしかたからすると、こちらの世界でもおそらくそうなのだろう。かといって、僕が理科が得意な訳でもなく、むしろ魔法オタクだった僕は理科が嫌いだった。


 だから普段お父さんはこういう話をしてくれないのだけれど、この状況で持ちかけてきている。さらにさっきの発言と組み合わせてみると、「この世界の僕は魔法にさほど興味を持っていなくて、理科が得意」ってことが分かった。


「ほら、いつまでも喋ってないで早く食べちゃいなさい」


 おっと、晩ご飯の途中だってこと、すっかり忘れてた。


「はーい」




   *  *  *




 風呂からあがって、自分の部屋のベッドに寝転がる。


「……今日は変な日だったな」


 そう呟きながら、今日起こったことを頭の中で整理してみる。


 まず、サッカーをしていて、車道に転がったサッカーボールを取りに行ったときに、僕はトラックにはねられて『元の世界』では死んだ。


 だが、目が覚めるとなぜか『こっちの世界』に来ていて、この世界ではサッカーをしているときのみ『魔法』が使えた。実際に僕も、水魔法みたいなものを使うことができた。


 そしてお父さんの話によると、『元の世界』で墜落しなかった隕石が『こっちの世界』では墜落していて、それが原因で人々は制限付きの『魔法』が使えるようになった。


 以上、今日の出来事。うん、我ながら特異すぎる。そもそも『並行世界』というものが本当に存在していたのが驚きだし、なぜか家族はそれを当たり前のように捉えていた。まあそれですぐに馴染めたのは良かったけど…


 そういえば、この世界って『魔法』が使えるんだよな。


 ……えっ、それって……僕が夢見ていたことじゃないか!


 大好きなサッカーで、大好きな魔法が使える! そう考えてみると、これからの人生がとても楽しみになってくる。自分の夢見ていたことが「完璧に」叶ったんだ、とても落ち着いていられない!


 ……はっ、そういえばもうすぐ中学生。中学生になれば、サッカー部に入れる! そしたらサッカーで魔法が使えて……!


「すげぇ……!」


思わず声を漏らしてしまった。嬉しさと興奮のあまり布団に飛び込んで枕に顔をうずめ、足をじたばたさせた。


「〜〜〜〜!!」


 枕の中で唸る。どうやら、この世界は僕が思い描いていた理想の世界だったようだ。


 神様ありがとう!!

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