2話 魔法とサッカー
2話です!
最近コロナウイルスが蔓延していて怖いですが、元気に投稿を続けていきたいです!
さて、トラックにはねられてしまった悠人は一体どうなるのでしょうか……?
「……い、おい! おいっ! 悠人!」
誰かが僕を呼んでいる。死後の世界の住人だろうか。そういや、あのファンタジーアニメでもそういう世界あったな。まさか本当にそんな世界が―――
「起きろ!」
ベシッ!
「いっだぁ!!」
頬に意外な一撃を喰らって、僕は飛び起きた。目の前には、死後の世界の住人……って、あれ?
「……雷? お前なんでここに?」
「は? なにいってんだお前」
雷こと網走雷太は、さっきまで僕とサッカーをしていた、いわば親友。魔法の世界にどっぷり使っていた僕にサッカーを教えてくれたのはコイツだ。そんな雷が、なんでこんなところに?
「もしやお前、僕の後を追って……」
「だから何言ってるんだよ」
「だって、僕は死んだはずだ。ここは死後の世界であって……」
「お前、ついに中二病になってしまったのか? まだ中学にすら入ってないのに」
さっきから話が噛み合わない。どうやら僕の言ってることが雷に理解されていないようだ、って……
「あ、あれ?」
周りを見渡してみて、僕はここが「死後の世界」ではないことに気付いた。眼前に広がるのはよく見る新町市の街並み、そして僕がいたのは新町市営公園沿いの歩道の上。さっきトラックにはねられる直前まで見ていた風景だ。
「……あれ、さっきトラックにはねられて死んだはずじゃ…」
「死んでいたら今こうして話してないだろ。ほら、変なこと言ってないでさっさと戻るぞ。あ、そこのボール取ってくれ」
「……??」
僕は死んでないのか? そう疑問に思いながら、雷についていった。
* * *
「おーい、待たせたな」
「悠人! お前何してたんだよ」
周囲が僕を責め立てる。
「ご、ごめん」
……とりあえず、運良く僕は死ななかった。そう思っとこう。
「ほら、さっさと始めるぞ」
雷がボールをセンターマークに置いて、キックオフ。ボールを持った僕は、ドリブルを始めた。
「もらった!」
相手の零がボールを取りに来た。よし、ここはフェイント魔法「裏街道」で……
とその時、零が衝撃的な一言を放った。
「氷の大地!!」
アイシクル・フィールド……? こいつ、僕のように魔法みたいな言葉を唱えて。さっきは魔法がどうの言ってたくせに……そうか、そんなこと言って僕をビビらせるのが目的か? だがそんなことで……あれ? 身体が動かない。どうしたんだ僕、まさか本当にビビって―――
「なっ!?」
足下を見た僕は、そこに広がる光景にビックリした。
地面が凍っていたのだ。
それだけじゃなく、僕の足、膝下くらいまで氷漬けにされていた。これのせいで足が動かない……のか? どちらにせよ、信じられない光景だ。相手が魔法の呪文のようなものを唱え、それによって非現実的な効果が表れる。
まるで、魔法の世界じゃないか。
「へへっ、いただき!」
「っ!!」
いとも簡単にボールを奪われてしまう。しばらくすると、氷にヒビが入って割れた。足が自由になった僕は、急いでボールを取り返しに行く。
すでに零は自陣まで攻め込んでいた。僕が必死に追いかけていると、雷が零の前に立ちはだかった。アイツ、さっきのを見ていなかったのか? またすぐに「アイシクル・フィールド」とやらで凍らされて…
「ボルテージタックル!!」
その言葉と共に、またしても信じられない光景が僕の目に飛び込んできた。
ズバッ!! という普段聞かない効果音が聞こえ、それと同時に電撃が零の身体を貫いた。するといつの間にか、ボールは雷の足元にあり、零は身体が痺れて動けなくなっている。
また魔法……? もう、なんなんだよこれ……
その後も、炎に包まれた手がシュートを止めたり、岩石が地面から突き出てきたりと、何から何まで信じられないことばっかりだった。僕はあまりの光景に立ちすくんで、その様を見ていた。
本当にこれ、何が起こっているんだ……?
「悠人!」
雷の声で我に帰ると、足元にボールが転がってきた。
「チャンスだ! そのまま打てぇっ!!」
「え、う、うん!」
ボールを受け取った僕は、言われるがままにシュート体勢をとった。右足で強く踏み込んで、左足を思いっきり振り上げる。
その時、左足が急に重くなった。何だ? と後ろを見ると、左足に何かがまとわりついている。これは……水? もしやこれも魔法なのか?
とにかく、そのままシュートを打とう!
「荒れ狂う激流の餌食となれ! 必殺! 『ハイドロブレイク』っ!!」
咄嗟に魔法らしいセリフと技名が出てきた。そのまま力一杯左足を振り抜く!!
「うおりゃぁぁぁああっ!!」
空気が割れんばかりの轟音が鳴り響き、激流を纏うボールがゴールへ突っ込んでいく!
「うわぁぁっ!!」
そのシュートはキーパーをぶっ飛ばして、ゴールネットに突き刺さった。
「はぁ、はぁ……」
「悠人! ナイスシュートだ!」
放心している僕に、雷がサムズアップをした。
どうやら、僕がシュートを決めたようだけど……なんだったんだ今の。
* * *
「じゃ、また明日な!」
夕暮れが迫り、みんなが帰っていく。僕も手を振って家に向かうことにした。
それにしても、今日は不思議なことばかり起こっているな。トラックにはねられて死んだかと思えばなぜか無傷で、その後やったサッカーが「魔法」のようなものばっかりだった。なんだか、別の世界に迷いこんだような変な感じがする。
…ん? 「別の世界」? そういえば、僕がトラックにはねられてから、みんながサッカーで「魔法」を使うようになった。
「もしかして……」
もしかして僕は、事故の衝撃で「別の世界」に飛ばされてしまったのか?