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カウントダウンのその先は  作者: メリー
2/6

5

「12月に入ったら、詩音のご両親に挨拶に行こうと思うんだけど、いつがいいか予定聞いといてよ」


 ――――勝った‼︎‼︎‼︎


 結婚への一歩前進を感じて、詩音は裕也に見えないようにガッツポーズした。



 ********



「なに食べたい⁇」

「んー、パスタ」


 並んで店内案内を見ながらも、詩音はこっそりと裕也の表情を伺った。「パスタねえ」なんていいながらも、裕也の視線は回転寿司のお店に釘付けだった。


「それか、お寿司とかでもいいよ」

「お、じゃあここは⁇」


 詩音の付け加えた言葉に、裕也は途端に目を輝かせた。「()()()()()」に含まれた意味には気づきもしなかったらしい。


 ――――まあいいけど。



 詩音は、自分の主張を通すのが得意ではない。

 もっといえば、あれがいい、これがいいと主張することに苦痛を感じるタイプの人間である。

 友人との集まりでも、「いつにする?」というような聞かれ方をすると、途端に気分が落ち込み集まりに行く気がなくなってしまう。本当に()()()()()()というのが、詩音の常なのだ。()()()()()()と言ったからには、絶対に文句は言わないし、絶対に楽しめる、それが詩音のポリシーであった。


「それでさ、挨拶。大安がいいかと思うんだけど」

「…大安関係ある?」


 そういう話をゆっくりしたいなら、回転寿司はないだろと思わないでもないが、絶対に言わない。お寿司でもいいと言ったのは詩音だ。


「裕也がうちこれるの週末でしょ?うまく週末に大安かさなるかな…」

「12月のこの週は大安だよ」

「あ、ほんとだね」


 両親に()()()()()()聞いておいて欲しいと言われたのは気のせいだったろうか。裕也の中ではその日に決まっているらしい。詩音が相手ならそれでいいが、この人はうちの両親にもそういう感じでくるんだろうか、と詩音は少し心配になった。


 詩音とは正反対、裕也は自分の主張を通したいタイプだった。一応「なにがいい?」と聞くものの、裕也の中では決まっていることがほとんどだ。特に意見のない詩音には、わかりやすい裕也は楽でよかった。裕也が思ってることを詩音が言えばご機嫌に、そうでなければ不機嫌までは行かなくても難色を示す。


「一応この日がいいって言ってみるけど、うちの親週末も仕事ある人だからわかんないよ」

「そしたら12月はムリかな…次の大安ちょっと先だよね」

「うーん…」


 スマホのカレンダーをみる裕也に苦笑しながら、詩音は胸の中になにか引っかかるものを感じた。


 ――――あれ、プロポーズは?


 他にも胸に引っかかるものがあった気がしたが、プロポーズがスルーされそうな気配に気をとらられ、その時は気がつかなかった。



 ********



「緊張したあー」

「お疲れ様」


 12月中旬、裕也の部屋でコーヒーを入れながら詩音は笑った。

 詩音の両親との顔合わせを終わらせた翌週である。


「次は私が緊張する番だね」

「俺の親に緊張することないよ」

「え、自分が散々緊張しておいてそういうこという?」


 受け答えこそ堂々としていたものの、コート脱ぐのに手間取る、出されたお茶をこぼすなど、裕也の緊張具合は側にいた詩音に移るほどだった。


「年末さ、USJで年越ししようよ」

「裕也のお母さんに逢いに行くのに?」

「だってただ行くだけじゃつまらないじゃん。旅行兼ねようよ」

「それはそうだけど…」


 私は初めて彼氏の両親に挨拶するんですけど…と思ったものの、たしかに何か楽しみがあった方が乗り越えられる気がする。

 そのくらい詩音の年末の予定はハードだった。


 12/29、京都に行って裕也のご両親に会う。

 12/30、大阪で裕也の弟(+母)に会う。

 12/31、USJで年越し。


 ――――…できるか?できるのか?私。っていうか、2日目の弟+母っているのか?弟会わなくてよくない?もしくは弟が初日に来い!


「私、年越しオールとかやったことない」

「調べたけど、みんなレストランとかで寝るみたいだよ」

「寝られるなら大丈夫そう…」

「じゃあチケットとるよ」


 うきうきとパソコンをいじる裕也を尻目に、詩音は自分の選択が当たりだったことを知った。行きたかったんだね、USJ。


「顔合わせはどうする?あと結婚式場」

「まだ考えなくていいんじゃない?」

「結婚式場ってみんな1年前には決めるんだよ。裕也、そんな先になるのはやだって言ってなかった?」

「…じゃあ候補はどこがあるの?」


 ――――私が探すの!?その開いてるパソコンは!?


 チケットを取り終わったらしい裕也がテレビを見始めたのにちょっとイラッとしながらスマホで調べてあった情報を見せた。


「顔合わせはまた裕也のお母さんの予定聞いてからね。式場は私ゲストハウスがよくって、こことか」

「ふーん」

「いくつかいいな、って思うところはあるんだけど、年明けたら見学に行かない⁇」

「だね。あ、そうだ。指輪のお店も調べておいて」


 ――――サプライズでプレゼントの線はなし、ってことね


 もやっとしたが、詩音は指輪に関してはこだわりがあるタイプだ。裕也のセンスはあまり信用ならないし、自分で選べてラッキーと思っておく。


 その日、テレビを見たり昼寝する裕也の横で、詩音は顔合わせ、結婚式などの情報を調べて過ごした。


 ―――――――――――――――――――5

次話は15日9時に投稿予定です

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